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第13話 学生寮へようこそ
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輝明が自由の表情に気を取られていると自由の背後から一人の野球部員が彼を遮るように前に出た。
「俺は中田ってんだ。覚えといてくれよ」
「ああ、ズリィぞ!俺は森村。この中で一番覚えておくべき先輩の名だぞ!」
「何言ってやがんだ凡打製造機が。この俺、法川様だけは覚えといてくれよルーキー!」
(こんなに一遍に人から詰め寄られるのなんて初めてだ。えっと、中田…先輩。森村、先輩。小里先輩…)
「そして俺は…」
自由が名乗ったのを機に野球部員が次々と名乗りだした。すると一人の部員が輝明の前に出て制止した。
「はいはい、人数多いんだしそれぐらいにしてやれ。ただでさえ今日は濃過ぎる一日でさぞ大変だったんだからそういうのはまた今度だ」
(今迫られていた状態がある意味今日一番大変だった気がする。助かった)
「ああ、そうそう。俺はに西野ってんだ。気軽にニッシー先輩と呼んでくれていいからな!」
「ああぁー!なに後輩君の為だとか言っときながら一人堂々と抜け駆けしてやがんだてめぇー!」
「しかもあだ名呼びしていいとかちゃっかりアピールしてやがる!普段誰もそんな呼び方してないだろうが!」
軽い取っ組み合いの様な状態にはなっていたがなんだかんだ楽しそうで、それもまた輝明の目には印象的に映った。
(今までには見た事の無かった光景。もしかしたら今まで近くでもこういったやり取りは行われていたのだろうか?僕が見えていなかっただけで)
「はいはい、おふざけはこのくらいにするぞ。そろそろ本格的に暗くなるしこの子を家に送り届けないと」
「そうだなあ。ここまで付き合わせたんだしそれくらいはしてやらねえとな」
「ふっふふ、だったら相棒というベストパートナーのこの俺が…」
「「「それだけは駄目だ」」」
堂々と名乗りを挙げた自由だがすぐさま輝明を除くその場の全員から却下されてしまった。
「ガッデ――ム!何故!!」
「確かに本来なら拉致って来た張本人であるお前が責任をもって送り届けるべきだと思う」
「だったら…」
「だがな、そもそもお前が普通に問題無く送り届ける気がしないんだよ。方向音痴とかそういうもんだいじゃなく普通に道中で何かやらかしそうでな」
「「「うんうん」」」
「皆酷い!」
「それで赤坂君の家ってどっち方角かな?」
(家。前まではこの道を真っすぐ進んで行くけれど今日からは…)
尋ねられた輝明は学生寮の方へ指差した。
「えっと…寮の向こう側ってことかな?」
その問いに対して首を横に振ると寮の方へと入って行き部員達も彼の後を追った。そして寮に入ると輝明は自分のネームシールが貼られてある靴箱を指差した。
「ああ――!!靴箱に後輩君の名前が!」
「そういえば今日から一人早めに中学生が入寮するって先生が言ってたな」
「もしかしてその入寮入寮生?」
”コク”
「は~、すげ~偶然…」
「よっしゃー!新入部員ゲットー!」
「…おい、まだこの子入部するとは言ってな…」
「するよね!するよね!」
(この目の前に迫られる感じ…やっぱり慣れない。嬉しいような怖いような。変な感じ)
「笑顔とはいえ190㎝超えのあのガタイで160㎝もなさそうなあの子にあれだけ迫っている姿見ると脅迫にしか見えねーな」
「遠くから見たら襲われているよう誤解されそうだな」
「街中でお巡りさんが見かけたら職質受けるだろうな」
”………コク”
「なんか返事するまで嫌な間があったな」
「ああ。正直、モノ言わせぬような圧力で頭を振らせたようにしか見えないな。けど…」
