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第七章 里帰りと収穫祭編

第127話 収穫祭に向けて 其の二

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 次の日、俺の頼みに応えるために師匠は朝早くに市場に出かけた。もともと寝起きのよい師匠だが、心なしかいつもよりしゃっきりしているようだった。

 師匠が動いてくれている間に二人ならではの魔法剣の見せ方を考えていると、師匠が帰ってくる。その足音はドタバタと急いでいるようだ。つまり──

「見つかったよ! 演奏をしてくれるグループ!」

 バァンと扉を開け、嬉しそうに告げる師匠。そう──昨晩の頼みごととは、俺たちの魔法剣と一緒にやってくれる楽器の演奏者を見つけてほしい、というものだったのだ。

 魔法剣に音楽を合わせれば、より楽しんでもらえそうだと思い、お祭りのステージに一緒に上がってくれる演奏者を師匠に探してもらった。

 しかし、今から準備を始めてステージまでに演奏できるようにするのは難しいので、すでにステージに上がる予定の演奏者に頼んでもらったのだ。曲に合わせてこちらが勝手に魔法剣の演舞をしてもいいか、と。

 これなら演奏者は俺たちの方に合わせる練習をする必要もないし、デメリットが少ないだろうから、急な頼みでも一組くらい受けてくれるところがあるかもしれないと思ったのだ。

「よかった──これで……! ありがとうございます!」
「コルネくんの演出に必要なんだろ? 演出を任せっきりにしてる分、このくらいは、ね?」

 そう言ってウィンクをする師匠。ちょっと不安になるときもあるけど、やはり師匠は頼もしいな。

 いろいろ考えながら作っていた演出のメモを急いで片付けながら、師匠にその演奏者さんの家を教えてもらう。

「じゃあ俺、行ってきますね」
「気を付けて行ってくるんだよ」

 早速、訪ねてどんな曲を演奏するのか聴いてこなければ。



「いらっしゃい、コルネくんだね。ロンド様から話は聞いてるよ。あがってあがって」

 頼みを引き受けてくれた演奏者の一人であるマシューさんは、初老の気のいいおじさんだった。いきなり来た俺に快く対応してくれ、出されたお茶を飲みながら話を始める。

「ロンド様から話があったときはびっくりしたよ。ステージでの演奏に合わせて魔法剣を見せたいだなんて、てっきり今年もお一人でまたやられるもんだと思ってたから。でも今年は君と二人で出るらしいって聞いてさ。なんでも君の演出がすごいって──」

 流れるように滔々と話し出すマシューさん。

「ロンド様が興奮して話し出したんだ。キラキラだとか、パチパチだとか、とにかくすごいって。そんなに目を輝かせて語るってことはよほどいいのだろうと思って、承諾することにしたんだ」

 そう言ってニカッと、白い歯を見せ笑うマシューさん。

 俺の知らないところで、勝手にハードルが上がっているようだ。これは期待外れだと言われないよう頑張らないと、だな。

「それで、どのような曲を演奏するのか教えていただきたいのですが……」
「演奏するのは二曲あって、はじめにやる方はゆったりとした曲で、後のは戦いのような激しい曲だな」

 なるほど、ゆったりした曲と激しい曲か……説明を聞いただけでは分かりづらいな。

「あの、今から聴かせていただくことって出来ますか?」
「今からか──おーい、今から演奏できるかってー!」

 大きな声で家の奥に呼びかけるマシューさん。すると、「できるよー」という女性の声が返ってきて、楽器を持った女性と小さな子どもたちが現れる。
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