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第2章 冒険者編

113話  悪役ってどっちだっけ?

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「ど、どうした!」

「ボイラム様大変です!仲間が1人倒されてます!しかもそれだけではありません。あ、アイツが!」

 振るえる指先で指し示した方には大河が不敵な笑みを浮かべていた。

「な!貴様は先程の総攻撃で死んだはず⁉何故生きている⁉」

「さあ?何ででしょうね?」

「さては攻撃が当たる刹那にギリギリで避けたのだな。我々を油断させるために姑息な真似をしおって!お前たちもう一度全員で攻撃だ!今度こそあのにっくき小僧を丸焦げにしてくれるわ!」

「しない方がいいと思うけどな~」

「黙れ小僧!構うな、全員放てえぇい!!」

「「「<燃えよ>フレイム!」」」

 不適切な笑みを続ける大河目掛けて放たれた火たち。それらが合わさり肥大化し眼前の大河の視界一面を覆う程の大きさとなり、直撃後に上がった悲鳴により間違いなく討ち取ったと確信していた。

「ふん、今度こそあの小僧の息の根は…な!あ、あれは!」

 動揺から震える指の先には真っ黒に焦げあがった仲間の姿とその後ろで作戦成功で悪戯が成功した子供の様な表情をしている大河の姿があった。

「わ、私の部下が!な、何故こんな事に!?」

「ボ、ボイラム…様…」

「あ~あ、だから攻撃しない方がいいって忠告したのに」

「その手に持っているのは…き、貴様!まさか倒れている我々の仲間を盾代わりにして凌いだのか!?」

「正解!いや~我ながら咄嗟の思い付きにては言い案だわ。負傷しても全く困らない使い捨ての盾。これなら前方から飛んで来る魔法攻撃気にせずに前進出来るし、ついでに盾にしている奴に止めも刺せる。いや~まさに一石二鳥だわ」

まあ盾にしては少しばかり重いだろうけど、破損しても全く困らない点と本来防具を装備出来ない俺が唯一装備(?)出来てるという点ではかなり重宝する。それに腕力は多少使うけど避ける体力を温存出来しながら魔法を気にせず直進出来る点も大きいしな

「き、きさ、貴様あぁぁ!!そんな非人道的な行いをして人として心は痛まないのか!?」

人じゃない奴が、しかも責めて来た魔王軍側がそれを言うのか?

「え~何ですか?聞こえないな~?何か言った?」

「そんな外道な戦法で戦うなど冒険者として恥ずかしくないのかと聞いているのだ!?」

「大勢で一人を相手に囲ったり、離れた距離から一斉攻撃仕掛けておいて何言っちゃってんの?それに俺が悪いんじゃないさ。使って下さいとでも言わんばかり倒れているこいつらが悪い」

「ア、アイツ人間じゃねー!鬼だ!悪魔だあぁ!!

「ぐぬぬぬ、よくも我が同胞を!」

まあ確かにここまで色々煽ったりしてるのも加味すると俺の行動って悪党のソレだし、無慈悲にも倒れた敵を盾にして戦う人間VS一丸となって敵を打倒しようとする魔王軍。傍からみてたらどっちが悪役かわかんないもんね

「なんて奴だ!敵とはいえ可哀そうだと思わないのか⁉」

「いや、特に」

「「「ぁ……ぉ………!」」」

 大河があまりにも堂々と言い切ったものだから魔族らは開いた口が塞がらなかった。彼らは理解していなかった。自分達と目の前の敵大河では可哀そうに相対する基準がかけ離れていることに。

 転生してから散々な目に遭い続けてきたのは勿論、今日だけでも普通の人間であれば一生縁がないであろう経験を2度も受けた後に今に至るのである。『敵に盾代わりにされている程度で可哀そうというのならば自分はどうなってしまうんだ?』と自問自答しかけない為にもはっきりと言い切った。

まあ本音を言えば流石に敵ながらすこ~しだけ可哀そうなのかな?とはちょっと思うよ。だけどさ、シカタナイヨネ?この人数を一人で相手する事がそもそもおかしいんだもん。これ前の世界だと一対一の格闘技の勝負で大量の敵の増援が乱入されてるおかしな事態なのに審判やジャッジが何も言わずに放置されて多人数を一人で相手にするのと一緒だもん。そんな無理ゲーをまともにやって勝てるわけないじゃん?審判がいないようなもんなんだから多少手段が卑怯でもファール行為もシカタナイヨネ?うん

「だ、誰か。た、助け…て」

「アイツ、絶対ぶっ殺してやる!待ってろ今すぐ俺の魔法で…」

「おやおや、仲間がどうなってもいいのかな?」

「待て、魔法で攻撃してもまた仲間を盾にされちまう」

「クソッ!どうすればいいんだ」

「ボイラム様!ご指示を!?」

「っっっっ!」

どうやら大分混乱してるみたいだな

「こ、こうなったら仕方ない。人間相手には使うのは癪だがやむを得まい。感謝するがいい小僧!貴様には特別に私の特別な魔法を食らわしてくれる!」

「おいおい、この魔族版使い捨てシールド可哀そうなお仲間が見えないのか?」

「ふ、笑止!この魔法は貴様一人を狙って発動する事も可能なのだ」

え?…マジ、ですか?目に見えなかったり対象に直接ぶつけられる魔法とか?

