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第1章 異世界転生編

79話  凱旋2 

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数日前から都市に入れないようになっていたのなら俺は何では入れたんだ?話を聞いた感じ特定の人以外は入門出来ない筈なのに…あっ

ある事実を思い出した大河の脳裏は浮かんだ疑問を跡形もなく吹き飛ばした。

アレが理由フランスパンか。ちゃんと仕事しろよ!でも逆に言えばアレが滅茶苦茶だったから王都に入る事も出来たわけだから…まさかアレの性格に感謝する日がこようとはな………いやいやいや、それは結果論だろ。実際碌な目に合ってないんだから勘違いするな!

「通常の手段に制限されていますが、その代わり別の手段で王都に入ることは許可されています」

「別の手段?」

 どこからともなく物凄い轟音が聞こえてきた。

「丁度入ってきたみたいですね」

 メイド長が指さした先には壁を超えて現れた巨大な飛行船だった。

「都市外の方々は大抵アレに搭乗されて観賞します」

「何というか…現地民より豪華ですね。問題になったりしないんですか?」

「そういった人もおられますからそういった方は反対側から出される都市民専用の飛行船に乗る事が出来ます。ほら、丁度あそこに」

指さした方向から別の飛行船が訪れていた。

「あっちの方に人が押し寄せたりしないんですか?」

「あちらだと間近で見る事は出来ませんし、中が充実している分搭乗に高額料金が発生致しますからね」

 なんやかんやメイド長と話をしていると突然辺りが一帯が暗くなった。

停電?いや、ここ外だったな。空まで暗い。何というか急に夜になった感じだ。魔法の一種だろうか?

「皆様、長らくお待たせいたしました。まもなく入場の準備が整いますので今しばらくお待ちください」

ここまでくると最早一種のパレードだな

 どこからか聞こえてきたアナウンスが終了し少しすると空けられた通路にビー玉より一回り大きいくらいの火の玉が門前から中地区目掛けて左右2列ずつ点灯した。その後左右に点灯した火の玉の間に火の輪が一定間隔で出現した。

「今回はどうなるかね」

「私はブライトの転倒に10万オリス」

「俺はまた花火の軌道がズレてブライトに当たるに20万」

「だったら俺は最後のジャンプで着地失敗するに30万」

「おいおい、失敗前提ばっかかよ。誰か成功する事の方に賭けてやれよ」

「そういうセリフは自分が成功する方に賭けてから言えや」

 住人達がこれからの出来事を賭け事の対象にして盛り上がっていると、街道の左右に浮上していた飛行船から当てられたスポットライトよって火の玉が浮かび上がっている一帯の道が照らされた。

 これによって先ほどまでザワザワしていた人々が一斉に静かになった。そして王都中といっても過言ではない数の住人たちの待ち人、ブライト・エルプリクスがようやく門を潜ってその姿を観衆の前に現した。

 ブライトは門から出て一度立ち止まり、ニヤッと笑うと真っすぐに走りだした。そして火のレールの前まで来ると、スピードを緩めることなく走りながら左右の側方回転や2回宙返りといった動作で火の輪を潜りながら決めて前に進んでいった。

 潜り終えた火の輪は集約されて火球となって彼の跡を追い続けた。そして彼がが街道を通るのに比例して点灯していた火の玉がまるで火山の噴火のように高々と燃え上がり、観衆も釣られるように高揚していった。

 そして最後の火の輪を潜ると高々とジャンプした。それに乗じて彼の後ろに付いてきていた火の玉は彼より上空に浮上して再び火の輪の形に変化した。その後彼は1回、2回、3回と中を舞いながら輪を潜った。

 そのまま着地するのかと思われたが、足場でも有るかのように空中で再びジャンプして落下する事なく数回回転し、再度ジャンプした。それにより彼の到達点が既にそこらで浮上している浮遊クラゲよりも高く跳躍していた。

 そして今度はジャンプすることなくその高さから垂直に落下していき、同時に回転していった。逆に彼を追跡し斜めに浮上していた多数の火球はそのまま上昇していき、門からもそれに合わせるように強大な火球が打ち上げられた。彼らのパフォーマンスに集まった観衆たちからも歓声が上がりフィニッシュを迎えようとしていた。しかし…

「あぁ!」

 高すぎたのか、それとも回転数を間違えたのか。回転中の男性の発したその声は失敗を認めたよなものであり、最後の回転をし終える前に頭部が地面に激闘するのは誰の目にも明らかだった。彼のパフォーマンスに魅入られていた人々も恐れて悲鳴を上げたり目を逸らしだした。

「なんの!」

 地面と頭部とのほんの数センチ距離といった状況でブライトは咄嗟に人差し指を地面に付きつけた。その結果彼の指は深々と地面に突き刺さり、頭はほんの僅か地面と接触するかしないかという距離でギリギリ衝突を免れた。

 その結果フィニッシュ用に放たれたであろう花火が暗く染まった空を綺麗に彩る中で肝心の役者が明らかに成功したとは言えない微妙な形で結末を迎えていた。
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