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閑話 フリートーク
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「七さ~ん、私は先生らしくやれてるんですかねえ…」
「ここに来る生徒で、カオルちゃんの授業から逃げてくる子はいないけど?」
「いくらでもこの学校は抜け道あるじゃないですか~」
追加のカフェオレを入れて、フリータイム。
先ほどまでカッチカチに堅い反応だった昭隅とは別人のように、彼女はふにゃんふにゃんのマシュマロのように溶けている。
「今日もあれだけ忘れ物ないか確認したのに、プロジェクターに移すデータ入れたUSBを職員室に忘れて…。
皆すんごい生暖かい目で私を見るんですから!いや、私が悪いんですけどね!?」
「冷やかされて授業ができないよりいいじゃないの」
「全力疾走で取りに行っても、職員室に居た先生にもそんな顔されるし!みんな優しくて有難いですけど、結構心が痛いんですから!」
昭隅は手元に置かれたカフェオレをグイッと一気飲みした。
「おかわりお願いしますっ!!!」
「はいはい」
昭隅は何も知らずにこの教師という仕事に放り込まれたのだが、彼女はその生真面目さで業務に食らいついて今に至る。
本当ならば、色んな意味でできないことなのだが、彼女はそれが出来てしまっている。
『研修』と称して見学した授業の受け持ちが厳格ではあるがユーモアのある人気教師・晴田(はるた)だったこともあり、彼女はそれが『教師』であると信じたようだった。
厳格であり、優しくもある教師――――。それが昭隅の中の教師なのだろう。
だから普段の昭隅は生徒や同僚に対してはかなりドライであり、淡々と、且つ堅い印象を否応にもなく受けさせる。
だが、彼女の本質はかなりのおっとりさんであり、おっちょこちょいである。
授業内での生徒の様子はよーく見ているのだが、作業として一つの事を考え始めると、他の事はすっぱり忘れてしまう、マルチタスクがまったくできない性格なのだ。
『完璧』にしたいけれど、その気概も溢れているけれど、根本的に昭隅はそれになり切れない、愛すべき教師なのだ。
七補士が言い含めている部分もあるが、生徒たちは昭隅が必死になるのは全て生徒に対してというのを否応なく感じさせられるから、無粋な茶々を入れないのだ。
「中々いないわよ。そんな身を粉にして生徒のこと考える教師って。だってカオルちゃん、オフも全部授業の資料作りとか、生徒の事考えているし。そんなこと続けていたらパンクしちゃうわよ」
やんわりと七補士は釘を刺す。
パンクなどすることなど、本当はないのだろうが…。
「???普通は、そうではないんですか?生徒と向き合わないと、考えないと、あの子たちが何の解を探しているのか…探したいのか分からないじゃないですか」
曇りない瞳で、昭隅は不思議そうに七補士に逆に聞き返した。
彼女が仕事と定めたことに全てを振るのは感心すべきことでもあり、止めるべきでもあるのだがどう答えたものか。
「ヒント、…猪子陀先生」
七補士は教師の中であまり生徒からも、同僚からも評判が最悪の猪子陀(いしだ)の名前をポソッと昭隅に耳打ちした。
「ああ~…」
彼の名前が聞こえた瞬間、昭隅はガクッと崩れ落ちて砂のように散っていた。
「ここに来る生徒で、カオルちゃんの授業から逃げてくる子はいないけど?」
「いくらでもこの学校は抜け道あるじゃないですか~」
追加のカフェオレを入れて、フリータイム。
先ほどまでカッチカチに堅い反応だった昭隅とは別人のように、彼女はふにゃんふにゃんのマシュマロのように溶けている。
「今日もあれだけ忘れ物ないか確認したのに、プロジェクターに移すデータ入れたUSBを職員室に忘れて…。
皆すんごい生暖かい目で私を見るんですから!いや、私が悪いんですけどね!?」
「冷やかされて授業ができないよりいいじゃないの」
「全力疾走で取りに行っても、職員室に居た先生にもそんな顔されるし!みんな優しくて有難いですけど、結構心が痛いんですから!」
昭隅は手元に置かれたカフェオレをグイッと一気飲みした。
「おかわりお願いしますっ!!!」
「はいはい」
昭隅は何も知らずにこの教師という仕事に放り込まれたのだが、彼女はその生真面目さで業務に食らいついて今に至る。
本当ならば、色んな意味でできないことなのだが、彼女はそれが出来てしまっている。
『研修』と称して見学した授業の受け持ちが厳格ではあるがユーモアのある人気教師・晴田(はるた)だったこともあり、彼女はそれが『教師』であると信じたようだった。
厳格であり、優しくもある教師――――。それが昭隅の中の教師なのだろう。
だから普段の昭隅は生徒や同僚に対してはかなりドライであり、淡々と、且つ堅い印象を否応にもなく受けさせる。
だが、彼女の本質はかなりのおっとりさんであり、おっちょこちょいである。
授業内での生徒の様子はよーく見ているのだが、作業として一つの事を考え始めると、他の事はすっぱり忘れてしまう、マルチタスクがまったくできない性格なのだ。
『完璧』にしたいけれど、その気概も溢れているけれど、根本的に昭隅はそれになり切れない、愛すべき教師なのだ。
七補士が言い含めている部分もあるが、生徒たちは昭隅が必死になるのは全て生徒に対してというのを否応なく感じさせられるから、無粋な茶々を入れないのだ。
「中々いないわよ。そんな身を粉にして生徒のこと考える教師って。だってカオルちゃん、オフも全部授業の資料作りとか、生徒の事考えているし。そんなこと続けていたらパンクしちゃうわよ」
やんわりと七補士は釘を刺す。
パンクなどすることなど、本当はないのだろうが…。
「???普通は、そうではないんですか?生徒と向き合わないと、考えないと、あの子たちが何の解を探しているのか…探したいのか分からないじゃないですか」
曇りない瞳で、昭隅は不思議そうに七補士に逆に聞き返した。
彼女が仕事と定めたことに全てを振るのは感心すべきことでもあり、止めるべきでもあるのだがどう答えたものか。
「ヒント、…猪子陀先生」
七補士は教師の中であまり生徒からも、同僚からも評判が最悪の猪子陀(いしだ)の名前をポソッと昭隅に耳打ちした。
「ああ~…」
彼の名前が聞こえた瞬間、昭隅はガクッと崩れ落ちて砂のように散っていた。
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