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第15話 呪い(?)と洗脳

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馬鹿のやらかしのせいで熱中し過ぎて結局新人くん触らせずに終わっちまったんだけど。どうする?もうワンプレイいくか?」

「いや、そろそろ俺らは夕食準備の時間じゃねーの?」

「やっべ、忘れた。すまん赤坂、また今度な」

 部員達が慌てて出て行く中で照明はグローブと二つのバックを持って部屋を後にしようとし、それに気付いた由自と部員数名はその後を尾行した。輝明はバックを持ったまま少し開けた中庭へと進みバックを下ろした。

「何するんだろう?あ、バックから何か取り
 出した」

「あれは、角材かな?………釘付きの」

「何すかねアレ!?どんな面白い事するんですかね!?」

「あれ目にしての第一声と思いつく発想が面白い事ってお前の頭はどうなってんだよ」

「え?え?何すんの?何すんのあの子?もしかして丑の刻参りみたいなホラーチックな事を行おうとしてんの!?」

「丑の刻参りって何?」
「ああ~まあ、呪い的な類の事って認識でOKだ」

「え?の、呪い!?」

「それはそれで発想が飛躍し過ぎだろう」
「じゃあアレなに!男子高校生が釘が結構なとび出てる角材をばれないようにバックに入れてて、ひっそりと人知れず夜中に取り出そうとして何かを行うとする理由って他に何があんのさ!」

「う~ん、そう言われてしまうと…なんだろう?本当にそんなような気がしてきちゃったんだけど」

「そんな事はあり得ません」

「そんな事あるって!だって『夜中』に『一人』で『ひっそり』と『人知れない場所』で釘貫通角材なんて『物騒な物』で何かを行おうとしてんだよ!?これだけ危ないワードが揃う事ってそうそうないでしょう!?これはきっとあれだ!呪いの儀式かなんかなんだよきっと!」

「いや、そもそもこの場所人知れない場所って言えるほど場所じゃないだろう。一応寮内なんだし、そもそも見ようと思えば部屋のベランダから見え…」

「そんな事はあり得ません。絶対にあり得ません」

「前沢!お前あの光景見てまだそんな事…」

 振り返って自由の方を見ると言葉を失った。なにせ今まで見た事ないくらい真顔で目には生気が抜けているような過去に類を見ない彼の状態に嫌でも気を奪われた。

「あり得ない、あり得ない、絶対にあり得ない。そもそもあってはならないそんな事態」

「ま、前沢?」

「ようやく入って来てくれた楽しみだった後輩が、これから長いことバッテリーを組んでいくであろう相方がそんなオカルト好きなわけがない。恐怖の塊みたいな子なわけない。違う、違う!絶対に、絶対に!」

 目の前の受け止めきれない恐怖から逃げる為にまるで自分に暗示をかけるようにブツブツと言い続け、頭を抱えてうずくまった自由。

「ああ~そういえばこいつ怖いの苦手だったっけ。こんななりしてるくせに」

「大抵なんでも平気そうな性格してるのに怖いのはダメって…」

「まあ誰にでも弱点というか苦手なものはあるからね」

「弱点という言い方をしてしまうとコイツの場合野球もそれ以外も腐るほどあるからな」

「その野球も投手はド下手糞だしね。って、ん?」

 近づく一つの影がそこにはあった。

「ま~え~さ~わ~く~ん」

「ヒィ―!!」

 軽く肩に手を置いただけだがまるで心臓が止まりかけたと言わんばかりの驚いた表情をする自由。そしてその過剰に怯えた反応に中田はニヤリと笑う

「び、びっくりさせないでください先輩!」

「悪い悪い。ところで前沢君よぉ、あの新人君は一体何をしようとしてるんだろうな~?俺には中々口に出すのがはばかれるような事をやろうとしている様に見えるんだが」

「そ、そんな事ありませんよ!」

「でもよ~あの釘付き角材は何に使うんだろうな~?しかも薄暗いこんな時間帯に」

「あ、あれはきっとダウジングマシーンとかなんですよ!新しい宿舎に来たからお宝とか未知の発見が眠ってないかどうか探ろうとしてるんですよ!」

(よくそんな発想に至ったよな)

