124 / 328
第七章 里帰りと収穫祭編
第120話 演舞
しおりを挟む
「コルネ兄ちゃんが魔法剣を見せてくれるんだって」
「まほーけんってなに?」
「んー、よく分かんない。シスターはキラキラって言ってた」
ぺちゃくちゃと喋りながら子どもたちが外に出てくる。魔法剣が何なのか知らない子もいるようだ。師匠と俺意外に使っている人を見たことがないほどだから、知らないのも無理はない。
「シスター、あたし暗いの怖いよぉ」
「大丈夫よ、私が手をつないでるから」
「うん」
小さい子たちはシスターや年長の子どもが手をつないでいる。怖がるのもそうだが、小さい子が走り回ると危ないからでもある。剣が光っていてもこちらから向こうはよく見えないからな。
「みんな、ちゃんと手はつないだかしら」
「「「はーい」」」
「それじゃ、準備はできたから、よろしくね」
シスターがそう言うのを聞いて、俺は一つ深呼吸をしてから最初の構えを取る。そして光の魔法を剣に纏わせると、剣は淡く光る。
「光った!」
「綺麗……」
子どもたちの反応もいいようだ。そこからゆったりとした動きで、流れるように剣を振るう。
ゆったりと動く光は、神秘さを醸しだしているはずだ。不安だったので、本番前に一度マリーに見せたところ、そう言ってくれたので、子どもたちもそう感じていると信じたい。
ゆったりとした動きは一見簡単そうだが、重さのある剣を勢いに任せずに動かすのはものすごく筋肉を使うため、ここのパートが一番きつい。闇が表情を隠してくれて助かった。
一度動きを止め、剣をまっすぐに構えなおす。子どもたちは剣が動かなくなったことを不思議に思い、さらに剣に注目するだろう。
注目を集めてからの──雷の魔法剣! 魔法を切り替えると同時に、眼前の剣が青白く強い光に包まれる。
「ピカピカだー!」
「かっこいい!」
ちびっこたちの言葉に心の中でにっこりしながら、今度は普段の動きと同じ速さで剣を振るう。素早く剣を振るうと、剣の軌跡が光の筋となって現れる。
光の筋は雷鳴とともに走る閃光のように、夜闇を切り裂いていく。順調に型稽古の動きをなぞり、最後の動きから剣を横に一閃する動きにつなげる。
動きの中で剣を横に薙ぎながら、魔法を雷から炎に切り替える。振りはじめは青白かった剣が、振り抜くころには赤く燃え盛る剣に変わっている。
炎を剣先の少し先まで伸ばし、舞を踊るように大きく動くことを意識する。剣を振るうごとに炎が尾を引くように軌跡を描き、火の粉が弾けるパチパチという音は心が躍るようだ。
「わぁ……!」
煌々と燃える炎に、赤く照らされた子どもたちの瞳の中には小さい炎があった。
あの日俺がそうだったように、この魔法剣は子どもたちの眼にキラキラと輝いて映っているだろうか。
そして、もしかしたら──もしかしたら子どもたちの中から新たな魔法剣士が生まれるのだろうか。
そんなことを考えながら剣を振るいつづけ──そしてまた最初のように真正面にもう一度剣を構えなおし、フッと魔法を解く。
短い静寂の後に、ワッと子どもたちの歓声が上がる。
「まほーけんってなに?」
「んー、よく分かんない。シスターはキラキラって言ってた」
ぺちゃくちゃと喋りながら子どもたちが外に出てくる。魔法剣が何なのか知らない子もいるようだ。師匠と俺意外に使っている人を見たことがないほどだから、知らないのも無理はない。
「シスター、あたし暗いの怖いよぉ」
「大丈夫よ、私が手をつないでるから」
「うん」
小さい子たちはシスターや年長の子どもが手をつないでいる。怖がるのもそうだが、小さい子が走り回ると危ないからでもある。剣が光っていてもこちらから向こうはよく見えないからな。
「みんな、ちゃんと手はつないだかしら」
「「「はーい」」」
「それじゃ、準備はできたから、よろしくね」
シスターがそう言うのを聞いて、俺は一つ深呼吸をしてから最初の構えを取る。そして光の魔法を剣に纏わせると、剣は淡く光る。
「光った!」
「綺麗……」
子どもたちの反応もいいようだ。そこからゆったりとした動きで、流れるように剣を振るう。
ゆったりと動く光は、神秘さを醸しだしているはずだ。不安だったので、本番前に一度マリーに見せたところ、そう言ってくれたので、子どもたちもそう感じていると信じたい。
ゆったりとした動きは一見簡単そうだが、重さのある剣を勢いに任せずに動かすのはものすごく筋肉を使うため、ここのパートが一番きつい。闇が表情を隠してくれて助かった。
一度動きを止め、剣をまっすぐに構えなおす。子どもたちは剣が動かなくなったことを不思議に思い、さらに剣に注目するだろう。
注目を集めてからの──雷の魔法剣! 魔法を切り替えると同時に、眼前の剣が青白く強い光に包まれる。
「ピカピカだー!」
「かっこいい!」
ちびっこたちの言葉に心の中でにっこりしながら、今度は普段の動きと同じ速さで剣を振るう。素早く剣を振るうと、剣の軌跡が光の筋となって現れる。
光の筋は雷鳴とともに走る閃光のように、夜闇を切り裂いていく。順調に型稽古の動きをなぞり、最後の動きから剣を横に一閃する動きにつなげる。
動きの中で剣を横に薙ぎながら、魔法を雷から炎に切り替える。振りはじめは青白かった剣が、振り抜くころには赤く燃え盛る剣に変わっている。
炎を剣先の少し先まで伸ばし、舞を踊るように大きく動くことを意識する。剣を振るうごとに炎が尾を引くように軌跡を描き、火の粉が弾けるパチパチという音は心が躍るようだ。
「わぁ……!」
煌々と燃える炎に、赤く照らされた子どもたちの瞳の中には小さい炎があった。
あの日俺がそうだったように、この魔法剣は子どもたちの眼にキラキラと輝いて映っているだろうか。
そして、もしかしたら──もしかしたら子どもたちの中から新たな魔法剣士が生まれるのだろうか。
そんなことを考えながら剣を振るいつづけ──そしてまた最初のように真正面にもう一度剣を構えなおし、フッと魔法を解く。
短い静寂の後に、ワッと子どもたちの歓声が上がる。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる