52 / 87
第50話 ピッチャー交代
しおりを挟む
//|1|2|3|4|5|6|7|8|9|計
――――――――――――――――――――
上級生|3|0|7| |10|
中学生|0|3|5| |5|
試合状況:3回裏4番隆介のツーランで2得点。点差を5に縮めた。
およそ世界一と言っても過言でないレベルの強烈過ぎるハイタッチの衝撃によって隆介は転倒。同時にとんでもない勢いで手首やら腕やらが吹っ飛ばされたことで左手は勿論のこと左肩にもかつてない衝撃とそれを吸収しきれなかったダメージが襲い掛かって来た。
「痛ってええぇぇーー!!」
(あれ?)
当てられた龍介は悲鳴を、周りのメンバーは呆然とこちらを見つめており自分の予想した反応と大きく違った事で輝明は困惑した。
『何か間違った?』
「何かじゃねーよ!全体的に間違ってんだよ!何処の世界にただのハイタッチであんな全力投球気味に掌叩きつけて来る奴がいるってんだよ!やるならもっと軽くやれ軽く!」
(迷一杯じゃないんだ。腕か肩の力をもっと緩めるべきだったかな…ハイタッチって難しいな。やっぱりピッチング同様全力を出すのはまだ控えた方がよいのだろうか?)
「アッハハハハハハハハハハ!お腹、お腹痛い。赤坂、あんた最高。アハハハハハハハ!」
「涼夏てめえ、何笑ってんだよ」
「だってさあ、あんな”バチィ――ン!!”って。しかもあんたぶっ飛ばされてスっ転んでるし……ぷっ、アッハハハハハハハ!」
「いつまでも馬鹿みたいに笑ってんじゃねーよ!それにお前次のバッターだろうが!いいからとっと切り替えて早く打席行けよ」
「あっちのピッチャー交代で投球練習してたから待ってたのよ。でもそろそろ終わったみたいだから行くわ。いや~笑った笑った。ああ~お腹痛すぎてバッティングに影響出たらどうしよう。今もまだあんたのすっこんだ場面が脳裏に焼き付いてて…ぷっ」
「いつまでもくだらないこと言ってないでとっとと行け!」
「はいは~い」
さ~て、失投だったとは言えあの愚弟がホームラン打つとはね。ここは私も一発大きいのを狙って…と言いたいとこだけどまだ四点差でランナー無し。それに…
涼夏は打席の足場を確認しながらマウンドの方をちっと見た。
失点による投手交代。ここで私が打てるかどうかで追い上げムード継続できるかどうか。流れが変わる一つの分岐点。ここは一発狙うよりも出塁優先で変わったばかりのピッチャーの出鼻を挫く!
身長は170㎝そこそこ。一応剣崎先輩がエースである事を考えると急速は110~120㎞くらいかしら?さて、一体どんな球を投げるのかしら?
”シュッ”
「なっ!」
遅っそ!軌道は少し山なり。チェンジアップ?初球から?隆介がホームラン打った後だから負けじと私も大きいの狙って来るだろうと思って狙いを外しにきたの?確かにこの試合は負けたら終わりの公式戦じゃないから普段ならそうしてただろうけど、残念。私にとっては今日は公式戦だからチームプレイ優先!状態を残して踏みとどまれてるから大丈夫。ここまま振り抜けば…
バットを振り出した時点でジャストミート出来ると確信していた涼夏。しかし彼女の予想に反してピッチャーの放った球は降下線を辿りながらも更にシンカー気味に沈んだ。
「曲がっ!…」
”キーン”
バットの先端に当たっただけの打球はショートへと転がり難なくアウトとなった。
(そうだった…秋大にいなかったら忘れてた。三年生の特殊ピッチャー、万田先輩)
「何今の球?歪んだっていうかなんか変な曲がり方してたように見えたんだけど。カーブ系?かなんか?」
「気を付けて下さい。あの人ナックル使いです」
「えっ、ナックル?マジか~。私見た事ないんだけど」
「私も見たのは初めてでしたけど普通にやっかいですね」
話し聞いてた通りユラユラ揺れて曲がったわな。あれがナックル。フルタイムの方だとしたらランナー出さない事には攻略は難しいかも。
あまり遅くてつい初球から手を出しちゃった。球種確かめる目的も含めてもっと見ていくべきだったかな。
涼夏悔しそうに表情を歪めながらベンチに戻るとが心底嬉しそうな表情でニタニタしながらこちらを見て来た。
「あれ~可笑しいなぁ、尻拭いしてやるって息巻いてた割に凡退してるのはどうしてかな~」
「ふん、その必要性がなくなったから力が抜けちゃったのよ。まあ、それ以上に打席に入る光景があまりに可笑し過ぎて力が抜け過ぎちゃったのが原因かもね」
「「……っ」」
2人とも互いの言葉にイラつきながら無言で額に青筋を浮かべて睨み合ってた。
「そう言えばお前知ってたのか?こいつがメモとペンをポケットに入れていたの」
「そういえばさっき取り出してたわね。ああ~そう言えばそんな事言われていたような言われていなかったような」
「じゃあ俺に言っとけよ。こいつとの会話スゲ~大変で…」
「その大変ながらも相手の気持ちを理解しようと歩み寄る事が大切だって身をもって伝えかったんじゃない?あんた最初早々に諦めてたし」
まあ、赤坂とのやり取りが大変なのは確かだけど。
「誰だよ?こいつに指示してたのは」
龍介の疑問に対して輝明が真っ直ぐ相手ベンチにいる自由の方向を指し示した。
「兄貴かよ…くそっ!」
そうこうしているうちに田辺がファーストゴロとなりアウト3つ目でチャンジとなった。
「さあ、さっさと守備に就きましょうか。今度こそヒヨらないでね」
「そうだな。誰かさんの凡退した流れを引きずらないようにしないとな」
「凡退した私にも効くからその言い方は遠慮願いたいな」
面々はだべりながらグラウンドへと向かって行く。先程よりも少し緊張感が欠けているようにも感じられるが、劣勢の少し重苦しい空気でほぼ無言に近かった中で無駄話を行える余裕が出てきた事がチームとしては良い方向に変化しているなと反対側のベンチから自由は楽しそうに見つめつつ、自身の出番を今か今かと待ち遠しく感じたいた。
――――――――――――――――――――
上級生|3|0|7| |10|
中学生|0|3|5| |5|
試合状況:3回裏4番隆介のツーランで2得点。点差を5に縮めた。
およそ世界一と言っても過言でないレベルの強烈過ぎるハイタッチの衝撃によって隆介は転倒。同時にとんでもない勢いで手首やら腕やらが吹っ飛ばされたことで左手は勿論のこと左肩にもかつてない衝撃とそれを吸収しきれなかったダメージが襲い掛かって来た。
「痛ってええぇぇーー!!」
(あれ?)
当てられた龍介は悲鳴を、周りのメンバーは呆然とこちらを見つめており自分の予想した反応と大きく違った事で輝明は困惑した。
『何か間違った?』
「何かじゃねーよ!全体的に間違ってんだよ!何処の世界にただのハイタッチであんな全力投球気味に掌叩きつけて来る奴がいるってんだよ!やるならもっと軽くやれ軽く!」
(迷一杯じゃないんだ。腕か肩の力をもっと緩めるべきだったかな…ハイタッチって難しいな。やっぱりピッチング同様全力を出すのはまだ控えた方がよいのだろうか?)
「アッハハハハハハハハハハ!お腹、お腹痛い。赤坂、あんた最高。アハハハハハハハ!」
「涼夏てめえ、何笑ってんだよ」
「だってさあ、あんな”バチィ――ン!!”って。しかもあんたぶっ飛ばされてスっ転んでるし……ぷっ、アッハハハハハハハ!」
「いつまでも馬鹿みたいに笑ってんじゃねーよ!それにお前次のバッターだろうが!いいからとっと切り替えて早く打席行けよ」
「あっちのピッチャー交代で投球練習してたから待ってたのよ。でもそろそろ終わったみたいだから行くわ。いや~笑った笑った。ああ~お腹痛すぎてバッティングに影響出たらどうしよう。今もまだあんたのすっこんだ場面が脳裏に焼き付いてて…ぷっ」
「いつまでもくだらないこと言ってないでとっとと行け!」
「はいは~い」
さ~て、失投だったとは言えあの愚弟がホームラン打つとはね。ここは私も一発大きいのを狙って…と言いたいとこだけどまだ四点差でランナー無し。それに…
涼夏は打席の足場を確認しながらマウンドの方をちっと見た。
失点による投手交代。ここで私が打てるかどうかで追い上げムード継続できるかどうか。流れが変わる一つの分岐点。ここは一発狙うよりも出塁優先で変わったばかりのピッチャーの出鼻を挫く!
