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レトナーク編
第14 お家に帰るまでがクエストよ
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「今さらなんだけど、馬車で帰るという発想は無かったのか?」
ロゼのハワゼット家の屋敷まで、石畳の道を歩いている。あたりは暗く、月明かりが石畳を照らして、ようやく歩ける。門までの道はまだまだ長い。
飲み潰れたミアを背負わされたギルが、ギルの剣を抱えたロゼに文句を言う。
「それは贅沢でしょう」
ロゼが悪びれずに、それを言う。
「……何を言ってるんだ」
ギルは抗議した。
街道の延長線上にそびえるハワゼット邸は、街の中心からずっと石畳だ。都市と言っていい街を見下ろす小高い丘の上にそびえてまるで城だ。
この石畳の方がよっぽど栄華を極めて、何が馬車は贅沢だ……。
森から里まで猪獣を背負うよりは楽だ。脱力した人間を背負って、ビアホールから小高い丘の邸宅まではそこそこある。1日のうちに運ばせるなんて、体力が残ってる云々の前に普通に理不尽だ。
ギルは、ガイに〈どのぐらい飲めるのか〉試されて、これは精神的にキツイ。
夜風が涼しくて、何とか歩いてるが、気分的にはサッサと横になりたい。ミアは背中でスヤスヤご就寝で時々耳がピクピク当たってきてくつぐったい。
「お家に帰るまでがクエストよ!」
上機嫌のロゼが、適当なことを言って、ほろ酔を楽しんでいる。
「言ってる事がめちゃくちゃだろ。」
「あれぇ、文句言います?」
「じゃ、こっちの荷物持ってくれ。」
腰に掛けてある装備を渡そうとするが、ロゼに嫌がられた。
「えー、私にこれ以上の荷物持たせるの?」
「…じゃ、ミアを置いていこうかな?」
ロゼに散々話のツマミにされて、何か仕返しをしたくなった。
グッタリしたミアを石畳の上に置くような素振りをすると、ロゼに墓穴を抉られる。
「ははーん。良いのかな?ガイさんに、今朝の事話しちゃおうかな?ぼく、ホームシックとストレスで癒しが足りないんでスゥーー!って。」
急にロゼが駆け足になる。
「おい!こら、タチが悪いぞ!」
ミアを背負い直し、同じ速さで追いかける。
結局、ほぼ全力で駆け上がってしまった。
門の前で、ロゼがミアの顔を覗き込む。
「あーぁ、せっかく洗ったのにコートで臭くなっちゃった。後で起こして、お風呂入れさせよ」
ビアを一口飲んだだけで寝てしまったミアは、朝まで起きそうもないが……
お転婆なロゼの顔が優しくなる。
ギルは、思うままの顔が出来るのが羨ましく思えた。
『…余計な事は言わないでおこう』と、ギルは思った。
「今日はありがとうね」
「?」
不意にロゼから感謝をされて、ギルは不思議に思った。
「ミアを評価してくれて。ナサリーさんに褒められても、私に褒められても、ミアの気持ちになかなか届かないのよね。助かったわ」
「難しいんだな」
「そんなものよ。だいたい、合理的な思考回路なのに、理不尽な事に素直に振り回されるギルの方がおかしいのよ」
「感謝されるよりも、酷いことを言われてる比重の方が重いんだけど。」
お帰りなさいませと、執事が門まで迎えに来てくれていた。
ロゼのハワゼット家の屋敷まで、石畳の道を歩いている。あたりは暗く、月明かりが石畳を照らして、ようやく歩ける。門までの道はまだまだ長い。
飲み潰れたミアを背負わされたギルが、ギルの剣を抱えたロゼに文句を言う。
「それは贅沢でしょう」
ロゼが悪びれずに、それを言う。
「……何を言ってるんだ」
ギルは抗議した。
街道の延長線上にそびえるハワゼット邸は、街の中心からずっと石畳だ。都市と言っていい街を見下ろす小高い丘の上にそびえてまるで城だ。
この石畳の方がよっぽど栄華を極めて、何が馬車は贅沢だ……。
森から里まで猪獣を背負うよりは楽だ。脱力した人間を背負って、ビアホールから小高い丘の邸宅まではそこそこある。1日のうちに運ばせるなんて、体力が残ってる云々の前に普通に理不尽だ。
ギルは、ガイに〈どのぐらい飲めるのか〉試されて、これは精神的にキツイ。
夜風が涼しくて、何とか歩いてるが、気分的にはサッサと横になりたい。ミアは背中でスヤスヤご就寝で時々耳がピクピク当たってきてくつぐったい。
「お家に帰るまでがクエストよ!」
上機嫌のロゼが、適当なことを言って、ほろ酔を楽しんでいる。
「言ってる事がめちゃくちゃだろ。」
「あれぇ、文句言います?」
「じゃ、こっちの荷物持ってくれ。」
腰に掛けてある装備を渡そうとするが、ロゼに嫌がられた。
「えー、私にこれ以上の荷物持たせるの?」
「…じゃ、ミアを置いていこうかな?」
ロゼに散々話のツマミにされて、何か仕返しをしたくなった。
グッタリしたミアを石畳の上に置くような素振りをすると、ロゼに墓穴を抉られる。
「ははーん。良いのかな?ガイさんに、今朝の事話しちゃおうかな?ぼく、ホームシックとストレスで癒しが足りないんでスゥーー!って。」
急にロゼが駆け足になる。
「おい!こら、タチが悪いぞ!」
ミアを背負い直し、同じ速さで追いかける。
結局、ほぼ全力で駆け上がってしまった。
門の前で、ロゼがミアの顔を覗き込む。
「あーぁ、せっかく洗ったのにコートで臭くなっちゃった。後で起こして、お風呂入れさせよ」
ビアを一口飲んだだけで寝てしまったミアは、朝まで起きそうもないが……
お転婆なロゼの顔が優しくなる。
ギルは、思うままの顔が出来るのが羨ましく思えた。
『…余計な事は言わないでおこう』と、ギルは思った。
「今日はありがとうね」
「?」
不意にロゼから感謝をされて、ギルは不思議に思った。
「ミアを評価してくれて。ナサリーさんに褒められても、私に褒められても、ミアの気持ちになかなか届かないのよね。助かったわ」
「難しいんだな」
「そんなものよ。だいたい、合理的な思考回路なのに、理不尽な事に素直に振り回されるギルの方がおかしいのよ」
「感謝されるよりも、酷いことを言われてる比重の方が重いんだけど。」
お帰りなさいませと、執事が門まで迎えに来てくれていた。
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