74 / 124
第1章 異世界転生編
73話 逆チート
しおりを挟むハズレスキル。皆さんはこの言葉を聞いた時どんなものを思い浮かべるだろうか?基本的にゲーム界隈で使用される単語であるがこの言葉が当てはまるかどうかは人の評価によってそれぞれである。
例えば『○○の劣化だから』とか『他と比べて効果が微妙だから』などがあげられるが基本的には『汎用性がない』、『使用範囲が限定的すぎる』などの実用性の乏しい類の物が挙げられるだろう。
そして下になればなるほど『そのスキルを使用するメリットがなく実質効果なし』、『効果の割にデメリットが大きすぎる』となっていくだろう。
大河もそのように認識していたし、チート枠にも関わらず任意で効果を発動できるわけではないのでお世辞にも秀でたスキルとは言えないどころか使用者に危険が及びまくる点を考えてもユニークスキルは大河的には文句なしでハズレスキルに該当する部類だろうと考えいた。
しかし大河はこの日、自身の認識が大きく間違っていたのだと悟りざる得ないスキルの一覧がずらりと記載されていた。
大河は驚愕のあまり言葉がでなかった。序盤はそれっぽくおまけのようにではあるが一応の形は作られているのに対して後半からは色々と考えるのがめんどくさくなったからとでも言わんばかりに適当に作られていた。
その証拠にスキルであるにも関わらず効果はなし。しかもデメリットのみが付けられている嫌がらせの為に作ったとしか思えないスキルの数々に沸々と怒りが沸き上がってくる。
当然デメリット+デメリットのマイナスの詰め合わせみたいな正真正銘の駄目スキルよりかは結果的にまだマシではあるが、そもそも特に意味のないスキルならだったら作るなよとしか言葉が浮かんでこなかった。
(なっ、なぁっ!なんじゃこりゃーー!?)
「五月蠅いわい!なんじゃいきなり発狂しおって。とうとう気でも狂ったのか?」
(その言葉はのしつけて返してやる!そんな事よりこれどうなってんだよ!)
「はて、これとは?」
(ユニークスキル関連のスキルの事だよ!何であんなバイ菌の塊みたいなスキルが鶏の卵みたく後から後から大量生産されてんだよ。文字通りの要らんお世話としか言えない類の物ばかりだぞあれ。お前本当に俺をこの世界で生き残らせる気あるのか!)
「お前も前の世界にいた時にバランス調整という単語を一度は耳にしたことがあるじゃろう。ゲームなどで出したキャラが強すぎた場合ゲームバランスを著しく阻害する恐れがある為にキャラの強さを調整するといった行いがあることを」
(…一応念のために聞いておきたいんだがその話がどう関係してくるんだ?)
「ここまで話してまだ察せんのか?仕方ないやつじゃのう。ワシの与えたスキルは強力も強力。やりたいこと、思った事など大抵何でも可能にしてしまえるスキル。お前らのせいで言うところのまさにチートスキルとやらを何倍にもした効果。或いは一つのスキルではあるが事実上複数のチートスキルを組み合わせた様な集合体の様な効果じゃ」
(………)
「じゃからいくら厚顔無恥で実力最底辺な上にワシの与えた素晴らしい恩恵の価値を全く理解していない猫に小判や豚に真珠といったことわざがまさにピッタリ当てはまるような貴様でもそう遠くないうちに素晴らしい恩恵の力によってマグレでも魔王軍の奴らなんかに勝ち続けてしまい称賛され嫌でも周りの注目を浴びるじゃろうと全能たるワシは予見しておったのじゃ。まあ、誰かさんの低能っぷりがあまりに酷すぎて名声を轟かせるまでがワシでも予知できぬレベルまでに後退しておるようじゃがのう」
(………)
「しかしお主の無能をもってしても与えたスキルが強すぎて問題になる事は時間の問題だろうと考えた。そうなると力を授けたワシが他の神々から特別過ぎる力を与えたと色々とケチを付けられたりして困ると思ってのう、そうならんためにスキルを一定数使用する毎に制限となるスキルが追加される仕組みとなっとるんじゃ」
(もうこの時点で色々と怒鳴りたい事が両手、両足の指程度じゃ足りないくらいごまんとあるがそれを口に出したら話が一向に進みそうにないから取り敢えずそれは一旦横に置いておくとして、スキルの制限とやらはお前の言っていたクソスキルの効果を任意で行使できず、ランダムで適用されるとかいったブラック要素がその役割を担っているとか言ってなかったか?)
「それでもユニークスキが強力で便利過ぎると思うてのう」
(それ以外にも使用者の俺目掛けて放たれる鈍器やら魔法やらの超危険物がランダム選択肢内に混入されてるとかいうのもあった筈だが?)
「やはりその程度でも制限としてガバガバな可能性が大いに有りえたからのう。保険じゃ」
(あんたのスカスカ脳ミソによって導き出されてしまったしょうもない理由なのは理解した。だがなあれどうなってんだよ?クソスキルより更に質が悪いとか笑えねーぞ)
「そんなにおかしいものは入れておらん筈じゃがな」
(そんなにおかしなものは入れてないだと?どの口が抜かしてんだよ。ユニークスキルの上から2つ除くと意味なしとデメリット。しかも意味なしがまだマシと思えるくらいの効果がマイナスとデメリットの凶悪コンボがたんまりときたもんだ。これのどこにおかしな要素がないなんて言いきれるんだよてめーは!)
分かってはいた。この邪神相手にまともな会話が成立しないことはこれまでのやり取りでも理解はしていた。しかし邪神の思考が自分には到底理解出来ずとも自分に|《大河》死なれては困ると発言していた辺り、自分の置かれた状況が芳しくなくとも序盤に死線潜り抜けた事で『何とかなるだろう』と少し楽観的に思えていた節もあった。
しかしそれは大いに間違いであった。本来戦いの日々に身を置く者が多いこの世界とは違い、基本平和な国で育った一般人でしかない転生者がそのまま送り込まれてもまともに戦闘など出来るはずもない。その為に与えられる常軌を逸しているとも言える程の強力過ぎる特殊能力。いわゆるチートスキルが授けられる。
しかしそのスキルが我が身を守るためではなく我が身を危険を及ぼす物なだけでも問題なのに、それが所有者に強力な恩恵をもたらすチートスキルとまさに正反対。所有者に強力な悪影響を及ぼす逆チートスキルと化している上に、その逆チートスキルが呪いが連鎖し続けるかのように増加しているのである。
異世界に来てから様々な理不尽をその身に受けてきた大河であったが、流石にここまでのハンデを背負い『まあ、仕方ないか』と飲み込める技量は持ち合わせていなかった。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる