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第59話 目を瞑るさ
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”シュッ” ”パァン”
「ストライーク!」
周囲から何気に注目を集めていた初球。輝明は特に動きを見せることなく見送ったボールはミットに収まった。
「ふっふっふ、やはり手も足も出ないか。いや~やっぱり一年生相手にこんな魔球を使うなんて大人気なかったな~!でもこれも勝負の世界だから恨んでくれるなよルーキー」
「あ~あ、また始まっちゃったよ。まっちの悪い癖が」
「いいですかキャップ。あの人まだ討ち取ったわけでもないのに完全に調子に乗ってるですけど」
「まあ、打たれたショックを引きずるよりはいいんじゃないか?同じ最上級生《三年生》と言う立場として思うところがないわけでは無いが、これも投手が自身のモチベーションを上げる為の一つの要素として目を瞑るさ」
”シュッ” ”パァン”
「ボール!」
”シュッ” ”パァン”
「ボール!ボールツー!」
いささか問題のある投手の態度を見なかったものとしている間に二球目三球目が外れてワンストライク、ツーボールとなった。
「くっ、グラウンドの妖精の仕業か。或いは入学前の新人を哀れんだ神がボールの軌道修正を行なって奴らに有利になるよう加勢しているみたいだな」
「…わけわかんない妄想してないでちゃん現実を受け止めろ。ちょっとというかかなり無駄な力が入り過ぎてるぞ」
「ふ、そうやって後輩を気遣うとはお前は優しいな」
「………」
「…キャプテン、本当に良いんですか?あのまま現実逃避させてて」
「ああやって心の均衡を保ってボールが入らない事の動揺を隠しているんだろう。多分」
((そこまで器用な人には思えないだけど…))
む~、俺様のナックルを打てないからと見逃し戦法とは卑怯な!しかしそれならそれで入れていけばいいだけだ!
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「これで1ー2」
「全然動く気配が見えない。追い込まれるまでは見て行くみたいね。確かに打ち取ってはいるけどここまで結構ボール球も多い」
「ナックルはその性質上投げた本人さえどう変化するわからず、ミットに収まるまでストライクかボールになるかも確定しない。だから狙ってストライク投げるのが一番難しい球とも言えるし、いい作戦かもしれないな。あの人ナックルのコントロールがあんま良くないからな」
(どうせすぐ気付かれるだろうしこれぐらいは言っていいよな?)
「ああ、そう言えば誰かさんもボール球打ち損じで打ち取られたんだもんな」
「…そういう誰かさんも釣り球を打ち上げてアウトになったんだったわね」
「「………っ!」」
「ほらほら、二人とも喧嘩せず応援しよ「カキィ―ン!」えっ?」
喧嘩に気を取られていた三人だったが大きな打球音に反射的にグランドの方を見るとライトのバックネットに打球が飛び審判がファールを宣言していた。
「あ、あいつ今打ったの?あのナックルを?」
「ごめん桃。今、目を離してて見てなかったんだけどあの球をピッチャーの子があそこまで飛ばしたの?」
「えっと、あんまり自信ないけど多分ストレート…だったと思うけど」
「ああ、あれはストレートで間違いないと思うぞ」
「ナックルオンリーじゃなかったの?」
「兄貴に対してのは報復の為だから特別投げたのだとばかり思ってたけど」
「偶に投げるぞ。まあ大抵が…」
「…?」
「なんだったっけ?忘れた」
「ちょっと」
「けど、あいつ万田先輩がストレート投げること知ってたのか?」
「どうなんだろう。練習で投げてるのは見てないからストレートどころかナックル投げることすら多分知らなかったと思うんだが」
「でも今の打ち方、咄嗟に迎え打ったっていうより狙い打ったって感じがした…ように見えたけど」
「百田にもそう見えたか?ファールになったけど打球はキレイに伸びたもんな。切れたのも差し込まれたっていうよりちょっと逸って前で捉え過ぎたって感じで」
「う、うん。そんな気がしたよ」
輝明に投じた五球目は低すぎてミットに届く前にワンバウンドしてボールとなった。
「これでフルカウント」
「次はどうする?」
ぐぬぬ、小癪な。だかこれで終わりだ!、一年生!
両チーム注目の6球目。万田は三振を奪うつもりで放ったが力が入りすぎたのか、高めに外れて再びボール。ボール4つ目でフォアボールとなり輝明は一塁へと足を進めた。
「ストライーク!」
周囲から何気に注目を集めていた初球。輝明は特に動きを見せることなく見送ったボールはミットに収まった。
「ふっふっふ、やはり手も足も出ないか。いや~やっぱり一年生相手にこんな魔球を使うなんて大人気なかったな~!でもこれも勝負の世界だから恨んでくれるなよルーキー」
「あ~あ、また始まっちゃったよ。まっちの悪い癖が」
「いいですかキャップ。あの人まだ討ち取ったわけでもないのに完全に調子に乗ってるですけど」
「まあ、打たれたショックを引きずるよりはいいんじゃないか?同じ最上級生《三年生》と言う立場として思うところがないわけでは無いが、これも投手が自身のモチベーションを上げる為の一つの要素として目を瞑るさ」
”シュッ” ”パァン”
「ボール!」
”シュッ” ”パァン”
「ボール!ボールツー!」
いささか問題のある投手の態度を見なかったものとしている間に二球目三球目が外れてワンストライク、ツーボールとなった。
「くっ、グラウンドの妖精の仕業か。或いは入学前の新人を哀れんだ神がボールの軌道修正を行なって奴らに有利になるよう加勢しているみたいだな」
「…わけわかんない妄想してないでちゃん現実を受け止めろ。ちょっとというかかなり無駄な力が入り過ぎてるぞ」
「ふ、そうやって後輩を気遣うとはお前は優しいな」
「………」
「…キャプテン、本当に良いんですか?あのまま現実逃避させてて」
「ああやって心の均衡を保ってボールが入らない事の動揺を隠しているんだろう。多分」
((そこまで器用な人には思えないだけど…))
む~、俺様のナックルを打てないからと見逃し戦法とは卑怯な!しかしそれならそれで入れていけばいいだけだ!
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「これで1ー2」
「全然動く気配が見えない。追い込まれるまでは見て行くみたいね。確かに打ち取ってはいるけどここまで結構ボール球も多い」
「ナックルはその性質上投げた本人さえどう変化するわからず、ミットに収まるまでストライクかボールになるかも確定しない。だから狙ってストライク投げるのが一番難しい球とも言えるし、いい作戦かもしれないな。あの人ナックルのコントロールがあんま良くないからな」
(どうせすぐ気付かれるだろうしこれぐらいは言っていいよな?)
「ああ、そう言えば誰かさんもボール球打ち損じで打ち取られたんだもんな」
「…そういう誰かさんも釣り球を打ち上げてアウトになったんだったわね」
「「………っ!」」
「ほらほら、二人とも喧嘩せず応援しよ「カキィ―ン!」えっ?」
喧嘩に気を取られていた三人だったが大きな打球音に反射的にグランドの方を見るとライトのバックネットに打球が飛び審判がファールを宣言していた。
「あ、あいつ今打ったの?あのナックルを?」
「ごめん桃。今、目を離してて見てなかったんだけどあの球をピッチャーの子があそこまで飛ばしたの?」
「えっと、あんまり自信ないけど多分ストレート…だったと思うけど」
「ああ、あれはストレートで間違いないと思うぞ」
「ナックルオンリーじゃなかったの?」
「兄貴に対してのは報復の為だから特別投げたのだとばかり思ってたけど」
「偶に投げるぞ。まあ大抵が…」
「…?」
「なんだったっけ?忘れた」
「ちょっと」
「けど、あいつ万田先輩がストレート投げること知ってたのか?」
「どうなんだろう。練習で投げてるのは見てないからストレートどころかナックル投げることすら多分知らなかったと思うんだが」
「でも今の打ち方、咄嗟に迎え打ったっていうより狙い打ったって感じがした…ように見えたけど」
「百田にもそう見えたか?ファールになったけど打球はキレイに伸びたもんな。切れたのも差し込まれたっていうよりちょっと逸って前で捉え過ぎたって感じで」
「う、うん。そんな気がしたよ」
輝明に投じた五球目は低すぎてミットに届く前にワンバウンドしてボールとなった。
「これでフルカウント」
「次はどうする?」
ぐぬぬ、小癪な。だかこれで終わりだ!、一年生!
両チーム注目の6球目。万田は三振を奪うつもりで放ったが力が入りすぎたのか、高めに外れて再びボール。ボール4つ目でフォアボールとなり輝明は一塁へと足を進めた。
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