(新入部員ゲットにつながったし、まぁいいか)
「よかったな、2年になる前に新入部員を確保出来て。それも念願だったピチャーだしな」
「まあ、誰かさんとは真逆のタイプのピチャーだけどな」
「三淵先輩か?確かにあの先輩とはある意味対極かもしれないな」
「ちげーよ、お前の事を指して言ってるんだよ」
「え?ストレート主体だから寧ろ似てない?」
「あのコントロールでよくそのセリフが吐けたな。今日は特に酷かったし」
「ふ、そういう日もピッチャーにはあるのだよ」
「いや、俺らはそういう日以外をほとんど見たことないんだけど」
「俺へのフォローは⁉︎」
「そんな事より前沢くんよ、学年の変更と共に使用する靴箱の位置も変更になる故自分のシールは剥がして別の所を使用するようにと少し前に食堂で伝えられているにも拘わらず剥がしてない上に現在進行形で使い続けているのはどういうこねチミ」
「………」
「とりあえず今日はもう風呂を済ませようぜ」
「そう言えば赤坂君部屋何番だった」
”1” ”0” ”1”
輝明は指で番号を伝えた。そしてそれを確認した瞬間他の野球部員らの顔が引きつった。
「げっ、101ってことは…」
「ああ、あの馬鹿と同じ…」
「おお!俺と相部屋だな!やっぱりピッチャーとキャッチャーは常に一心同体ということだな」
(そう、なのだろうか?)
「赤坂君、悪いこと言わないから今すぐでも部屋を変えた方がいい。今なら多分先生にも文句言われないから」
「ちょ、ちょっと!何でせっかく出来た黄金部屋を崩そうとしてるんですか!?」
(…黄金部屋)
「そんなもんお前と同じ部屋だと悪影響だからに決まってんだろうが!」
「今だって普通に規則守れてないしな」
「ああ、きっと馬鹿が移りそうだからな」
「嫌だぁ~!俺からこの子を奪わないでぇ――!!」
(く、苦しい)
その後輝明は自由にがっちりホールドされた状態で口論になった自由が散々ごねて結局部屋の場所はそのままとなった。
「俺は中田ってんだ。覚えといてくれよ」
「ああ、ズリィぞ!俺は森村。この中で一番覚えておくべき先輩の名だぞ!」
「何言ってやがんだ凡打製造機が。この俺、法川様だけは覚えといてくれよルーキー!」
(こんなに一遍に人から詰め寄られるのなんて初めてだ。えっと、中田…先輩。森村、先輩。小里先輩…)
「そして俺は…」
自由が名乗ったのを機に野球部員が次々と名乗りだした。すると一人の部員が輝明の前に出て制止した。
「はいはい、人数多いんだしそれぐらいにしてやれ。ただでさえ今日は濃過ぎる一日でさぞ大変だったんだからそういうのはまた今度だ」
(今迫られていた状態がある意味今日一番大変だった気がする。助かった)
「ああ、そうそう。俺はに西野ってんだ。気軽にニッシー先輩と呼んでくれていいからな!」
「ああぁー!なに後輩君の為だとか言っときながら一人堂々と抜け駆けしてやがんだてめぇー!」
「しかもあだ名呼びしていいとかちゃっかりアピールしてやがる!普段誰もそんな呼び方してないだろうが!」
軽い取っ組み合いの様な状態にはなっていたがなんだかんだ楽しそうで、それもまた輝明の目には印象的に映った。
(今までには見た事の無かった光景。もしかしたら今まで近くでもこういったやり取りは行われていたのだろうか?僕が見えていなかっただけで)
「はいはい、おふざけはこのくらいにするぞ。そろそろ本格的に暗くなるしこの子を家に送り届けないと」
「そうだなあ。ここまで付き合わせたんだしそれくらいはしてやらねえとな」
「ふっふふ、だったら相棒というベストパートナーのこの俺が…」
「「「それだけは駄目だ」」」
堂々と名乗りを挙げた自由だがすぐさま輝明を除くその場の全員から却下されてしまった。
「ガッデ――ム!何故!!」
