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第3話 投球練習(後編)
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「すいません、大丈夫ですか先輩?」
自由は死球を受けた先輩に声を掛ける。
「地面に手を付き痛みで未だに立ち上がれないこの姿が君には大丈夫に見えるのかね?」
「え?それ痛がってるフリとかじゃないんですか?」
「…人様に、それも先輩に対してボールぶつけておきながら何でそんなふざけた質問が出来るのか。小一時間くらいみっちり聞かせてもらいたい件はとりあえず置いとくとして、そもそもなんであれだけのスピードの危険球ぶつけといて俺のへの心配がそんなに希薄なんですかね?」
「だってフォームがかなり崩れて横投げになっちゃいましたからね。実際そんなに大した威力じゃなかったでしょ?」
「君の耳は飾りかな?さっき『地面に手を付き痛みで未だに立ち上がれない』と言ったのが聞こえなかったのかな?未だに尻の感覚が激痛でおかしくなってんだよ。ちゃんと謝れ!」
「ああ、そうなんですか。俺はてっきり先輩のデザートを食ってしまったのがばれてて、それを含めた腹いせに俺により罪悪感を味合わせようという先輩の仕返しなのかと思ってました。すいません」
「普通に痛いってんだよ。………ん?今なんて?」
「先輩の楽しみにしてた冷蔵庫のデザートを間違って食べてしまったのがばれて、復讐の為の演技をしてるのかと思ってました」
「デザ…は?食べ…はぁ!?」
「いや~てっきりそういう理由で立てないのではなく立たないとばかり思っていたのですが…えっと、ボールぶつけちゃってすいません先輩」
「遅いんだよちゃんとした謝罪が!いや、それよりおま!本当に食ったのかよ!?」
「はい。ああ、ちゃんと美味しかったので大丈夫ですよ」
「そういうことじゃねーだろうが!それと俺の方はぜ――んぜん大丈夫じゃないんだよ!!」
「そ、そんなに怒らなくても。ちょっとボールをぶつけちゃったのと、ちょっと勘違いして先輩への謝罪が疎かになっちゃったのと、ちょっとデザート食べちゃっただけじゃないですか?」
「『ちょっと』って言葉を謝罪の時の万能用語として多様化すんじゃねーよ!何で数分にも満たない間にお前は俺への激怒ポイントを2つも3つも4つも作ってくんだよ!」
「4つ!?俺そんなにやらかしてませんよ?」
「現在進行形でやらかんしてんだよ!お前が述べた3つに加えて、ここまでやらかしといてそれらに罪悪感を大して抱いていない事が4つ目だ!」
「べ、別にそこまで軽い事だとは思っていませんよ。『ちょっと』色々やり過ぎたなと反省してます」
「だ・か・ら!この期に及んで『ちょっと』とか言いくさってんのが軽視してるって言ってんだよ!!」
「あ~確かに。ちゃんと『ものすごーく』とか『滅茶苦茶』とかそういう単語を使うべきでしたね。言葉って難しいですね」
「お前…大体何で体勢大幅に崩していながらボール放ってんだよ?無理して投げなくたっていいだろうが」
「先輩忘れちゃったんですか?ピッチャーが投球動作を途中でやめてしまったら反則球《ボーク》になっちゃうんですよ」
「今は練習中なんだからそんな事まで気にしなくていいだろうが!」
「こうやって常日頃から実戦での事を想定して練習するのは大切ですよ」
「…実践云々で言わせてもらうなら俺の今いる位置は大体ネクストサークルだぞ。もし相手ベンチがこっち側ならお前のボールは次打者に当たってしまったって事になるんだが?そしたら相手ベンチはさぞ激怒するだろうよ。そしたらボークどころじゃねーだろうが」
「なるほど。つまり当ててしまったのが実践の相手校の選手でなく身内の先輩でラッキーという事ですね!?」
「おおぉ――い!なんだその自分に都合のいい部分だけ取り入れたような解釈は!?お前本当に謝罪する気あんのか!?」
「まあまあ、それくらいにしろよ。よその子にこれ以上身内の恥をさらすような真似はやめようぜ」
「くっ、けどお前からもこの馬鹿にぶつけた事や今のやり取りでなんか言よ!」
「え?俺から言うことは特に何もないが?」
「はあぁ!?何で今のやり取り間近で聞いてたのに何で何も言う事が無いんだよ!?」
「だって別に俺がぶつけられて被害に遭ったわけじゃないしな」
「こ、この野郎~!!」
「大体この結果はある意味自業自得というやつだから仕方ないだろう?
「何で散々な目に遭っている俺が自業自得なんだよ!?」
「俺にした仕打ちを忘れたのか?
「はぁ?何でここでお前が関連してくるんだよ?というお前にしたって何かした覚えはないぞ?」
「そう、確かに何もしていない。というよりは『何もしない』という選択したという方が分かりやすいか?投球練習が始まる前だ」
「始まる前?」
『そうだな、俺もやりたくはないし。大変なのはキャッチャーだけだろうし』
『それが分かってんならポジション代わってくれよ』
『無理、無理』
「俺の求めた救いの手を払っただろう?きっと何処かの心優しい神様が俺を哀れに思いお前に天罰を下さったんだろうよ」
「こじ付けがすぎる。とか心優しい神なのに捌き方が理不尽だとか色々とツッコんでやりたいところはあるけどそれは置いとくとして、それが本当に俺が死球受けた理由なら何で罰を与えられてんのが俺だけなんだよ?他の奴らだって同罪だろうが」
「多分あの時口にして断ったのがお前だけだからじゃない?」
「本当に優しい神なのか疑わずにはいられないくらい判定の基準が理不尽だな!?」
「まあ確かに他の人も同罪だから練習中にでも天罰が下るんじゃない?さあ、そろそろ投球練習再開するぞ。まだ肩全然出来てないんだろうからな」
「はい!」
「お、覚えてろよ」
去り際悔しそうな表情を浮かべる中田を横目に森村は薄っすら笑みを浮かべていた。
自由は死球を受けた先輩に声を掛ける。
「地面に手を付き痛みで未だに立ち上がれないこの姿が君には大丈夫に見えるのかね?」
「え?それ痛がってるフリとかじゃないんですか?」
「…人様に、それも先輩に対してボールぶつけておきながら何でそんなふざけた質問が出来るのか。小一時間くらいみっちり聞かせてもらいたい件はとりあえず置いとくとして、そもそもなんであれだけのスピードの危険球ぶつけといて俺のへの心配がそんなに希薄なんですかね?」
「だってフォームがかなり崩れて横投げになっちゃいましたからね。実際そんなに大した威力じゃなかったでしょ?」
「君の耳は飾りかな?さっき『地面に手を付き痛みで未だに立ち上がれない』と言ったのが聞こえなかったのかな?未だに尻の感覚が激痛でおかしくなってんだよ。ちゃんと謝れ!」
「ああ、そうなんですか。俺はてっきり先輩のデザートを食ってしまったのがばれてて、それを含めた腹いせに俺により罪悪感を味合わせようという先輩の仕返しなのかと思ってました。すいません」
「普通に痛いってんだよ。………ん?今なんて?」
「先輩の楽しみにしてた冷蔵庫のデザートを間違って食べてしまったのがばれて、復讐の為の演技をしてるのかと思ってました」
「デザ…は?食べ…はぁ!?」
「いや~てっきりそういう理由で立てないのではなく立たないとばかり思っていたのですが…えっと、ボールぶつけちゃってすいません先輩」
「遅いんだよちゃんとした謝罪が!いや、それよりおま!本当に食ったのかよ!?」
「はい。ああ、ちゃんと美味しかったので大丈夫ですよ」
「そういうことじゃねーだろうが!それと俺の方はぜ――んぜん大丈夫じゃないんだよ!!」
「そ、そんなに怒らなくても。ちょっとボールをぶつけちゃったのと、ちょっと勘違いして先輩への謝罪が疎かになっちゃったのと、ちょっとデザート食べちゃっただけじゃないですか?」
「『ちょっと』って言葉を謝罪の時の万能用語として多様化すんじゃねーよ!何で数分にも満たない間にお前は俺への激怒ポイントを2つも3つも4つも作ってくんだよ!」
「4つ!?俺そんなにやらかしてませんよ?」
