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第1章 異世界転生編

73話 逆チート

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 ハズレスキル。皆さんはこの言葉を聞いた時どんなものを思い浮かべるだろうか?基本的にゲーム界隈で使用される単語であるがこの言葉が当てはまるかどうかは人の評価によってそれぞれである。

 例えば『○○の劣化だから』とか『他と比べて効果が微妙だから』などがあげられるが基本的には『汎用性がない』、『使用範囲が限定的すぎる』などの実用性の乏しい類の物が挙げられるだろう。

 そして下になればなるほど『そのスキルを使用するメリットがなく実質効果なし』、『効果の割にデメリットが大きすぎる』となっていくだろう。

 大河もそのように認識していたし、チート枠にも関わらず任意で効果を発動できるわけではないのでお世辞にも秀でたスキルとは言えないどころか使用者に危険が及びまくる点を考えてもユニークスキルゆびをふるは大河的には文句なしでハズレスキルに該当する部類だろうと考えいた。

 しかし大河はこの日、自身の認識が大きく間違っていたのだと悟りざる得ないスキルの一覧がずらりと記載されていた。

 大河は驚愕のあまり言葉がでなかった。序盤はそれっぽくおまけのようにではあるが一応の形は作られているのに対して後半からは色々と考えるのがめんどくさくなったからとでも言わんばかりに適当に作られていた。

 その証拠にスキルであるにも関わらず効果はなし。しかもデメリットのみが付けられている嫌がらせの為に作ったとしか思えないスキルの数々に沸々と怒りが沸き上がってくる。

 当然デメリット+デメリットのマイナスの詰め合わせみたいな正真正銘の駄目スキルよりかは結果的にまだマシではあるが、そもそも特に意味のないスキルならだったら作るなよとしか言葉が浮かんでこなかった。

(なっ、なぁっ!なんじゃこりゃーー!?)

「五月蠅いわい!なんじゃいきなり発狂しおって。とうとう気でも狂ったのか?」

(その言葉はのしつけて返してやる!そんな事よりこれどうなってんだよ!)

「はて、これとは?」

(ユニークスキル関連のスキルの事だよ!何であんなバイ菌の塊みたいなスキルが鶏の卵みたく後から後から大量生産されてんだよ。文字通りの要らんお世話としか言えない類の物ばかりだぞあれ。お前本当に俺をこの世界で生き残らせる気あるのか!)

「お前も前の世界にいた時にバランス調整という単語を一度は耳にしたことがあるじゃろう。ゲームなどで出したキャラが強すぎた場合ゲームバランスを著しく阻害する恐れがある為にキャラの強さを調整するといった行いがあることを」

(…一応念のために聞いておきたいんだがその話がどう関係してくるんだ?)

「ここまで話してまだ察せんのか?仕方ないやつじゃのう。ワシの与えたスキルゆびをふるは強力も強力。やりたいこと、思った事など大抵何でも可能にしてしまえるスキル。お前らのせいで言うところのまさにチートスキルとやらを何倍にもした効果。或いは一つのスキルではあるが事実上複数のチートスキルを組み合わせた様な集合体の様な効果じゃ」

(………)

「じゃからいくら厚顔無恥で実力最底辺な上にワシの与えた素晴らしい恩恵ゆびをふるの価値を全く理解していない猫に小判や豚に真珠といったことわざがまさにピッタリ当てはまるような貴様でもそう遠くないうちに素晴らしい恩恵ゆびをふるの力によってマグレでも魔王軍の奴らなんかに勝ち続けてしまい称賛され嫌でも周りの注目を浴びるじゃろうと全能たるワシは予見しておったのじゃ。まあ、誰かさんの低能っぷりがあまりに酷すぎて名声を轟かせるまでがワシでも予知できぬレベルまでに後退しておるようじゃがのう」

(………)

「しかしお主の無能をもってしても与えたスキルが強すぎて問題になる事は時間の問題だろうと考えた。そうなると力を授けたワシが他の神々から特別過ぎる力を与えたと色々とケチを付けられたりして困ると思ってのう、そうならんためにスキルを一定数使用する毎に制限となるスキルユニークスキルが追加される仕組みとなっとるんじゃ」

(もうこの時点で色々と怒鳴りたい事が両手、両足の指程度じゃ足りないくらいごまんとあるがそれを口に出したら話が一向に進みそうにないから取り敢えずそれは一旦横に置いておくとして、スキルの制限とやらはお前の言っていたクソスキルゆびをふるの効果を任意で行使できず、ランダムで適用されるとかいったブラック要素がその役割を担っているとか言ってなかったか?)

「それでもユニークスキが強力で便利過ぎると思うてのう」

(それ以外にも使用者の俺目掛けて放たれる鈍器やら魔法やらの超危険物がランダム選択肢内に混入されてるとかいうのもあった筈だが?)

「やはりその程度でも制限としてガバガバな可能性が大いに有りえたからのう。保険じゃ」

(あんたのスカスカ脳ミソによって導き出されてしまったしょうもない理由なのは理解した。だがなあれどうなってんだよ?クソスキルより更に質が悪いとか笑えねーぞ)

「そんなにおかしいものは入れておらん筈じゃがな」

(そんなにおかしなものは入れてないだと?どの口が抜かしてんだよ。ユニークスキルの上から2つ除くと意味なしとデメリット。しかも意味なしがまだマシと思えるくらいの効果がマイナスとデメリットの凶悪コンボがたんまりときたもんだ。これのどこにおかしな要素がないなんて言いきれるんだよてめーは!)

 分かってはいた。この邪神相手にまともな会話が成立しないことはこれまでのやり取りでも理解はしていた。しかし邪神の思考が自分には到底理解出来ずとも自分に|《大河》死なれては困ると発言していた辺り、自分の置かれた状況が芳しくなくとも序盤に死線潜り抜けた事で『何とかなるだろう』と少し楽観的に思えていた節もあった。

 しかしそれは大いに間違いであった。本来戦いの日々に身を置く者が多いこの世界とは違い、基本平和な国で育った一般人でしかない転生者がそのまま送り込まれてもまともに戦闘など出来るはずもない。その為に与えられる常軌を逸しているとも言える程の強力過ぎる特殊能力。いわゆるチートスキルが授けられる。

 しかしそのスキルが我が身を守るためではなく我が身を危険を及ぼす物なだけでも問題なのに、それが所有者に強力な恩恵をもたらすチートスキルとまさに正反対。所有者に強力な悪影響を及ぼす逆チートスキルと化している上に、その逆チートスキルが呪いが連鎖し続けるかのように増加しているのである。

 異世界に来てから様々な理不尽をその身に受けてきた大河であったが、流石にここまでのハンデを背負い『まあ、仕方ないか』と飲み込める技量は持ち合わせていなかった。








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