「確かに本来なら拉致って来た張本人であるお前が責任をもって送り届けるべきだと思う」
「だったら…」
「だがな、そもそもお前が普通に問題無く送り届ける気がしないんだよ。方向音痴とかそういうもんだいじゃなく普通に道中で何かやらかしそうでな」
「「「うんうん」」」
「皆酷い!」
「それで赤坂君の家ってどっち方角かな?」
(家。前まではこの道を真っすぐ進んで行くけれど今日からは…)
尋ねられた輝明は学生寮の方へ指差した。
「えっと…寮の向こう側ってことかな?」
その問いに対して首を横に振ると寮の方へと入って行き部員達も彼の後を追った。そして寮に入ると輝明は自分のネームシールが貼られてある靴箱を指差した。
「ああ――!!靴箱に後輩君の名前が!」
「そういえば今日から一人早めに中学生が入寮するって先生が言ってたな」
「もしかしてその入寮入寮生?」
”コク”
「は~、すげ~偶然…」
「よっしゃー!新入部員ゲットー!」
「…おい、まだこの子入部するとは言ってな…」
「するよね!するよね!」
(この目の前に迫られる感じ…やっぱり慣れない。嬉しいような怖いような。変な感じ)
「笑顔とはいえ190㎝超えのあのガタイで160㎝もなさそうなあの子にあれだけ迫っている姿見ると脅迫にしか見えねーな」
「遠くから見たら襲われているよう誤解されそうだな」
「街中でお巡りさんが見かけたら職質受けるだろうな」
”………コク”
「なんか返事するまで嫌な間があったな」
「ああ。正直、モノ言わせぬような圧力で頭を振らせたようにしか見えないな。けど…」
(新入部員ゲットにつながったし、まぁいいか)
「よかったな、2年になる前に新入部員を確保出来て。それも念願だったピチャーだしな」
「まあ、誰かさんとは真逆のタイプのピチャーだけどな」
「三淵先輩か?確かにあの先輩とはある意味対極かもしれないな」
「ちげーよ、お前の事を指して言ってるんだよ」
「え?ストレート主体だから寧ろ似てない?」
「あのコントロールでよくそのセリフが吐けたな。今日は特に酷かったし」
「ふ、そういう日もピッチャーにはあるのだよ」
「いや、俺らはそういう日以外をほとんど見たことないんだけど」
「俺へのフォローは⁉︎」
「そんな事より前沢くんよ、学年の変更と共に使用する靴箱の位置も変更になる故自分のシールは剥がして別の所を使用するようにと少し前に食堂で伝えられているにも拘わらず剥がしてない上に現在進行形で使い続けているのはどういうこねチミ」
「………」
「とりあえず今日はもう風呂を済ませようぜ」
「そう言えば赤坂君部屋何番だった」
”1” ”0” ”1”
輝明は指で番号を伝えた。そしてそれを確認した瞬間他の野球部員らの顔が引きつった。
「げっ、101ってことは…」
「ああ、あの馬鹿と同じ…」
「おお!俺と相部屋だな!やっぱりピッチャーとキャッチャーは常に一心同体ということだな」
(そう、なのだろうか?)
「赤坂君、悪いこと言わないから今すぐでも部屋を変えた方がいい。今なら多分先生にも文句言われないから」
「ちょ、ちょっと!何でせっかく出来た黄金部屋を崩そうとしてるんですか!?」
(…黄金部屋)
「そんなもんお前と同じ部屋だと悪影響だからに決まってんだろうが!」
「今だって普通に規則守れてないしな」
「ああ、きっと馬鹿が移りそうだからな」
「嫌だぁ~!俺からこの子を奪わないでぇ――!!」
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その後輝明は自由にがっちりホールドされた状態で口論になった自由が散々ごねて結局部屋の場所はそのままとなった。
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