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10話 アキナ、異常事態を察知!
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「……」
「怖い顔してどうしたんっすか?」
昔の思い出に浸りながらも、アキナはずっとある疑問を抱いていた。
「さっきから私たちモンスターに一度も襲われていないわよね?」
「そういえば……」
生態系の迷宮1階層の探索を始めて、既に一時間以上たっている。
その間一度もモンスターに襲われなかった。
いや、従業員の様に使役されているモンスターを除いて、目撃すらしていない。
過去の経験上、こういった時はダンジョンに何かしらの異常事態が起こっている。
ただの偶然に終わって欲しいと思いながら、1階層の魔力感知を始めた。
(でも、魔力がほとんどないモンスターなら私の感知にはかからない。それで身体能力が高かったら……)
◇
(アキさんマジ怖いし……)
今まで見たことがない険しい表情を浮かべているアキナにレナは、強い恐怖と困惑を覚えた。
(ってかダンジョンに来てからずっと変なんだけど)
いったいどう接すれば良いか分からず、カメラを向けたままうろたえ続けた。その時、奥のフロアからダンジョン配信者の一団がこちらに走ってきている事に気づく。
全員、顔色は青ざめて激しく怯えた表情をしている。
なにが起きているのか気になり、その中の一人の男に声をかけた。
「なんかあった?」
「見たことないすっごく強いモンスターが出てきて」
「今、レオン君が、戦ってるけど、もうダメだと思う」
「え、嘘っしょ?」
「ホントだよ! 俺だって信じらんないよ!」
レオンチャンネルのレオン。まだ中学生だが、短刀と小型の盾を使い沢山のモンスターをあっという間に倒す速攻型の戦闘スタイルを売りにした、映えるだけでなく確かな実力もある探索バトル系の人気配信者だ。
(マジでヤバいんだけど……)
これが事実ならば自分たちも巻き込まれるかも知れない。探索を中止し急いでこの場を離れなければ。そう思い、険しい表情でうつむているアキナに声を掛けようとしたその時だった。
「場所は直線で、ここから250m位の所で大丈夫よね?」
「知らねえよ、そんなの!」
アキナにそう吐き捨て、男は入り口に向かって走って行った。
「アキさん、もしかして行く気っすか!?」
人が良いアキナのことだ。助けに行くつもりなのだろう。だが、行ったこところで何もできないことは目に見えている。
おかしなアキナを見て狼狽してばかりだったが、命を失う様な事をするのは腕ずくでも止めなければならない。
そう思い腕をつかんだその時、
(なにこれ!?)
自分とアキナの身体が凄まじい速さで白い光の粒になっていく。
レナには、なにが起こっているのか分からなかった。
◇
「ガハッ」
レオンこと桜井樹。ch登録者が80万人もいて、4階層目にも挑戦する実力者である彼は今日「探索バトル系のトップクラス配信者が1時間でスライムを何匹狩れるか試してみた」というLIVE配信企画を1階層で行っていた。
普段はどこにでもいるスライムが見つからず苦労する中、企画中に今まで見たことがない白い毛で覆われた5mはあるゴリラの様なモンスターに彼は遭遇した。
このモンスターは多数の配信者たちを一方的に蹂躙しており、その圧倒的な力の前にその場にいる者は皆怯え誰も正面から戦おうとしなかった。
それを見たレオンは純粋に配信者達を助けたいという意志と、イマイチ盛り上がらなかったLIVE配信を盛り上げたいという気持ちの2つに突き動かされて、そのモンスターに向かっていった。
「ガフッ……はあ、はあ」
しかし、このモンスターは階層ボスを含めた、どのモンスターよりも強く、できた事は他の配信者達が逃げる為に一時的に注意を引き付けることだけだった。
他の配信者を逃がした後は、何度も殴られ自身も一方的に蹂躙され続けている。
(ヤバい。マジで死ぬ)
身体につけたプロテクターは壊された。
骨も何本も折られた。内臓もどこかやられたようでさっきから吐血が止まらない。
「があ!」
壁に叩きつけられて倒れ込み立ち上がる中、幼馴染でチームのカメラマンをしている女の子が目に入る。
自分にカメラを向けている所を見ると、まだLIVE配信を続けているようだ。
「なにやってんの!? 早く逃げろよ!」
「いま同接が30万人も行っているだよ。勿体ないじゃん」
「それどころじゃないだろ!」
生きてこの場を逃れるのは無理だと理解したレオンは妙に冷静になっていた。しかし、カメラマンの女の子だけでも無事に逃がしたいと思い声を荒げる。
モンスターはそんなレオンに無情にも、最後になるであろう一撃を振るうため拳を振り上げた。