(あれがダウジングって無理があるだろう)

(よっぽど呪いの類のやつと関連付けたくないんだな…まあ、冷静に考えて俺らも思いたくないけど)

「俺には誰かを呪おうとしている様にみえるんだけどな~」

「そ、そんなはずないですよ!それは先輩の思い込みで…」

「な~、新人君は誰を呪おうとしてるんだろうな~」

「いや、そもそも誰かを呪おうとなんて事は絶対違…」

「もしかしてお前を呪おうとしんじゃね?」

「は、はああぁ!?な、な、な、な、何で俺なんですか!?」

「おいおい、覚えがないってのか?あれだけの事をやっておきながら」

「へ?」

「その場に居合わせてなかったから詳しくは知らねーけど最低限の説明もせずに拉致当然に掻っ攫って校庭に連行」

「それは誤解だって…」

「練習直前になってから顔面切迫してお願いという名の脅迫」

「お、俺は普通に頼んだだけで…」

「張り切り過ぎの空回りでいつも以上の乱調で皮だけ被った野球という名のよくわからない何かが繰り広げられる場に拘束されてその現場を延々と見せつけられた」

「た、楽しかった可能性も…」

「しかも投手をやってもらった後はずっと新人君にその役目を押し付けた続けた上に一度もバットを振る役をやらせなかったよな」

「!!」

「野球ってさあ、人にもよるけど基本的に球を打てる打者がやってて一番面白いよな?なのにその役目が回ってこないってどんな気持ちなんだろうな~?」

「………」

 無言のままブルブルと震えだすその後ろ姿を目にしてに手応えを感じニヤリと笑う。

「ずっと打たれるばかりの役をさせられてどういう気持ちだったんだろうな~?そしてそれに気付きもしなかったキャッチャーのことをどう思ってるんだろうな~?」

「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」

(よ~し、よし。いい感じに追い込めてるぞ。頃合いだな)

「おいおい、一番重大な失態を忘れてるわけじゃないよね?」

「な、なな、なんのこ、ここ、事ですか?」

「あれだよ~お前が新人君にボールをぶつけた件さ」

「!お、俺、そんな事した覚えは!?」

「都合よ~く忘れてるだけさ~。楽しくなってきて調子に乗って返球を全力で投げてしまい彼の頭部に直撃。幸いなんともなかったけどお前はショックで少しの間気を失っていたんだ」

「う、嘘ですよね?嘘なんですよね!?」

「お前は恐怖から都合よくその部分だけを忘れててさ~。覚えてないもんは仕方ないと思い追及はしなかったけど

「そんな、そんな事が…」

「状況的に口に出来なかったけどあの様子だとやっぱり恨んでたんだろうな~。なかり痛がってたもんな~」

(森村の奴にはやられたけど元をただせば受けた被害《死球》は全部こいつからだからな~。せめてこいつにだけは仕返しさせて鬱憤を晴らさせてもらうぜ)

「恐怖のあまり思考が鈍って簡単に騙されてるな。詐欺というか洗脳の類を見せつけられている気分だ。今日は俺らも散々やられたからあえて助けねーけど」

「だったらあっちの洗脳されてる奴は助けてやろうか」

「え?」

「ほら、もう一人詐欺に引っかかってる哀れな後輩が」

「そ、そんな。まさかそんなに恨んでいたなんで。もしかして前沢を亡き者にした後は俺も呪われるのか!?」

「………」

「いや~新人君はどんな感じで呪いを行うんだろうな」

「あ、ああ、ああ――!!」

「へぶっし!」

 屈みこんでいた自由にの耳元に囁くように話していた中田だったが、由自の恐怖心が限界に達してしまいいきなり立ち上がった。その結果中田は顎に頭突きされる感じで頭部が当たってしまい痛みのあまりその場に転げ回った。
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