「おお、出るのか!ボイラム様の回避不可能のあの魔法が」

え?ここに来て隠し玉とかそんなハードモード要素なんか求めてないんですが⁉

「<我が厄災に火によりその身を焦がせ>メギレエルム!」

 大河の足元に魔法円《マジックサークル》が出現し、突然の事態に大河も動揺を隠せなかった。そして硬直している間に光が大河を包み込んだ。

マジで見えないぞ!?くっ!やられ………あれ?

「どうだ私の状態異常魔法の味は?皮膚が焼けるような痛みでとても戦闘に集中なのど出来まい?アッハッハッハッハッハ」

 勝利を確信し勝ち誇った顔で高らかにあざ笑うボイラム。しかし大河の方は特にこれといった変化がなく、両手をグーパーして体に異変が無いかどうか確かめるもこれといった症状は感じ取れず困惑していた。

「ああ~えぇ~浮かれてるところ申しわけないんだが俺の方は特になんともないんだが?」

「………へ?」

「………」

「………」

「ど、どうーせ瘦せ我慢をしているだけであろう?」

「別にしてないんだが?」

「………っ!」

 本来であれば全身の皮膚を焼けたような痛みが走り、激痛で地面に転がり込んでもおかしくない状態。仮に虚勢を張っているにしても苦痛によりそれらが表情にありありと現れるものである。

 しかしどうだろうか?目の前の少年は汗一つかかず、表情や仕草にこれといった動揺が見受けられないどころか若干こちらを憐れんでいる眼差し迄向けている様にボイラムは見えていた。

「ふ、ふん。痩せ我慢だけは得意なようだな」

「いや、だから別に…」

「しょうがないな。そこまで言うのであればその勇気に免じてもう1発くれてやる!<我が厄災の火によりその身を焦がせ>メギエルム!」

 再び魔法円の白い光が大河を包みこんだが結局大河は何も感じられなかった。

「フハハハハハ!どうだ小僧⁉これでいかに貴様が我慢強かろうと正気を保ってなどいられまい?」

高らかに勝ち誇った笑い声をあげるボラムだが大河に先ほどと同じく異変は無く、爆発やら落下のダメージで痛感が麻痺してしまったのか?と疑問が浮かび頬を引っ張ると感触も感覚も正常に機能しており、あれだけ自信満々に技を繰り出し、目の前で勝利を微塵も疑っていない敵が哀れ覚えた。

「………あ~勝ち誇っているところすまんがバッチリ保ってるぞ、正気。そしてもろに受けてるけどやっぱりなんともないぞ、お前の魔法」

「ふん、未だにそんな戯言を口にできるとはやせ我慢だけは人一倍だな。しかぁ~しぃ~どれだけ否定しようとも貴様のその憎っくき面にはしかと我の魔法ほ爪痕が………ん?」

「………」

「………………き、きさ!き…なん、何で!か…顔が…ぶ、ぶ!」

見下したような下卑た笑みからの細い目が大河の顔面を視界に捉えると一瞬で無表情となり、見つめる時間が長くなるにつれ眼孔の開きと共にその表情は青白いモノへと変化していった。

「そ、そそそ、そんな馬鹿なっぁぁーー‼」

「ま、まさかボイラム様の状態異常魔法が効かない人間がいるとは!」

「ボイラム様、落ち着いてくださいませ」

あの有り得ないモノを目にしているかの様な驚き方。よっぽと自信のある魔法だったんだな。しかしラッキーではあるが何で俺には効かなかったんだ?腹の調子でも悪かったとかか?

「ち、違う。こんな事は有り得ない!ある筈がない!私の状態異常魔法を受けて平気な人間などいる筈がない!そうだ!きっと爆発を受けた影響で魔力量を誤ったか何かで正しく発動されなかったのだ。そうだ!そうに違う無い!」

もしアイツの言っていることが本当ならラッキーとしか言いようがない。言いようがないんだが…そもそもその要因があの爆発だからな~。魔王軍の軍勢を爆弾により弱体化させたことといい、これだとあの王女らの奇行が正解だったという事になってしまいそうで複雑だ。けどまあ今は…チャンスだ!

 盾《敵》を捨てて一直線に走り出した。自分が動揺している中、敵が近づいているのに気付けず、反応が遅れてしまったボイラムは易々と大河の射程距離まで接近を許してしまった。

「しまっ…!」

 胸元に拳が炸裂しボイラムは後方に吹っ飛ばされてしまった

ちっ、コイツだけ他より身長差あるの忘れて沈み込んで殴っちまったせいで顔面捉え損ねた。だけど…

「こ、きさ…ま!」

すぐ立ち上がれない辺り手応え通り結構なダメージを与えられたようだ。他の奴らも動揺してるし、このまま一気に…

「ボイラムよ、何をやっているのだ?」

「!」

 ボイラムが大河を睨みつけるているとその背後に思わぬ人物が立っていた









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