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31話 悪徳商人隠ぺい工作を開始
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「レジリエンスローブの売れ行きが全然衰えないでござる! これも全部アキナ様のおかげでござる! 心の底から礼を申し上げまする!」
撮影当日、レナと一緒に【生態系の迷宮】に行くとゴンザレスが喜々しながら話しかけてきた。
「そう言って貰えると嬉しいわ。ありがとう」
自分と冒険者が接触しない様に、ゴンザレスが工作している。
流石にそんな面倒くさい事はしないだろうと思ったが、万が一という事もある。
アキナは今日やろうとしている事を悟られない様に満面の笑みを浮かべながら毅然と対応する。
「それじゃ撮影に行ってくるわね」
「今日はどんな動画を撮るのでござるか?」
撮影する動画の内容など今まで一度も聞かれたことはない。
もしかしてという想いアキナの頭の中をよぎる。
「聖女の結界を使ったバラエティ動画の撮影よ」
ゴンザレスにそう伝え、足早にこの場から離れた。
「もしかして商人の奴、気づいてんじゃ」
ゴンザレスの姿が見えなくなったことを確認して、レナが小さな声で耳打ちしてきた。
「考え過ぎよ。もし気づかれてたとしても何もできないはずよ」
ゴンザレスは、ああ見えてかなり強い。それは、これまでの経験からくる直感で分かるし、そもそもかなりの強さを持っていなければ、この【生態系の迷宮】の占領などできるはずがない。
だが、いくら強かろうと、本気で冒険者と接触しようとする自分を止める事ができる分けがない。
そう頭では確信していた。
だが、アキナの胸騒ぎは、おさまらなかった。
◇
(ああいう風に作り笑い浮かべてる時は何か企んでんだよな……やべえ事になったぞ)
ゴンザレスは激しく動揺した。
(レジリエンスローブは、こっちでは誰も買わない肩遅れ品だって気付いちまったか? それをいい加減な商売してて潰れた商会から、捨てる手間賃とか言ってカネまで貰って大量にもらってきた事にも気付いちまったか!?)
アキが何かに勘づいた事は間違いない。
(いや、レジリエンスローブの事は、まだいい。ここに俺がいる真の目的に気づかれちまったら、商売ができなくなっちまう)
心臓の鼓動が、どんどん激しくなっていった。
(もしかして俺が誰だか気づいたのか!? いや、それはねえ。完璧に変装してるからな。……でも、もしそうなら……いやそうだとしても疑ってるだけだ。証拠はなにも残してねえ! だったら隠し通せるハズだ!)
動揺と焦りで、身体中から油汗が流れ出てきた。
いずれにしてもなにかしらの証拠や証言を手に入れるために、冒険者と接触しようとしていることは確かだろう。
アキと冒険者が接触すると色々と面倒な事になるので、撮影場所の近くに冒険者がいたらジンに排除させてきた。
またアキも面倒事を避けるために、冒険者とは接触しない様に気を使っていた。
だが今回はアキから積極的に冒険者に接触しようとしている。そうなったらジンではカバーしきれないだろう。
『おいジン!』
『はいはい、いつもの接触妨害活動ッスよね。分かってるから大丈夫――』
『今回は俺がそれをやるから、お前はモニター室から俺をフォローしろ!』
『え? またどうして?』
『余計な詮索はすんな』
『はは、どうしったんっスか? マジになって?』
『理由はだいたい分かってるくせになに言ってんだ。お前、言うなよ?』
『ハハ……そりゃねえッスから、安心してください』
表情を見る限り、かなりビビっている。
これなら裏切る心配はないだろう。
『連絡はトランシーバーアプリで頼むぞ』
ゴンザレスは最後に一言だけそう伝え、魔力と気配を消して、慎重にアキを尾行し始めた。
撮影当日、レナと一緒に【生態系の迷宮】に行くとゴンザレスが喜々しながら話しかけてきた。
「そう言って貰えると嬉しいわ。ありがとう」
自分と冒険者が接触しない様に、ゴンザレスが工作している。
流石にそんな面倒くさい事はしないだろうと思ったが、万が一という事もある。
アキナは今日やろうとしている事を悟られない様に満面の笑みを浮かべながら毅然と対応する。
「それじゃ撮影に行ってくるわね」
「今日はどんな動画を撮るのでござるか?」
撮影する動画の内容など今まで一度も聞かれたことはない。
もしかしてという想いアキナの頭の中をよぎる。
「聖女の結界を使ったバラエティ動画の撮影よ」
ゴンザレスにそう伝え、足早にこの場から離れた。
「もしかして商人の奴、気づいてんじゃ」
ゴンザレスの姿が見えなくなったことを確認して、レナが小さな声で耳打ちしてきた。
「考え過ぎよ。もし気づかれてたとしても何もできないはずよ」
ゴンザレスは、ああ見えてかなり強い。それは、これまでの経験からくる直感で分かるし、そもそもかなりの強さを持っていなければ、この【生態系の迷宮】の占領などできるはずがない。
だが、いくら強かろうと、本気で冒険者と接触しようとする自分を止める事ができる分けがない。
そう頭では確信していた。
だが、アキナの胸騒ぎは、おさまらなかった。
◇
(ああいう風に作り笑い浮かべてる時は何か企んでんだよな……やべえ事になったぞ)
ゴンザレスは激しく動揺した。
(レジリエンスローブは、こっちでは誰も買わない肩遅れ品だって気付いちまったか? それをいい加減な商売してて潰れた商会から、捨てる手間賃とか言ってカネまで貰って大量にもらってきた事にも気付いちまったか!?)
アキが何かに勘づいた事は間違いない。
(いや、レジリエンスローブの事は、まだいい。ここに俺がいる真の目的に気づかれちまったら、商売ができなくなっちまう)
心臓の鼓動が、どんどん激しくなっていった。
(もしかして俺が誰だか気づいたのか!? いや、それはねえ。完璧に変装してるからな。……でも、もしそうなら……いやそうだとしても疑ってるだけだ。証拠はなにも残してねえ! だったら隠し通せるハズだ!)
動揺と焦りで、身体中から油汗が流れ出てきた。
いずれにしてもなにかしらの証拠や証言を手に入れるために、冒険者と接触しようとしていることは確かだろう。
アキと冒険者が接触すると色々と面倒な事になるので、撮影場所の近くに冒険者がいたらジンに排除させてきた。
またアキも面倒事を避けるために、冒険者とは接触しない様に気を使っていた。
だが今回はアキから積極的に冒険者に接触しようとしている。そうなったらジンではカバーしきれないだろう。
『おいジン!』
『はいはい、いつもの接触妨害活動ッスよね。分かってるから大丈夫――』
『今回は俺がそれをやるから、お前はモニター室から俺をフォローしろ!』
『え? またどうして?』
『余計な詮索はすんな』
『はは、どうしったんっスか? マジになって?』
『理由はだいたい分かってるくせになに言ってんだ。お前、言うなよ?』
『ハハ……そりゃねえッスから、安心してください』
表情を見る限り、かなりビビっている。
これなら裏切る心配はないだろう。
『連絡はトランシーバーアプリで頼むぞ』
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