殺される、そう思い身構えた時、突如目の前に沢山の白い光の粒が現れた。
「怖い顔してどうしたんっすか?」
昔の思い出に浸りながらも、アキナはずっとある疑問を抱いていた。
「さっきから私たちモンスターに一度も襲われていないわよね?」
「そういえば……」
生態系の迷宮1階層の探索を始めて、既に一時間以上たっている。
その間一度もモンスターに襲われなかった。
いや、従業員の様に使役されているモンスターを除いて、目撃すらしていない。
過去の経験上、こういった時はダンジョンに何かしらの異常事態が起こっている。
ただの偶然に終わって欲しいと思いながら、1階層の魔力感知を始めた。
(でも、魔力がほとんどないモンスターなら私の感知にはかからない。それで身体能力が高かったら……)
◇
(アキさんマジ怖いし……)
今まで見たことがない険しい表情を浮かべているアキナにレナは、強い恐怖と困惑を覚えた。
(ってかダンジョンに来てからずっと変なんだけど)
いったいどう接すれば良いか分からず、カメラを向けたままうろたえ続けた。その時、奥のフロアからダンジョン配信者の一団がこちらに走ってきている事に気づく。
全員、顔色は青ざめて激しく怯えた表情をしている。
なにが起きているのか気になり、その中の一人の男に声をかけた。
「なんかあった?」
「見たことないすっごく強いモンスターが出てきて」
「今、レオン君が、戦ってるけど、もうダメだと思う」
「え、嘘っしょ?」
「ホントだよ! 俺だって信じらんないよ!」
レオンチャンネルのレオン。まだ中学生だが、短刀と小型の盾を使い沢山のモンスターをあっという間に倒す速攻型の戦闘スタイルを売りにした、映えるだけでなく確かな実力もある探索バトル系の人気配信者だ。
(マジでヤバいんだけど……)
これが事実ならば自分たちも巻き込まれるかも知れない。探索を中止し急いでこの場を離れなければ。そう思い、険しい表情でうつむているアキナに声を掛けようとしたその時だった。
「場所は直線で、ここから250m位の所で大丈夫よね?」
「知らねえよ、そんなの!」
アキナにそう吐き捨て、男は入り口に向かって走って行った。
「アキさん、もしかして行く気っすか!?」
人が良いアキナのことだ。助けに行くつもりなのだろう。だが、行ったこところで何もできないことは目に見えている。
おかしなアキナを見て狼狽してばかりだったが、命を失う様な事をするのは腕ずくでも止めなければならない。
そう思い腕をつかんだその時、
(なにこれ!?)
自分とアキナの身体が凄まじい速さで白い光の粒になっていく。
レナには、なにが起こっているのか分からなかった。
◇
「ガハッ」
レオンこと桜井樹。ch登録者が80万人もいて、4階層目にも挑戦する実力者である彼は今日「探索バトル系のトップクラス配信者が1時間でスライムを何匹狩れるか試してみた」というLIVE配信企画を1階層で行っていた。
普段はどこにでもいるスライムが見つからず苦労する中、企画中に今まで見たことがない白い毛で覆われた5mはあるゴリラの様なモンスターに彼は遭遇した。
このモンスターは多数の配信者たちを一方的に蹂躙しており、その圧倒的な力の前にその場にいる者は皆怯え誰も正面から戦おうとしなかった。
それを見たレオンは純粋に配信者達を助けたいという意志と、イマイチ盛り上がらなかったLIVE配信を盛り上げたいという気持ちの2つに突き動かされて、そのモンスターに向かっていった。
「ガフッ……はあ、はあ」
しかし、このモンスターは階層ボスを含めた、どのモンスターよりも強く、できた事は他の配信者達が逃げる為に一時的に注意を引き付けることだけだった。
他の配信者を逃がした後は、何度も殴られ自身も一方的に蹂躙され続けている。
(ヤバい。マジで死ぬ)
身体につけたプロテクターは壊された。
骨も何本も折られた。内臓もどこかやられたようでさっきから吐血が止まらない。
「があ!」
壁に叩きつけられて倒れ込み立ち上がる中、幼馴染でチームのカメラマンをしている女の子が目に入る。
自分にカメラを向けている所を見ると、まだLIVE配信を続けているようだ。
「なにやってんの!? 早く逃げろよ!」
「いま同接が30万人も行っているだよ。勿体ないじゃん」
「それどころじゃないだろ!」
生きてこの場を逃れるのは無理だと理解したレオンは妙に冷静になっていた。しかし、カメラマンの女の子だけでも無事に逃がしたいと思い声を荒げる。
モンスターはそんなレオンに無情にも、最後になるであろう一撃を振るうため拳を振り上げた。
殺される、そう思い身構えた時、突如目の前に沢山の白い光の粒が現れた。
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