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第一章

第10話 サラの訪問 其の二

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「ポイズン!」

 ルカくんが唱えると同時に毒々しい色の球体が空中に現れた。よく見ると球体の中で液体が流動しているようだ。

 おそらくあの液体は毒があるのだろう。制御が少し不安定のようだが、大丈夫だろうか。ルカくんの顔色もだんだん悪くなっているみたいだ。

 いや、心配している場合ではない。サラさんが何も言わないということは、体に負荷がかかるのを承知でやったのだろう。じっくり見なければ──中の液体の質感、対流の起き方、それを覆う膜のようなもの──全てをこの目に焼き付けなければ。

 間もなくべちゃ、という音を立てて制御を失った毒と思しき液体が地面に落ちる。地面が変色しているが、大丈夫なんだろうか。

「はぁ、はぁ……」
「すまないねぇ、ほら薬だよ」

 ルカくんの肩をさすりながら、サラさんが薬を飲ませている。おそらく解毒薬の類だろう。

 一般的に魔法は体内の魔力を増幅させてから、変換して体外に放出し発動させる。つまり体から出す前に一瞬だけ、魔力が変換後の状態で体内に存在するタイミングがある。

 一般的な魔法ならば、本当にわずかな時間なので特に問題はないのだが、毒系統の魔法は話が別だ。

 毒は人体に害があるから毒なのだ。少量でも吸収されてしまうとまずい。弱い毒ならまだいいが、強いものだとごく少量でも死に至ることがある。

 この毒系統の魔法は使うたびに解毒が必要となるので、最も扱いが難しい魔法の一つとされている。

「これは剣に纏わせることが出来れば使えるかと思ってねぇ。傷口から毒が入って一筋縄じゃいかない相手にいいんじゃないかい?」
「確かにそうかもしれませんが、もし使えても相討ちになる気はしますけどね」
「そこは……こう上手く使うんさね。使える人は多くないから習得できないかもしれないけど、例え使えなくても何かの参考にはなりそうだと思ってねぇ」

 習得できたらいいな……せっかくルカくんも頑張ってくれたことだし。

「じゃあ早速練習するさね。光の魔法は思いきってやるのがコツだよ」

 光を集めるようなイメージをしながら、手を掲げて唱える。

「ブライト!」

 念のため目を空いている方の手で覆っていたが別に眩しくはない。失敗したか……

「すごいじゃないか、コルネくん! 一発で成功だよ!」
「これは驚いたねぇ……」

 手をどけて見上げると弱弱しい光が手の上に漂っている。なるほど出力が弱かったみたいだ。

 自分ではかなり思いきってやってみたつもりだったんだけどな……この分だと本当に思いきりやっても、サラさんみたいに目が眩むほどの光は出せそうにないな。

威力の分かりやすい攻撃魔法ではなくても分かってしまうこの圧倒的な差──一人でAランクパーティよりも上の実力を持つSランク冒険者。改めて格の違いというものを見せつけられた。

 このサラさんと肩を並べる師匠って相当やばいんだろうな……うん? そういえば師匠の戦っているところ、まだ見たことないな?
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