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第69話 交代か?続行か?(後編)
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「おい兄貴、なにいつまでも黙り込んでんだよ、らしくもねー。いい加減何か言えって」
「そうだな。なあ輝明こっちの方はどうだ?あっちの方は無理かもしれないがこっちの方ならいけるんじゃないか?」
そう言って自由が示そうとしたサインらしきにそれを目にした涼夏と龍介は自然と疑問が浮かんだ。
((0マーク?でもそれって隅っこ投げる為のサインじゃ…))
なるほど。確かにそっちの方なら…
(無理なら無理って示してくれ)
だけどやっぱり…怖い。けれど元々予定になかった前沢君とのバッテリーの延長を組み込むって事はきっと先輩には何らかの意図があるんですよね。そう、これはきっと先輩が前に僕に言ってくれ『た大きな一歩の為の小さな一歩。或いは小さな前進』だ。それに…
『そ、そんなに俺じゃ駄目なのかよ!俺じゃそんなに頼りねーのかよ!!』
そんな気持ちはなかったつもりだけど、僕の態度が彼を傷つけてしまった。それなら…
「な、何だよ。人の顔じっと見たりして」
僕の行動で傷つけたなら、今度は僕自身の行動でそれを訂正したい!
輝明は決意を固める意味もあり龍介の方を見つめていたが、暫くすると自由の方へと向き直り、不安そうな表情を残しつつもゆっくりと頷いた。
「よし、それじゃ決定な。但し無理そうだったら当初の予定通り俺と交代だ」
(強く否定する事も無かったしいいんだよな、多分)
再び頷いた後、今度は龍介の方を向いて彼の目の前に左手を差し出した。
「な、何だよ突然」
(これは…ちょっと意外だな。まさか輝明の方から)
なんとなく輝明の心情を理解した自由がくすっと笑って龍介の耳にそっと小さく囁いた。
「一緒に頑張ろって、さ」
(さっきはカッとなっちまったけど、こいつはこいつなりに俺と向き合おうとしてくれている、のか?)
「まあ、よろし…痛てててててててぇえ――!!」
なんとなく照れくささを感じていた龍介だったが、そっぽを向きながら差し出された手を握った瞬間に過去一、二を争うレベルの握力が彼の手に襲い掛かった。あまりに突然の痛みに龍介はとっさに左手を引っ込めて痛みの発生源たる眼前の人物を睨みつけた。
「いきなり何すんだよ!」
「???」
あれ、またしても失敗…なのかな?おかしいな。前沢先輩に言われた通りにしている筈なのに。
(こいつ…なるほど。僅かながらこいつの事を少しは分かってきたぞ。この感じ、自分が悪い事をしてしまっているとは微塵も思ってないな。と言うより何が問題なのかを理解してねーな。無知っつうかなんつーか、愚妹と違って意図的に悪意をぶつけてくるようなタイプじゃねー。そしてその愚妹がけしかけた感じでもない。と、なると…)
「おい兄貴!これ兄貴の仕業だろう!」
「こらこら人聞きの悪いこと言うなよ。俺はただ握手する時は力強く握ってあげた方が相手が喜ぶぞって輝明に教えただけさ」
「『教えただけ』じゃねーよ!やっぱり兄貴が原因なんじゃねーか!」
「まあ、そういうのはいいとして「よくねーよ!」大丈夫そうか」
(正直今すぐに首を横に振ってしまい気持ちもある。けど、きっと、これは、必要な事の筈だから!)
いつもと比べてどこか重苦しさを感じさせるその質問に輝明は『頑張ります』とメモと真っすぐな眼差しで返答した。
(頑張ります、か。やっぱり精神的負荷は免れないみたいだな。けど、それでもやろうとしてるって事は少しでも前に進めるよう努力するて事だもんな。なら後はギリギリまで見守るしかないな)
「あの~語り合ってるところ悪いんだけど、さっきのアレって何の?二人だけで分かったようなやり取りしないでこっちにわかるように説明してくれよ」
「説明、説明か…あ~、まあ『バッ!』ってボール来るから気を付けろよ」
「ちょっと待った今ので説明終了じゃないわよね?」
「擬音だけだとなに言ってるかわかんねーよ」
「だってどう説明していいかわかんなくてな」
((語彙力が小学生…))
「それに多分説明したって無意味だぞ、無駄。頭でどうこうよりも体で反応しないとだから慣れるしかないと思うぞ」
「そ~ですか~」
(結局何も分らず終いでぶっつけ本番か。ま、なんとかなんだろう)
「プレイ」
(なんだかさっきまであまり表情に変化が見られなかった分、あいつのマウンド上での不安そうな感じが顔からアリアリと伝わってくんな。そんなに俺が心配かよ、くそっ!『ガシャーン!』え?)
龍介が不満に思っている最中、後ろからフェンスにボールがぶつかる音が聞こえ後ろを振り向くとボールが転がっており、前を向くと輝明が投げ下ろしている状態が彼の目に入った光景だった。
「そうだな。なあ輝明こっちの方はどうだ?あっちの方は無理かもしれないがこっちの方ならいけるんじゃないか?」
そう言って自由が示そうとしたサインらしきにそれを目にした涼夏と龍介は自然と疑問が浮かんだ。
((0マーク?でもそれって隅っこ投げる為のサインじゃ…))
なるほど。確かにそっちの方なら…
(無理なら無理って示してくれ)
だけどやっぱり…怖い。けれど元々予定になかった前沢君とのバッテリーの延長を組み込むって事はきっと先輩には何らかの意図があるんですよね。そう、これはきっと先輩が前に僕に言ってくれ『た大きな一歩の為の小さな一歩。或いは小さな前進』だ。それに…
『そ、そんなに俺じゃ駄目なのかよ!俺じゃそんなに頼りねーのかよ!!』
そんな気持ちはなかったつもりだけど、僕の態度が彼を傷つけてしまった。それなら…
「な、何だよ。人の顔じっと見たりして」
僕の行動で傷つけたなら、今度は僕自身の行動でそれを訂正したい!
輝明は決意を固める意味もあり龍介の方を見つめていたが、暫くすると自由の方へと向き直り、不安そうな表情を残しつつもゆっくりと頷いた。
「よし、それじゃ決定な。但し無理そうだったら当初の予定通り俺と交代だ」
(強く否定する事も無かったしいいんだよな、多分)
再び頷いた後、今度は龍介の方を向いて彼の目の前に左手を差し出した。
「な、何だよ突然」
(これは…ちょっと意外だな。まさか輝明の方から)
なんとなく輝明の心情を理解した自由がくすっと笑って龍介の耳にそっと小さく囁いた。
「一緒に頑張ろって、さ」
(さっきはカッとなっちまったけど、こいつはこいつなりに俺と向き合おうとしてくれている、のか?)
「まあ、よろし…痛てててててててぇえ――!!」
なんとなく照れくささを感じていた龍介だったが、そっぽを向きながら差し出された手を握った瞬間に過去一、二を争うレベルの握力が彼の手に襲い掛かった。あまりに突然の痛みに龍介はとっさに左手を引っ込めて痛みの発生源たる眼前の人物を睨みつけた。
「いきなり何すんだよ!」
「???」
あれ、またしても失敗…なのかな?おかしいな。前沢先輩に言われた通りにしている筈なのに。
(こいつ…なるほど。僅かながらこいつの事を少しは分かってきたぞ。この感じ、自分が悪い事をしてしまっているとは微塵も思ってないな。と言うより何が問題なのかを理解してねーな。無知っつうかなんつーか、愚妹と違って意図的に悪意をぶつけてくるようなタイプじゃねー。そしてその愚妹がけしかけた感じでもない。と、なると…)
「おい兄貴!これ兄貴の仕業だろう!」
「こらこら人聞きの悪いこと言うなよ。俺はただ握手する時は力強く握ってあげた方が相手が喜ぶぞって輝明に教えただけさ」
「『教えただけ』じゃねーよ!やっぱり兄貴が原因なんじゃねーか!」
「まあ、そういうのはいいとして「よくねーよ!」大丈夫そうか」
(正直今すぐに首を横に振ってしまい気持ちもある。けど、きっと、これは、必要な事の筈だから!)
いつもと比べてどこか重苦しさを感じさせるその質問に輝明は『頑張ります』とメモと真っすぐな眼差しで返答した。
(頑張ります、か。やっぱり精神的負荷は免れないみたいだな。けど、それでもやろうとしてるって事は少しでも前に進めるよう努力するて事だもんな。なら後はギリギリまで見守るしかないな)
「あの~語り合ってるところ悪いんだけど、さっきのアレって何の?二人だけで分かったようなやり取りしないでこっちにわかるように説明してくれよ」
「説明、説明か…あ~、まあ『バッ!』ってボール来るから気を付けろよ」
「ちょっと待った今ので説明終了じゃないわよね?」
「擬音だけだとなに言ってるかわかんねーよ」
「だってどう説明していいかわかんなくてな」
((語彙力が小学生…))
「それに多分説明したって無意味だぞ、無駄。頭でどうこうよりも体で反応しないとだから慣れるしかないと思うぞ」
「そ~ですか~」
(結局何も分らず終いでぶっつけ本番か。ま、なんとかなんだろう)
「プレイ」
(なんだかさっきまであまり表情に変化が見られなかった分、あいつのマウンド上での不安そうな感じが顔からアリアリと伝わってくんな。そんなに俺が心配かよ、くそっ!『ガシャーン!』え?)
龍介が不満に思っている最中、後ろからフェンスにボールがぶつかる音が聞こえ後ろを振り向くとボールが転がっており、前を向くと輝明が投げ下ろしている状態が彼の目に入った光景だった。
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