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第1章 異世界転生編

38話 自然な罵倒が後を絶ちません

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「それより先程妙な事を仰っていましたが、『その理屈で言えばお互い様』とはどういう意味ですか?」

「いや、そのまんま意味だけど」

「すいませんが私は貴方と違って普通の人間なので特殊な感性やら電波を読み取ることには長けていないません。なので常人が理解できる説明をお願いします」

「自分の考えが追い付かないからって勝手に人を人外にカテゴライズするな」

「そうですね…私が間違っていました。すいません」

 予想外にもクラリスが軽く頭を下げながら謝罪した事で大河は拍子抜けした。

「いや、分かってくれれば別に…」

「そもそも常人から外れまくった認識や考えの持ち主に普通の人間が理解可能な説明を求めるという超高等レベルに匹敵してまう持ち合わせていないであろう技術を要求してしまった私が間違いでした」

「全然わかってねーじゃねーか!」

「確かにわかっていませんでしたね。私の頭脳がいくら優れているからといっても貴方のようなタイプは底が全く知れず理解できないのだと自覚しておくべきでしたね。ごめんなさい」

(馬鹿にした感じとか悪気があってとかじゃなくて本気で俺を下に見ながら謝罪してく余計に腹立つ)

「あれは俺らと同じでお前ら女性側だって単独で子供を宿せるわけじゃないんだから同じだろうって意味で言ったんだよ」

「は?貴方はそれを本気言っているのですか?」

「え?普通に真面目に言ってるけど?」

「貴方は本当に底の底がしれませんね」

「お前…本当に馬鹿だったんだな。頭大丈夫か?」

 憐れみ以上に同情の目線を込めて言われたそのセリフは下手な罵倒の数々よりも大河の怒りメーターを溜めるものとなった。

(何たる屈辱!お前らにだけは言われたくないわそのセリフ!)

「まさかここまで一般知識が欠如しているとは思いませんでしたよ」

(何だこの言いようは?まさかこいつら…)

「なあお前ら、まさかその年になってコウノトリが赤ちゃんを運んでくるとか思ってるんじゃないだろうな?」

(年齢知ってるわけじゃないけど、少なくとも姉のほうは見た目からして俺と歳はそんなに離れてないだろし)

「姉上…やっぱりコイツ本格的にヤバい奴だ。鳥が赤子を運んでくるとかトチ狂ったこと口走りやがりましたよ」

「そうですね。これは私が想定していたよりも遥かに邪悪なものに侵食されしまっているようですね。ああ、可哀そうに」

「勝手に勘違いして憐れむな。今のはその…そういった間違った知識を吹き込む輩がいたからお前らもそれを本当の事と勘違いして認識してないか確かめただけだ」

「あん?どうやったら明らかな妄想めいたそんなデタラメな虚言を信じられるんだ?頭スカスカなのかそいつら」

「アア、ソウカモネ」

(まあ確かにこんなメルヘンみたいな話を信じ込めるのは幼少期子供だけだよな。でもそうなるとほかに考えうる可能性なんて…)

 その時大河の頭にある可能性がよぎった。

(いや、まさかな?)

 浮かんできた1つの可能性が彼の知る限りではありえないもので脳内はすぐ否定した。同時にそれはある意味あってはならない事でもあり、彼はそのわずかな可能性を考えると緊張や焦りで額からじんわりと汗が噴き出していた。

「なあ一応聞いておくがこの世界で女性は一人でも子供を宿すことができる…なんてことはないよな?」

 大河は本当に0.1%にも満たない可能性だとは思いつつ他にこれといった理由が浮かんでこなかった事と、馬鹿馬鹿しいと思いつつも脳裏に浮かんでからしつこい油汚れのようにこびり付いて離れない考えを真っ向から切り捨て拒絶するために得体のしれない恐怖に怯えながら恐る恐るといった感じで尋ねた。

「まったく、貴方の常識不足は底が知れませんね。何度目か数えきれませんがこの世界の常識というものを貴方に教えて差し上げます」

 罵倒されているというのにその時の大河には怒りや憎しみといった負の感情を感じる余裕するらなく、クラリスの言動や態度は彼の中のありえない考えの可能性を上昇させるとともに、比例して大河の恐怖心を増長させた。

「いいですか、女性が1人で子供を授かれるなんて当然の事じゃないですか」

 クラリスのさも当然の様に自信満々に口にする姿から恐らく嘘をついてるわけではないだろう事は理解するもあまりの衝撃の事実に大河は受け止めきれずにいた。
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