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第一章

第11話 サラから見たコルネ

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 ロンドは前回の会議で会ったときには塞ぎこんでいた。

「大きな道場を建ててもらって、ベッドもたくさん買って……頑張って準備したのに誰も残らなかった。あはは、準備しているときが一番幸せってだったな。いや、追い出したのは僕なんだけどうちにいるよりレオンさんやサラさんの下で学んだ方が幸せなはず。僕の選択は間違ってない。そう……僕は子どもたちのためになることをしたんだ」

 独り言を終始ぶつぶつ呟いていて、話しかけるのが憚られる雰囲気だ。原因は分かっている。

 私の道場に紹介状を持ってたくさんの子どもが来た。ロンドからここを紹介されたと。

 子どもたちから事情を聞き、可哀想にと思うと同時にやはりと思う気持ちもあった。

 ロンドは天才だ。魔法の天才と周りからもてはやされた私から見ても分かる──私以上の天才だ。同じSランク冒険者として一括りに扱われることが多いが、そもそもレオンと私、それとロンドとは親子ほどの歳の差がある。

 その積み重ねた年を埋めるほどの才能がある。私は威力の高い魔法を、彼は発動の速い魔法を使うという違いはあるが、その気になれば私と同程度の威力の魔法も打てると見ている。

魔法において何よりも威力が重視されることと、実際にロンドが戦うところを見た人が少ないということからロンドの魔法が特別すごいという話は巷で聞かないが。

 私以上の魔法の才能がありながら、剣の腕も一流とは神によほど愛されているのだろう。そんな才能の塊がロンドだ。

魔法剣というものはロンドの圧倒的な才覚と努力だけで成り立っていると言ってもよい。剣と魔法で大成できるほどの才能──その両方が求められるのだ。

 その上で、両方を鍛えないと使いこなせないもの──それが魔法剣だ。それゆえ、魔法剣を使える人間がロンドの他にこの世に存在するとはおおよそ思えなかった。

 求められるものが多すぎるのだ。それはきっとロンドも分かっている。それでも自分が確立させた魔法剣というものを残したい、伝えたいと思ったのだろう。

 だから私にはロンドがよこした子どもたちの面倒を見ることと、ただ慰めることしか出来ない。

 それが今回の会議ではどうだ。会議中ずっと笑っているではないか。多少は立ち直ったことを期待していたが、もう気味が悪いほどだ。

 その後、弟子が出来たと聞いたときは驚いた。悲しみのあまり適当に誰かを弟子にしてしまったのかと思ったが、満面の笑みを見てその考えはすぐに消えた。

食事の後でそれとなく弟子の実力を聞き、「すごい」と返ってきたのにはもっと驚いた。

 剣と魔法の両方において天才的なロンドにすごいと言わしめる弟子……とんでもない大物に違いない。

 一体どんな弟子なのか──楽しみに道場に行くと特にこれと言って特徴のない普通の男の子がいた。

 あの魔法のために連れてきたルカの友人としてはいいかもしれないが、覇気があまり感じられない。本当にこの子がロンドの言う「天才」なのかと思った矢先、私の光の魔法「ブライト」を弱い光ながらも一発で成功させた。

 あり得ない。この魔法は発動をいかに素早く行うかが肝心だ。

 そして魔法の発動を素早く行うのは基礎──魔法の発動プロセスがしっかりと正しく出来ていないと不可能だ。それゆえにこの魔法は基礎が出来ているかの試金石として使われることもある。

 本当にしっかりと基礎が出来ていないと、集まりきらず光が霧散してしまうのだ。私の弟子でも道場に入ってから早くても七年ほどはかかる魔法だ。それをこう易々と成功させてしまうとは……

 光の魔法は魔法剣に使えそうと思ったのは間違いないのだが、この弟子を試してやろうという気持ちも同時にあったのだが……想像をはるかに超えてきおった。

 このロンドの弟子──コルネくんは間違いなく強くなる。もしかするとSランク冒険者がもう一人増えるのも時間の問題かもしれない。
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