52 / 117
第1章 異世界転生編
51話 2度目の手錠と連行
しおりを挟む「そうだよ!何でこんな身勝手な言い分を受け入れようとしてんだよ俺も。クソ神の座標ミスによる上空からの落下だとか、瀕死の状態でモンスターに拉致られたりだとか、転生特典《ゆびをふる》によって隕石に潰されかけたりだとか、下らないことで何度も死にかけたけど結果生き延びてきた。だからこそここまで下らな過ぎることで死ぬとか今更ごめんだチクショウ!」
今までの溜まった鬱憤が爆発して解き放たれた大河の叫びは周囲轟いた。
「隊長気を付けて下さい!追い詰められて発狂し訳の分からないことをほざき始めました。やはり危険な奴です」
「黙れ!こちとらお前らの虚言に対して言いたい事が山のようにありすぎるんだよ」
「何と失礼な。我々やお二方が偽りを申したとでも言うつもりなのか」
「言うつもりなんだよ。まず盗賊連中から命からがら逃げて来た割には服が綺麗すぎるんだよ。どんなふうに攫われて、どう逃亡したのか知らねーけど殆ど汚れが見当たらねーじゃねーか!特に姉の服なんてほぼ白一色のデザインなのに真っ白なままとかおかしいだろ」
「心が清純なクラリス様の着衣であればどのような場所、どのような状況でも新品同然の様に保たれているのは当然の事だ。なにも不自然ではあるまい?」
「相変わらず俺の理解の及べない理屈だな。それに俺に凌辱されたにしては衣服乱れてなさすぎだろ。ボタンまでしっかり止められてて全くはだけてね―じゃねーか」
「それは貴様が隠ぺい工作の為に着衣し直すようにと命令したのだろう。悪知恵の働くハナカスめ」
「そんな事言わねーよ」
「犯罪者は皆そう言うのだ」
「確定すんな。それにエルノアの頬の腫れは俺じゃくなくさっきそいつらが言ってた逃げ来てたとか言ってた盗賊連中から俺とここで会う直前にぶたれたときのだろうが」
「ええい、何度も嘘を重ねるな。正直に言え『お2人の魅力に己の疚しい心を抑えきれずやってしまいました。100回死んでお詫びします』と」
「勝手にしてもいない犯行の動機を捏造すんじゃねー!」
「隊長。こいつの発言に何の証拠もありません。うっかり騙されてはいけませんよ」
「あ、ああ」
「それはそっちも同じだろうが」
「エルノア様とクラリス様には貴様と違って嘘をつく理由などない」
「いや思いっきりあるだろ」
「隊長、99.9%あり得ない事ではありますが、仮にこのハナカスの言う通りだったとしてもこいつが不審者であることには変わりありません」
「どういう意味だ」
「武器にフライパンなんかを装備している変人など見たことがありません。間違いなく頭ヤバイ奴です」
「うるせー!ほっとけ!」
(俺だって本当はもっと武器っぽい武器を持ち歩きたいんだよ!)
「隊長、私もレッドと同じく相当な異常者だと思います。何故なら…」
(コイツまで変な事言いだすんじゃねーだろうな)
「何故なら…この男は右足には足枷がはめられているからです」
「「「え?」」」
ブルーの言葉に釣られてみんな大河の右足に注目する。そこにはスキルによって文字通りの足枷となっていた黒い鉄の塊の存在を皆も視認し、大河自身も指摘されたことにようやく重苦しい物体がが装着されてしまっている事実を思い出した。
(ああ~そういえばあの戦いの最中に付いちゃったんだっけ。というかこれもしかしてずっと付いたままなのか?いや今はそんなことは問題じゃない。問題なのは…)
「いや、これはその…」
(どうしよう?全く言い訳が思いつかねー)
「隊長、コイツはきっとどこかの牢獄から抜け出してきた脱獄囚に違いありません。お2人の件を除いたとしても今ここで断罪するには充分すぎる理由の筈です」
「まだ確定したわけではないだろう。処罰についてはあの方に判断を仰ぐとする。だからとりあえずこの少年は一度連れて行くことにする」
「仕方ありませんね。それならとりあえず手錠をかけるか」
"ガチャリ"
一般市民であれば普通一生も聞かずに障害を終えるであろうその独特な装着音を今日だけで2度も耳にしてしまっている事と、覆しようない現状に復活早々絶望しかけていた。
「それとこれは没収だ」
「あっ!ちょ、返…あだっ!」
レッドに死闘の末にゲットしたフライパンを取り上げられ反射的に取り返そうとする大河だったが右足が前に出ず、バランスを崩して転倒してしまった。
「なにやってんだお前?」
「それがないと歩けねーんだよ!」
「仕方なねーな。目的地にたどり着いたら没収するからな」
「レッド、彼にこれも被せておいてくれ」
「ああ、そうでしたね。イッヒッヒッヒ」
不気味な笑い声を聞きながらエルドから渡された大きな黒いマントを被せられ、大河はすっぽりと包まれた。
「おいこれは何だ!ていうか俺を何処に連れて行くつもりだ!」
「あん?そんなの見りゃわかんだろ。バカなのか?」
「視界が黒い色で覆われているから何も見えないんだよ」
「それぐらいの事でグタグタ言ってんじゃねーよ。五月蝿いハナカスだな。たく」
「いい加減その変なあだ名みたいなのやめろ」
「行き先はまあお前の墓場というか裁きの場というか、そんな感じのところだ」
(話聞いてねーな。それにしても普段であれば冗談にしか聞こえない言葉でも、冗談に受け取れねーなこの状況だと)
それから大河は視界が真っ黒に覆われた状態で、何処を歩いているのかもわからない中歩き続けた。
(何で又しても誤認で連行されにゃならんのだ。しかも何度も1日連続で珍しい体験ばかりである意味ラッキーだな。クソが!)
道中門を潜って街に入ったがマントから全く光が漏れる事なく依然として暗闇の中前を進まなければならなかったが、人々のヒソヒソ声が聞こえてきたり、聞いたことのない大きな機械音を耳にしたりなど見えない分余計に聞こえてしまうい恐怖が大河の心を覆っていった。
(ありないけどマジで三途の川を自ら歩いてしまっている感じがする)
どんどん精神的に追い込まれそうになった大河は一先ず考えるのをやめて見えない瞼を閉じ、何も考えず見知らぬ道を歩み続けながら削れ切った精神の回復を図った。
これから行き着く先が自分が想像だにしなかった場所に連行されている事など今の大河には知る由もなかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ブラフマン~疑似転生~
臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。
しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。
あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。
死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。
二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。
一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。
漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。
彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。
――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。
意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。
「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。
~魔王の近況~
〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。
幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。
——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる