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2 我が物顔の訪問者

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「何しに来たんだよ」

 三年かけて独りで整備した工房だ。その戸を蹴破られ、残骸となった木片から俺は這い出ながら文句を言った。

「迎えに来たんだ」

 心配するそぶりがまるでない。俺を不死身か何かと勘違いしてるんじゃないか? アイネイアス姫は、腕を組んで胸を張っている。組まれた両腕に胸が狭そうにしてる。

 三年前に比べるとまた女らしい体格になっていた。以前は美少年の様相だったが、どう見ても今は年頃の乙女……にしては、凛々し過ぎるが。伸ばせば美しいはずの金髪、口調と態度は昔のまんまだ。成長してないどころか拗らせちゃったなと、俺は思った。

「冗談じゃない。もう俺は同期じゃないし、刀鍛冶士としてここで工房を開いて暮らしてるんだ。帰ってくれ」

「ここまで来るのに随分と掛かったんだぞ」

「知るか」

 俺はアイネイアス姫と目を合わさないように、戸の残骸を工房の外に片付けて、母屋に向かった。

 外は真っ暗で、虫の音とフクロウの鳴き声が響いている。アイネイアス姫は俺の後ろにピッタリと当たり前の様に付いてくる。

「ここは俺の住処だ。ここからはお前の勝手は許さない。もうドアを壊すなよ」

 ピシャリと言って、アイネイアス姫をドアの向こうに締め出す。俺は寝室に向かった。土ぼこりのついたシャツを脱いで、ズボンの埃を払った。

 ——バキッ!

 寝室の窓が破壊された。

「お前~~! 」

 家を壊すなと言っておけば良かった。破損した窓枠を外して、アイネイアス姫が侵入したかと思うと、悪びれずに俺に文句を言い出した。

「刀鍛冶士になっていると思って調べたら、冒険者になってたじゃないか。せめて、腕に覚えのある剣士とかじゃないのか? 」

「うるさい! お前のせいで卒業出来ずペナルティー受けて全授業料を返す羽目になったんだ。日銭稼ぎの冒険者をやらざるを得なかったんだ」

 刀鍛冶の工房がやっと出来上がり、後は少しずつ資材を揃えての開業のはずだった——俺にも色々諸事情があるんだよ!

「……聞いてないな」

「聞く前に王城に戻って行ったじゃないか! 」

「そうだったな。話は明日の朝にしよう。私は森を歩いてきて疲れている。一先ず寝てからにしよう」

 そう言うと、アイネイアス姫は俺のベッドを占拠してさっさと就寝してしまった。体力なんかアホほどあるだろうに。

 寝床だけは壊さないで欲しい……

 俺は居間の椅子に座り、テーブルに突っ伏して寝るしかなかった。
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