5 / 22
レトナーク編
第4話 ミアは食べるのが遅いんだけど
しおりを挟む
冒険者ギルドからすぐ近くのレストランで、4人は遅い昼食をとっている。ギルドの職員がよく出入りする庶民的なレストランだが、武骨な冒険者達にはやや繊細すぎるインテリアだ。
ロゼとガイは、冒険者ギルドの最近の依頼傾向の話題で盛り上がっている。誰が何を達成したとか失敗したと、次々と冒険者たちの名前が上がる。話すスピードと食事をとるスピード、どちらも早い。
テーブルは、料理の乗った皿が片付けられた席とそうでない席になってしまった。
ギルは、4人の中で知らない者はミア1人だけなのにわずかな疎外感を受けている。
「ギル、食事が進んでないが、口に合わないか? 」
ガイが心配する。時折お忍びで王宮の外に出ているつもりなのだが、ガイからすると世間知らずの箱入り王子扱いになる。
「いや、美味しいよ。ゆっくり食べているだけだよ」
ギルが食事の手が止まるのに対して、ミアの方は忙しく手を動かしている。
「ミアも、何慌てて食べてるの? 味わってないでしょ」
ロゼに声かけられたミアが、フォークをおいて、口を隠してモグモグする。
「お口小さいんだから、そんなに慌てたら息詰まっちゃうよ? 」
「うん……」
ミアは、ロゼとガイが食べ終わっているのに気がついて慌てて食べ終わらせようとしている。
ギルは向かいに座る猫族のミアが、想定した範囲を超えているのには驚いていた。
フードを外して現れたボサボサ髪とふさふさの猫耳。年頃のはずなのだが、化粧っ気もなく、痩せて年齢よりも幼い見かけだ。冒険者の装備は使い込んだものとうかがわせるが、あくまで最低限なのぐらいは分かる。
ロゼから事前にもっと聞いておけば良かったのかも知れない。彼女ミアとロゼとのギャップが理解出来ない……と、ギルは思う。
『本当にCランクなのか? 』
ソロで冒険者をしてきたミアに頼もしさをイメージ出来ない。そんなに簡単にCランクに上がれるのだろうかと、冒険者ランクの基準が分からなくなってくる。
ミアは、空腹と睡眠不足で目を回して倒れたのだが、緊張したままよく噛みもせず、水を飲みながらひたすら食事を胃に流し込んでいる。
とても味わっている様子ではない。
話に加わろうという様子もない。
『今声をかけたら、吐き出しそうだな』
と、話しかけるネタもなくギルは思う。
『ロゼは、ミアを自分の引き立て役に連れてきた……なんて事はないよな。ロゼはそういうタイプの女性ではないはず。むしろ、許婚の自分に無関心なぐらいだ』
ギルにとってロゼは、媚びてこない稀有な人物で、同世代で唯一対等に近い相手だ。気のおけない相手と期待していたが、ロゼの関心は全く別方向にあるように思える。
今回は、ギルのために組まれた冒険者パーティー。剣術の師匠であるギルが護衛を兼ねてのランクAのリーダーだ。ロゼも、経験豊富なBランク。
『ミアは、成り立てのCランク…、ロゼが贔屓目で身内を連れてきたのか……と、したら、先が思いやられる。真面目にやる気がない?』
ふと、ギルの目にぴょこぴょこしている物が目に止まり、それはロゼの両手に大切そうに握られている。思わず凝視してしまった。
ロゼの両手の下にも伸びているそれは、ミアの体につながったものだった。ロゼはミアのそれに癒されている。
『しっぽ……』
ギルは思わず瞬きをして軽く頭を揺すって意識を元に戻そうとした。ロゼがミアを誘った理由がそこにあるのではないかと、ギルは思った。
ロゼとガイは、冒険者ギルドの最近の依頼傾向の話題で盛り上がっている。誰が何を達成したとか失敗したと、次々と冒険者たちの名前が上がる。話すスピードと食事をとるスピード、どちらも早い。
テーブルは、料理の乗った皿が片付けられた席とそうでない席になってしまった。
ギルは、4人の中で知らない者はミア1人だけなのにわずかな疎外感を受けている。
「ギル、食事が進んでないが、口に合わないか? 」
ガイが心配する。時折お忍びで王宮の外に出ているつもりなのだが、ガイからすると世間知らずの箱入り王子扱いになる。
「いや、美味しいよ。ゆっくり食べているだけだよ」
ギルが食事の手が止まるのに対して、ミアの方は忙しく手を動かしている。
「ミアも、何慌てて食べてるの? 味わってないでしょ」
ロゼに声かけられたミアが、フォークをおいて、口を隠してモグモグする。
「お口小さいんだから、そんなに慌てたら息詰まっちゃうよ? 」
「うん……」
ミアは、ロゼとガイが食べ終わっているのに気がついて慌てて食べ終わらせようとしている。
ギルは向かいに座る猫族のミアが、想定した範囲を超えているのには驚いていた。
フードを外して現れたボサボサ髪とふさふさの猫耳。年頃のはずなのだが、化粧っ気もなく、痩せて年齢よりも幼い見かけだ。冒険者の装備は使い込んだものとうかがわせるが、あくまで最低限なのぐらいは分かる。
ロゼから事前にもっと聞いておけば良かったのかも知れない。彼女ミアとロゼとのギャップが理解出来ない……と、ギルは思う。
『本当にCランクなのか? 』
ソロで冒険者をしてきたミアに頼もしさをイメージ出来ない。そんなに簡単にCランクに上がれるのだろうかと、冒険者ランクの基準が分からなくなってくる。
ミアは、空腹と睡眠不足で目を回して倒れたのだが、緊張したままよく噛みもせず、水を飲みながらひたすら食事を胃に流し込んでいる。
とても味わっている様子ではない。
話に加わろうという様子もない。
『今声をかけたら、吐き出しそうだな』
と、話しかけるネタもなくギルは思う。
『ロゼは、ミアを自分の引き立て役に連れてきた……なんて事はないよな。ロゼはそういうタイプの女性ではないはず。むしろ、許婚の自分に無関心なぐらいだ』
ギルにとってロゼは、媚びてこない稀有な人物で、同世代で唯一対等に近い相手だ。気のおけない相手と期待していたが、ロゼの関心は全く別方向にあるように思える。
今回は、ギルのために組まれた冒険者パーティー。剣術の師匠であるギルが護衛を兼ねてのランクAのリーダーだ。ロゼも、経験豊富なBランク。
『ミアは、成り立てのCランク…、ロゼが贔屓目で身内を連れてきたのか……と、したら、先が思いやられる。真面目にやる気がない?』
ふと、ギルの目にぴょこぴょこしている物が目に止まり、それはロゼの両手に大切そうに握られている。思わず凝視してしまった。
ロゼの両手の下にも伸びているそれは、ミアの体につながったものだった。ロゼはミアのそれに癒されている。
『しっぽ……』
ギルは思わず瞬きをして軽く頭を揺すって意識を元に戻そうとした。ロゼがミアを誘った理由がそこにあるのではないかと、ギルは思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる