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第39話 理解
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「ボール!フォアボール!」
やべえ、ストライクをボールにされ続けたことでピッチングのリズムが崩れたか?
「タイム」
再開後再々に二度目のファーボールとなり龍助は慌ててマウンドに向かった。
「おいおい大丈夫かよ?多分今の全部ボール球だったように見えたぞ。流石に厳し過ぎたんじゃねーか?下手すると潰しかねないぞ」
「………いや、多分大丈夫です」
「ならいいけど」
「寧ろ心配なのは…」
そう言って少し心配そうに見つめる自由の視線の先にはマウンドに向かったものの、どう声を掛ければいいか迷っている様子の龍介がいた。
「ああ~、大丈夫か?」
”コク”
「そっか…まあ、審判がアレだとコーナー狙っても仕方ねーから多少甘くなってもストライク入れにこい」
”コク”
俺のリードが偏っていたせいもあるが初回に連打喰らって得点されたし、真っすぐだけのコイツの生命線ともいえるコントロールの精度が落ちて甘く入るとまた滅多打ち喰らうかもしれねー。けどストライクがはいらないんじゃ話にならね。正直怖えーけどリスク覚悟で投げさせるしかねーよな。ん?
龍介がこれからの展開に不安視していると輝明は何かジェスチャーの様なもので何かを伝えようとしてくるが龍介はそれが何かわからなかった。
駄目だ…何か訴えようとしてくれてんのは分かるけど肝心の中身がこれっぽっちも理解できねーぞ。
「えっと……ああ~、もうこの際多少甘く入っても仕方ねーからしっかり腕振って投げろよ」
”コク”
何だったんだアレ?けどまあ表情変わってねー辺りあんま動揺はしてない…のか?ダメだわかんねー。けど受けてりゃそのうち分かんだろう。もしこれで滅多打ち喰らうようなら悪いけど愚妹に強制的に変わってもら…
『だけど今度あいつと話す時にはもうちょっと返事待ったり、理解する努力しなさいよ。一応女房役なんだから』
………
輝明のジェスチャーを理解できないため早々に諦めてマウンドから守備位置に戻ろうとしたが涼夏の言葉を思い出いして再びマウンドへと駆け寄った。
「なあ、さっき手でやってたやつもう一度やってくれないか?」
龍介の発言に輝明は少しだけ驚いた表情をしたが直ぐに先程と同じジェスチャーを繰り返した。
四角にボール、一本指と手を仰ぐ………ダメだ。やっぱりわかんねーや。
龍介が輝明の伝えたい意図が読み取れず頭を悩ませていると輝明はホームの方へに行きベースを指差した。
ベース…四角、ゾーン?ああ、ゾーンか。それでボールと一本指と手を仰ぐ…仮に一本指がストレートなら…ダメだ、最後のやつがわからん。繋がりそうなんだけど、う~ん)
再び頭を悩ませていると先程違い仰いでいる右手を左手で指差していた。
えっと…多分何かに注目してほしいんだよこれ?右手?指?…手を振る…内側に…内側?寄せる?あっ!そうか
「『ゾーン』に『ボール』を『ストレート』で『内に入れていく』だろ!」
解いたらそんな事かって思わなくもないけどなんだか全く喋らねーこいつの伝えたいことをようやく理解できた達成感的なもんが感じられてなんか………ってあれ?)
感動に浸りながら輝明の方を見ると申し訳なさそうな感じを含んだ微妙な表情でこちらを見つめていた。
「…もしかして違ったか?」
そう聞くと輝明は少し困った感じで頬をかいてからOKマーク3つ、×一つのジェスチャーを行った。
えっと…OKマークが正解とするなら◯、◯、×、◯。これがさっきの俺の言っている事を指しているなら…
『ゾーン』に『ボール』を『ストレート』で『内に入れていく』
これの3つ目。つまりストレートが間違いってことか?けどそれって…
「変化球を入れるって事か?」
”ブンブン”
やっぱ違うか。ならあの指一本ってなんだ?ん?赤坂の手にボールと一本指…
「ボールと1………あっ!ボール一個分?」
”コクコク”
「ってことは『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』だろ!」
”コクコク”
よっしゃー!ようやく、ようーやく通じ合えた!たった一言だけど確かに通じたぞ!………あれ?
「てことはボール一個分の出し入れって可能なのか?」
”コク”
「さっきみたいに四隅に投げてたのを一個内側に投げれるってことか?」
「………マジか」
普通だったらありえねんだけど。でもこいつあのサイン出した後からピッタリ四隅投げ分けてたもんな。もしかすると…
『受けてればわかる筈よ。サインの意味も、あいつがどんな投手なのかもね』
「分かった、それでいこう」
ホームに戻ろうとしたとき背後から輝明に服を掴まれた。
「っと、どうかしたか?」
先程と同じジェスチャーを行った。
『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。さっきと同じだな。ん?なんか続くぞ。人差し指を交互に振ってる。
「えっと…左右?」
”コク”
「『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『左右に』か?」
”コクコク”
あれ?まだ続くみたいだな。ホームを指してるな。ホームベースか?いや、方向的にはその上…審判か?そして腕をクロス、×か?ってまだ続くのか。でもこれ最初のやつ一緒だぞ。あれ?でも最後だけ違う。さっきは左右だったのに最後上下に指振ったぞ?
「ええっと…『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『左右に』。それで『審判』が『ダメ』。『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『上下』あっ!左右がダメだったら上下に一個入れていこうって事か!?」
”コクコク”
成程、つまり上下左右でどこまでがストライクゾーンなのか探っていこうって事か。まあそんな芸当こいつが確信持ってるっぽい異常なレベルのコントロールあっての技だけど………
『あいつがどんな投手なのかもね』
「分かった。なら俺もお前信じてサイン出すからキッチリ投げ込んで来てくれ」
(お前を信じて…)
”…コク”
あれ?今ほんの僅かだけど頬を緩ませて笑ってた様な…気のせいか?
まだまだ輝明との間に言葉やら色々と距離があるのを感じつつも確実バッテリーとして一歩近づけたと無意識ながら実感し、それに龍介も少しだけ笑いながらホームへと戻るのだった。
やべえ、ストライクをボールにされ続けたことでピッチングのリズムが崩れたか?
「タイム」
再開後再々に二度目のファーボールとなり龍助は慌ててマウンドに向かった。
「おいおい大丈夫かよ?多分今の全部ボール球だったように見えたぞ。流石に厳し過ぎたんじゃねーか?下手すると潰しかねないぞ」
「………いや、多分大丈夫です」
「ならいいけど」
「寧ろ心配なのは…」
そう言って少し心配そうに見つめる自由の視線の先にはマウンドに向かったものの、どう声を掛ければいいか迷っている様子の龍介がいた。
「ああ~、大丈夫か?」
”コク”
「そっか…まあ、審判がアレだとコーナー狙っても仕方ねーから多少甘くなってもストライク入れにこい」
”コク”
俺のリードが偏っていたせいもあるが初回に連打喰らって得点されたし、真っすぐだけのコイツの生命線ともいえるコントロールの精度が落ちて甘く入るとまた滅多打ち喰らうかもしれねー。けどストライクがはいらないんじゃ話にならね。正直怖えーけどリスク覚悟で投げさせるしかねーよな。ん?