身長は170㎝そこそこ。一応剣崎先輩がエースである事を考えると急速は110~120㎞くらいかしら?さて、一体どんな球を投げるのかしら?
”シュッ”
「なっ!」
遅っそ!軌道は少し山なり。チェンジアップ?初球から?隆介がホームラン打った後だから負けじと私も大きいの狙って来るだろうと思って狙いを外しにきたの?確かにこの試合は負けたら終わりの公式戦じゃないから普段ならそうしてただろうけど、残念。私にとっては今日は公式戦だからチームプレイ優先!状態を残して踏みとどまれてるから大丈夫。ここまま振り抜けば…
バットを振り出した時点でジャストミート出来ると確信していた涼夏。しかし彼女の予想に反してピッチャーの放った球は降下線を辿りながらも更にシンカー気味に沈んだ。
「曲がっ!…」
”キーン”
バットの先端に当たっただけの打球はショートへと転がり難なくアウトとなった。
(そうだった…秋大にいなかったら忘れてた。三年生の特殊ピッチャー、万田先輩)
「何今の球?歪んだっていうかなんか変な曲がり方してたように見えたんだけど。カーブ系?かなんか?」
「気を付けて下さい。あの人ナックル使いです」
「えっ、ナックル?マジか~。私見た事ないんだけど」
「私も見たのは初めてでしたけど普通にやっかいですね」
話し聞いてた通りユラユラ揺れて曲がったわな。あれがナックル。フルタイムの方だとしたらランナー出さない事には攻略は難しいかも。
あまり遅くてつい初球から手を出しちゃった。球種確かめる目的も含めてもっと見ていくべきだったかな。
涼夏悔しそうに表情を歪めながらベンチに戻るとが心底嬉しそうな表情でニタニタしながらこちらを見て来た。
「あれ~可笑しいなぁ、尻拭いしてやるって息巻いてた割に凡退してるのはどうしてかな~」
「ふん、その必要性がなくなったから力が抜けちゃったのよ。まあ、それ以上に打席に入る光景があまりに可笑し過ぎて力が抜け過ぎちゃったのが原因かもね」
「「……っ」」
2人とも互いの言葉にイラつきながら無言で額に青筋を浮かべて睨み合ってた。
「そう言えばお前知ってたのか?こいつがメモとペンをポケットに入れていたの」
「そういえばさっき取り出してたわね。ああ~そう言えばそんな事言われていたような言われていなかったような」
「じゃあ俺に言っとけよ。こいつとの会話スゲ~大変で…」
「その大変ながらも相手の気持ちを理解しようと歩み寄る事が大切だって身をもって伝えかったんじゃない?あんた最初早々に諦めてたし」
まあ、赤坂とのやり取りが大変なのは確かだけど。
「誰だよ?こいつに指示してたのは」
龍介の疑問に対して輝明が真っ直ぐ相手ベンチにいる自由の方向を指し示した。
「兄貴かよ…くそっ!」
そうこうしているうちに田辺がファーストゴロとなりアウト3つ目でチャンジとなった。
「さあ、さっさと守備に就きましょうか。今度こそヒヨらないでね」
「そうだな。誰かさんの凡退した流れを引きずらないようにしないとな」
「凡退した私にも効くからその言い方は遠慮願いたいな」
面々はだべりながらグラウンドへと向かって行く。先程よりも少し緊張感が欠けているようにも感じられるが、劣勢の少し重苦しい空気でほぼ無言に近かった中で無駄話を行える余裕が出てきた事がチームとしては良い方向に変化しているなと反対側のベンチから自由は楽しそうに見つめつつ、自身の出番を今か今かと待ち遠しく感じたいた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
不撓導舟の独善
縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。
現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。
その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。
放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。
学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。
『なろう』にも掲載。
三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる