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第九章 ルミーヴィアへの旅編

第168話 手紙 其の二

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「なるほどねぇ……」

 相談しに行ったところ、師匠は考える素振りを見せる。特に反対される理由はないと思っていたので、この反応は意外だ。

 いや──冷静に考えれば、俺一人だけでBランクパーティほどの強さがあるとはいえ、傍から見れば少年と少女の二人組だ。盗賊に襲われやすいかもしれない。

 一対一ならともかく、何人もの盗賊に襲われれば為すがままに殺されてしまうだろう。そもそも対人戦などしたことがないのだから、あまりにも俺は盗賊に対して無力かもしれない。

 これはマリーには申し訳ないけど師匠に止められるかもしれない。

「僕が行くか行かないか──それが問題だね」
「え……」
「だって、コルネくんの元とはいえパーティメンバーなんだよ? コルネくんが力になりたいのなら、僕はサポートするしかないじゃないか」

 あっけらかんと言い放つ師匠は、どうやら違うところで悩んでいたらしい。

「ただ──出かけるとなると、申請の書類たくさん書かなくちゃいけなくて面倒なんだよね。だから僕が他のパーティ雇って、ついていってもらおうかと思って」

 そうだった……師匠は外出に必要な手続きが多すぎて、出かける気にならないって言ってたっけ。師匠が行く話が突然出てきたせいで、頭から抜けてしまっていた。

「そういえば、そのマリー──さんが弟子入りするのはどこの誰なんだい? 僕も知り合いに回復魔法を使える人はそれなりにいるから、別のところを紹介できなくもないけど」

 師匠のことだから、王国魔法師団所属の人あたりを紹介しそうだ。そちらもすごいのだが、俺も手紙にこの名前を見つけたときは驚いた。

「《無限の光ルクス・インフィニティア》の回復魔法使い、レネさんです」
「えっ……えええええええええええええええ!? 《無限の光ルクス・インフィニティア》って、あの?」

 師匠が驚くのも無理はない。

 「無限の光ルクス・インフィニティア」といえば冒険者の間では超有名なパーティで、今年Aランクに上がったことも記憶に新しい。特にその回復魔法使いの腕は冒険者随一と言われるほど名高く、真偽は分からないが元シスターだという噂も出回っている。

 冒険者随一ということは、少なくとも王国内でトップクラスの腕前だということは間違いない。回復魔法を学ぶのにこれ以上の人はいないだろう。

「じゃあ、コルネくんたちの旅についていけばレネさんに会えるってこと!? こんなチャンス滅多にないよ! 僕も行くって返事しといて!」

 そう言い残して、師匠は自分の部屋へと大急ぎで戻っていく。向こうから「ヘルガ! 書類書くの手伝って!」という声が聞こえるから、今から書類に手をつけるんだろう。

 今までめんどくさがって書いてこなかった書類を書いてでも師匠が会いたい相手──俺もすごく気になってくる。

 とりあえず、手紙はなるべく早く出した方がいいから俺も部屋に書きに行くか。
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