龍介がこれからの展開に不安視していると輝明は何かジェスチャーの様なもので何かを伝えようとしてくるが龍介はそれが何かわからなかった。
駄目だ…何か訴えようとしてくれてんのは分かるけど肝心の中身がこれっぽっちも理解できねーぞ。
「えっと……ああ~、もうこの際多少甘く入っても仕方ねーからしっかり腕振って投げろよ」
”コク”
何だったんだアレ?けどまあ表情変わってねー辺りあんま動揺はしてない…のか?ダメだわかんねー。けど受けてりゃそのうち分かんだろう。もしこれで滅多打ち喰らうようなら悪いけど愚妹に強制的に変わってもら…
『だけど今度あいつと話す時にはもうちょっと返事待ったり、理解する努力しなさいよ。一応女房役なんだから』
………
輝明のジェスチャーを理解できないため早々に諦めてマウンドから守備位置に戻ろうとしたが涼夏の言葉を思い出いして再びマウンドへと駆け寄った。
「なあ、さっき手でやってたやつもう一度やってくれないか?」
龍介の発言に輝明は少しだけ驚いた表情をしたが直ぐに先程と同じジェスチャーを繰り返した。
四角にボール、一本指と手を仰ぐ………ダメだ。やっぱりわかんねーや。
龍介が輝明の伝えたい意図が読み取れず頭を悩ませていると輝明はホームの方へに行きベースを指差した。
ベース…四角、ゾーン?ああ、ゾーンか。それでボールと一本指と手を仰ぐ…仮に一本指がストレートなら…ダメだ、最後のやつがわからん。繋がりそうなんだけど、う~ん)
再び頭を悩ませていると先程違い仰いでいる右手を左手で指差していた。
えっと…多分何かに注目してほしいんだよこれ?右手?指?…手を振る…内側に…内側?寄せる?あっ!そうか
「『ゾーン』に『ボール』を『ストレート』で『内に入れていく』だろ!」
解いたらそんな事かって思わなくもないけどなんだか全く喋らねーこいつの伝えたいことをようやく理解できた達成感的なもんが感じられてなんか………ってあれ?)
感動に浸りながら輝明の方を見ると申し訳なさそうな感じを含んだ微妙な表情でこちらを見つめていた。
「…もしかして違ったか?」
そう聞くと輝明は少し困った感じで頬をかいてからOKマーク3つ、×一つのジェスチャーを行った。
えっと…OKマークが正解とするなら◯、◯、×、◯。これがさっきの俺の言っている事を指しているなら…
『ゾーン』に『ボール』を『ストレート』で『内に入れていく』
これの3つ目。つまりストレートが間違いってことか?けどそれって…
「変化球を入れるって事か?」
”ブンブン”
やっぱ違うか。ならあの指一本ってなんだ?ん?赤坂の手にボールと一本指…
「ボールと1………あっ!ボール一個分?」
”コクコク”
「ってことは『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』だろ!」
”コクコク”
よっしゃー!ようやく、ようーやく通じ合えた!たった一言だけど確かに通じたぞ!………あれ?
「てことはボール一個分の出し入れって可能なのか?」
”コク”
「さっきみたいに四隅に投げてたのを一個内側に投げれるってことか?」
「………マジか」
普通だったらありえねんだけど。でもこいつあのサイン出した後からピッタリ四隅投げ分けてたもんな。もしかすると…
『受けてればわかる筈よ。サインの意味も、あいつがどんな投手なのかもね』
「分かった、それでいこう」
ホームに戻ろうとしたとき背後から輝明に服を掴まれた。
「っと、どうかしたか?」
先程と同じジェスチャーを行った。
『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。さっきと同じだな。ん?なんか続くぞ。人差し指を交互に振ってる。
「えっと…左右?」
”コク”
「『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『左右に』か?」
”コクコク”
あれ?まだ続くみたいだな。ホームを指してるな。ホームベースか?いや、方向的にはその上…審判か?そして腕をクロス、×か?ってまだ続くのか。でもこれ最初のやつ一緒だぞ。あれ?でも最後だけ違う。さっきは左右だったのに最後上下に指振ったぞ?
「ええっと…『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『左右に』。それで『審判』が『ダメ』。『ゾーン』に『ボール』を『一個』を『内に入れていく』。『上下』あっ!左右がダメだったら上下に一個入れていこうって事か!?」
”コクコク”
成程、つまり上下左右でどこまでがストライクゾーンなのか探っていこうって事か。まあそんな芸当こいつが確信持ってるっぽい異常なレベルのコントロールあっての技だけど………
『あいつがどんな投手なのかもね』
「分かった。なら俺もお前信じてサイン出すからキッチリ投げ込んで来てくれ」
(お前を信じて…)
”…コク”
あれ?今ほんの僅かだけど頬を緩ませて笑ってた様な…気のせいか?
まだまだ輝明との間に言葉やら色々と距離があるのを感じつつも確実バッテリーとして一歩近づけたと無意識ながら実感し、それに龍介も少しだけ笑いながらホームへと戻るのだった。
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