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11話 魔法で人を救うのは十数年振り
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(間に合った)
モンスターと配信者らしい男の子の間に上手く入り込むことが出来たことに、アキナは安どする。
魔法を使うのは、10数年振りで不安だったが、なんとか上手くいったようだ。
だが、安心してばかりもいられない。
モンスターの拳は、今もこちらに向かって来ている。
これを防ぐために手の平を突き出し、聖女の結界を張った。
拳は結界に直撃し、辺り一帯に鈍い音が響く。
直後、モンスターの拳は砕け、腕からは骨が飛び出した。
「ウガアアア」
苦しみながら咆哮をあげるモンスターを、アキナは冷静に観察した。
(イエティ。どうしてここにいるの?)
上級者向けの7階層と9階層に生息するモンスターだ。1階層にいる事などあり得ない。
(ゴブリンやミニマム・ドレイクみたいに手なづけられてる? ……ううん、この状況を見る限りそんな事は無さそうね)
気にはなったが考えても分かる訳がないので、気持ちを切り替えることにした。
まずはイエティにやられて大けがをしている後ろの男の子に、治癒魔法をかける。
「え! 怪我が!?」
「これで、もう大丈夫よ」
「すいません、後ろ!」
イエティが再びこちらに向かって来たので、もう一度聖女の結界を張った。
今度は殴ろうとせずに、口から冷気を吐いてきた。
(どうしようかしら……)
当初の予定だと、治癒魔法をかけた後、再び転移魔法を使いこの場から離脱して終わるつもりだった。
しかし、少し離れた所にスマホでこちらを撮っている女の子がいる。質の悪い野次馬である。後からSNSにあげるつもりなのだろうか?
人が死ぬかも知れない状況をこんな事をしているのは不快だったが、だからといって、このまま放って転移をしたら今度は、あの女の子をイエティは襲うだろう。
なので、この場で倒すしかない。
「ねえ君、アイツは首の付け根あたりは刃物が通りやすくなってるの。お願いしていいかな?」
「え?」
「注意が私にいってるうちに早く!」
「は、はい!」
男の子は落ちている短刀を慌てながら拾いイエティの後ろに周りこみ、短刀でイエティの首元を突いた。
しかし、首元に刃物は通らなかった。
(あの動きだと冒険者でいえば、やっと初心者を脱皮したばかりね。きっと配信者でもまだまだ未熟な子に違いないわ。だったら、いくら首元でも刃物が刺さる訳ないじゃない。あー私の馬鹿! もっとちゃんとフォローしなきゃ!)
聖女の結界を張りながらもう片方の手で、身体能力強化の魔法を男の子にかけた。
「もう1回突いて!」
刃物が通らなかった事で、男の子はアキナの言葉を信じていいか迷っているようだ。
「私の言った通りにして!」
半信半疑といった表情を浮かべながら男の子は再びイエティの首元を短刀で突いた。
「アガアアアア」
首元から沢山の血しぶきが噴き出し、断末魔の声を上げながらイエティは地面に倒れ込んだ。
モンスターと配信者らしい男の子の間に上手く入り込むことが出来たことに、アキナは安どする。
魔法を使うのは、10数年振りで不安だったが、なんとか上手くいったようだ。
だが、安心してばかりもいられない。
モンスターの拳は、今もこちらに向かって来ている。
これを防ぐために手の平を突き出し、聖女の結界を張った。
拳は結界に直撃し、辺り一帯に鈍い音が響く。
直後、モンスターの拳は砕け、腕からは骨が飛び出した。
「ウガアアア」
苦しみながら咆哮をあげるモンスターを、アキナは冷静に観察した。
(イエティ。どうしてここにいるの?)
上級者向けの7階層と9階層に生息するモンスターだ。1階層にいる事などあり得ない。
(ゴブリンやミニマム・ドレイクみたいに手なづけられてる? ……ううん、この状況を見る限りそんな事は無さそうね)
気にはなったが考えても分かる訳がないので、気持ちを切り替えることにした。
まずはイエティにやられて大けがをしている後ろの男の子に、治癒魔法をかける。
「え! 怪我が!?」
「これで、もう大丈夫よ」
「すいません、後ろ!」
イエティが再びこちらに向かって来たので、もう一度聖女の結界を張った。
今度は殴ろうとせずに、口から冷気を吐いてきた。
(どうしようかしら……)
当初の予定だと、治癒魔法をかけた後、再び転移魔法を使いこの場から離脱して終わるつもりだった。
しかし、少し離れた所にスマホでこちらを撮っている女の子がいる。質の悪い野次馬である。後からSNSにあげるつもりなのだろうか?
人が死ぬかも知れない状況をこんな事をしているのは不快だったが、だからといって、このまま放って転移をしたら今度は、あの女の子をイエティは襲うだろう。
なので、この場で倒すしかない。
「ねえ君、アイツは首の付け根あたりは刃物が通りやすくなってるの。お願いしていいかな?」
「え?」
「注意が私にいってるうちに早く!」
「は、はい!」
男の子は落ちている短刀を慌てながら拾いイエティの後ろに周りこみ、短刀でイエティの首元を突いた。
しかし、首元に刃物は通らなかった。
(あの動きだと冒険者でいえば、やっと初心者を脱皮したばかりね。きっと配信者でもまだまだ未熟な子に違いないわ。だったら、いくら首元でも刃物が刺さる訳ないじゃない。あー私の馬鹿! もっとちゃんとフォローしなきゃ!)
聖女の結界を張りながらもう片方の手で、身体能力強化の魔法を男の子にかけた。
「もう1回突いて!」
刃物が通らなかった事で、男の子はアキナの言葉を信じていいか迷っているようだ。
「私の言った通りにして!」
半信半疑といった表情を浮かべながら男の子は再びイエティの首元を短刀で突いた。
「アガアアアア」
首元から沢山の血しぶきが噴き出し、断末魔の声を上げながらイエティは地面に倒れ込んだ。
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