「現在進行形でやらかんしてんだよ!お前が述べた3つに加えて、ここまでやらかしといてそれらに罪悪感を大して抱いていない事が4つ目だ!」
「べ、別にそこまで軽い事だとは思っていませんよ。『ちょっと』色々やり過ぎたなと反省してます」
「だ・か・ら!この期に及んで『ちょっと』とか言いくさってんのが軽視してるって言ってんだよ!!」
「あ~確かに。ちゃんと『ものすごーく』とか『滅茶苦茶』とかそういう単語を使うべきでしたね。言葉って難しいですね」
「お前…大体何で体勢大幅に崩していながらボール放ってんだよ?無理して投げなくたっていいだろうが」
「先輩忘れちゃったんですか?ピッチャーが投球動作を途中でやめてしまったら反則球《ボーク》になっちゃうんですよ」
「今は練習中なんだからそんな事まで気にしなくていいだろうが!」
「こうやって常日頃から実戦での事を想定して練習するのは大切ですよ」
「…実践云々で言わせてもらうなら俺の今いる位置は大体ネクストサークルだぞ。もし相手ベンチがこっち側ならお前のボールは次打者に当たってしまったって事になるんだが?そしたら相手ベンチはさぞ激怒するだろうよ。そしたらボークどころじゃねーだろうが」
「なるほど。つまり当ててしまったのが実践の相手校の選手でなく身内の先輩でラッキーという事ですね!?」
「おおぉ――い!なんだその自分に都合のいい部分だけ取り入れたような解釈は!?お前本当に謝罪する気あんのか!?」
「まあまあ、それくらいにしろよ。よその子にこれ以上身内の恥をさらすような真似はやめようぜ」
「くっ、けどお前からもこの馬鹿にぶつけた事や今のやり取りでなんか言よ!」
「え?俺から言うことは特に何もないが?」
「はあぁ!?何で今のやり取り間近で聞いてたのに何で何も言う事が無いんだよ!?」
「だって別に俺がぶつけられて被害に遭ったわけじゃないしな」
「こ、この野郎~!!」
「大体この結果はある意味自業自得というやつだから仕方ないだろう?
「何で散々な目に遭っている俺が自業自得なんだよ!?」
「俺にした仕打ちを忘れたのか?
「はぁ?何でここでお前が関連してくるんだよ?というお前にしたって何かした覚えはないぞ?」
「そう、確かに何もしていない。というよりは『何もしない』という選択したという方が分かりやすいか?投球練習が始まる前だ」
「始まる前?」
『そうだな、俺もやりたくはないし。大変なのはキャッチャーだけだろうし』
『それが分かってんならポジション代わってくれよ』
『無理、無理』
「俺の求めた救いの手を払っただろう?きっと何処かの心優しい神様が俺を哀れに思いお前に天罰を下さったんだろうよ」
「こじ付けがすぎる。とか心優しい神なのに捌き方が理不尽だとか色々とツッコんでやりたいところはあるけどそれは置いとくとして、それが本当に俺が死球受けた理由なら何で罰を与えられてんのが俺だけなんだよ?他の奴らだって同罪だろうが」
「多分あの時口にして断ったのがお前だけだからじゃない?」
「本当に優しい神なのか疑わずにはいられないくらい判定の基準が理不尽だな!?」
「まあ確かに他の人も同罪だから練習中にでも天罰が下るんじゃない?さあ、そろそろ投球練習再開するぞ。まだ肩全然出来てないんだろうからな」
「はい!」
「お、覚えてろよ」
去り際悔しそうな表情を浮かべる中田を横目に森村は薄っすら笑みを浮かべていた。
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