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第二章 ダンジョン編

第25話 ダンジョン探索 其の四(ロンド視点)

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 ラムハの外れにダンジョンが出来たと聞いたときは、一瞬平静を保てなくなるくらいには興奮した。

 冒険者ギルドの中で素っ頓狂な声を上げてしまい、ジロジロ見られて恥ずかしかったが、そんなことが気にならないほど頭の中は魔力結晶のことでいっぱいだった。

 正直にいうと僕は魔力結晶が大好きだ。陽に透かすとキラキラと光を反射する様はこの上なく美しい。

 単純に鑑賞用としても好きなのだが、やはり魔法結晶の素材としての優秀さは他の素材とは比べものにならない。

 魔法結晶を使った杖は使っていないものに比べて効果が桁違いだ。全力を出し切れているような錯覚に陥るほど魔力の通りがスムーズになる。

 Aランク以上のパーティで魔法使いをやっている者ならば魔法結晶の杖を持っているのは当たり前といった認識があるくらいには魔法使いには欠かせないものだ。

 もちろん魔法剣を使う僕も例外じゃない。僕の剣にも柄の部分に魔法結晶が埋め込まれている。

 それと同じようにコルネくんにも魔力結晶を使った剣を贈りたいと常々思っていた。結晶つきの剣を使えば彼の魔法剣はさらに上達するだろう。

しかし、僕はこの剣以外に魔力結晶を使ったものを持っていない。ダンジョンに行けないのだ。Sランク冒険者になってからは、緊急事態に備えて所在が分かるようにしなければならなくなった。

 そのため、どこかに出掛けるときは王国に申請しなければならない。ダンジョンが出来たと聞きつけて申請をしても、申請が受諾されたと返ってきた頃にはダンジョンは消えているのだ。

 それならば、と思って一度トレトのダンジョンに行ったが、レオンさんとサラさんに絶対に入り口の近くまでしか入っては駄目だと言われた。それで持ち帰ったのは剣に付いているこれ一つだったというわけだ。

 なら買えばいいのではないかと思うかもしれないが、魔力結晶は市場にはほとんど出回らない。加工して自身で使うか王国魔法師団が買い取るからだ。

 そんなところにダンジョン出現の報告、興奮しないわけがない。いつも頼んでいる鍛冶屋に頼んでコルネくんの剣を鍛えてもらおう。余裕があれば他の武具も作ってもらって……出来たら僕のもおそろいで作ってもらおうかな……。

 今この街にいる冒険者は僕たちだけ。もしかしたら二人でダンジョン中の魔力結晶を回収できるかもしれない。もちろん最奥の魔力結晶も。

最奥のダンジョンの核となっている魔力結晶は桁違いに大きい。一般的なダンジョンだと、大人が両手で抱えるサイズくらいになる。

 このような魔力結晶はほとんど王国が買い取り、王国魔法師団で使われると聞いている。持っていても集団で魔法を使わないのであればあまり効果はないし、移動の邪魔になるからだ。かなりいい値で買い取ってくれると噂では聞く。

 この大きい結晶は最初に最奥部までたどり着いた者が持ち帰れるのだが、ダンジョンが出来てから最奥部に着くまでの時間によって大きさが変化するらしいのだ。

 時間がかかってしまうとモンスターの魔石ほどになってしまったという例も確認されている。だから急かしてはいけないと思ってコルネくんには伝えてないけれど、僕は出来るだけ早くダンジョンの奥まで行きたい。

 あの結晶が手に入ればコルネくんも僕も、もしかしたら新しい魔法が使えるようになるかもしれないしね。

 ああ、明日が待ちきれない! こんなにそわそわするのは久しぶりだ。でも早く寝ないと明日に響くから……ベッドの中でそんなことを考えて目を瞑る。

 頑張って寝ようとしたが、遠足の前の子どものように僕はしばらく寝付けなかった。
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