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第二章 ダンジョン編

第41話 新たな剣 其の三(アドレアとロンド視点)

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 アクスウィル魔法学校に入学して一ヶ月、ボクは以前より自分の魔法に自信を持てるようになっていた。

 魔法学校に入学するのは魔法を専門的に学びたいという人ばかりだ。魔法師団などの戦闘で魔法を使うため、研究対象として魔法を使うため──目的は人それぞれだが優れた魔法の技術を得るためにどの生徒も入学している。

 その中でボクは実技の先生に褒められた。曰く、「基本がしっかり出来ている」と。

 嬉しかった。入学時期など知らずに編入して、ついていけるか不安でいっぱいだったからこの言葉はボクにすごく沁みた。同時に今までのパーティでの日々は無駄じゃなかったんだと思えた。

「そういえば、みんなどうしてるかな」

 寮の窓から夜空を見上げてふと考える。宿屋やギルドに訊いても誰一人としてどこにいるかは分からなかった。でも──

「きっとまた会えるよね」

 確証はないけどそんな気がする──いや、そう信じたいのだ。いつか会ったときに胸を張って会えるように、恥ずかしくないようなボクでいるために、頑張らなくちゃ。

 * * *

 久しぶりに剣を新調した。

前の剣も気に入ってはいたのだけれど、どれだけ丁寧に使って手入れをしていても、だんだんと劣化していく。剣は消耗品だからこればっかりは仕方がない。

 新しい剣をコルネくんにプレゼントするのなら、ついでに自分の剣も新調してお揃いにすればいい。その考えを思いついたとき、我ながら冴えていると思った。

 「弟子とお揃いの武器」──なんて甘美な響きなんだろう。

 もうコルネくんが道場にやって来て一月と半分が経とうとしている。毎朝食堂で待っているとコルネくんがやってくる──そんな生活が当たり前のように感じている。

 ほんの二ヶ月前までは僕とヘルガの二人だけだったはずなのに、その頃のことは遠い記憶のようだ。

 しかしよくよく考えてみれば僕はコルネくんとお揃いのものを何も持っていない。

伝え聞く限り、道場では同じ服を着て、同じ武器を使って、同じご飯を食べて生活するらしい。僕たちも同じご飯は食べているけどそれはお揃いではない。

 コルネくんは持ってきた二着をヘルガに洗濯してもらいながら着まわしているし、剣だって持っていたものをそのまま使っている。

 それなら服や武器を一緒に買いに行けばよかったのではと思うのだが、一緒に修行ができるというだけで幸せすぎてそんなこと考えもしなかった。

 だからお揃いの何かが持てるというだけで嬉しかった。しかしダグさんは僕の予想を遥かに超えるものを持ってきた。

 ダグさんは材料の質で作るときのテンションが変わり、それが意匠に如実に現れる。つまり鍛冶屋で聞いた「最高の魔力結晶」という言葉はお世辞でもなんでもなく、本当だったというわけだ。

 こんな見たこともないような剣、しかもそれがコルネくんとのお揃いだなんて満足を超えて大満足だった。

 僕は今、幸せで満たされている。幸せすぎて少し怖いくらいだ。
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