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シエル side ②
しおりを挟むシエル side ②
早朝。私はいつもと同じ時間に目を覚まし、洗面所で顔を洗いました。
オーレリアと一緒に飲んだお酒は当然残ってなんかいません。
ちなみに彼女は私のベッドでまだすやすやと寝息を立てています。
「幸せそうな顔してるわね。人を一人殺したって言うのに……」
魔物や魔族は何体も殺してきました。
ですが、私はまだ『人』を殺したことはありません。
他の英雄候補も同じです。
ですが、オーレリアだけが『何人もの人』を殺してします。
それは王の指示によって。ですが。
彼女が人を殺した時にはいつも私の部屋に来ます。
それはきっと『心の安寧』を保つためなんでしょうけど。
そして私は、オーレリアを起こさないように注意をしながら装備品を身につけていきます。
この戦いが人間軍の勝利で終われば戦争も終わります。
そのための策はエルランドが私たちに授けています。
これ以上親友が手を汚さなくてもいい世の中にする為に、私は剣を振るいましょう。
身支度を整えた私は部屋を出て、広間へと向かいました。
広間へとやって来た私は、既に集まっていた兵士の数に少しだけ驚いてしまいました。
『おはようございます!!シエル騎士団長!!』
騎士団副団長が私の元へとやって来て、朝の挨拶をしてきました。
「おはようございます。アルフォート。既にこれだけの数の兵士が集まっていたのですね」
『はい!!兵士の士気は最高です。人間軍を必ずや勝利に導いてみせましょう!、』
「ふふふ。頼もしいことです。それでは私の方から労いの言葉をかけるとしましょう」
『ありがとうございます!!兵士たちも喜ぶことでしょう!!』
私がゆっくりと壇上へと上ると、兵士たちの視線が私へと向けられました。
そして、全員の意識がこちらへと向いた頃。私は話を始めました。
「皆さんおはようございます。朝早くからこうして全員が集まっていること。士気の高さに私は感動しています」
私がそう言葉を発すると、兵士立ちから一際大きな声が上がりました。
「劣勢だった我が軍でしたが、知将エルランド・ハーウッドの力もあり、あと一歩で勝利する所までやって来ました。これは皆さんの力あっての事です。本当に感謝をしています」
エルランド・ハーウッドは既に死んでいる。
ですが、このことを知るものは王とオーレリア。それと私だけです。
彼らの士気を落とさないためにも、彼が既に死んでいることは伏せておくべきでしょう。
そして、私は腰に携えた『聖剣 エクスカリバー』を抜き放ち、天へと掲げました。
「今日の戦闘に勝利して戦争を終わらせましょう!!」
私がそう言い放つと、兵士たちは一際大きな雄叫びでそれに応えました。
その声を聞いた私は、満足感と胸に抱きながら壇上を後にしました。
『お疲れ様でした。シエル騎士団長』
「ふふふ。この程度のことならお易い御用ですよ」
壇上を降りた私を、副団長が労ってくれました。
まぁ、こうして神輿を担ぐのも私の役目ですからね。
「では、このまま地上戦の中継地点へと向かいましょう。そこで休息と食事をとってから戦闘開始です」
『了解しました!!』
私の言葉を聞いた副団長は、兵士に向けて指示を飛ばしていきました。
その様子を見ながら、私は小さく呟きました。
「……空戦部隊で攻め込む。と言うブラフを魔族側は信じていると言う話です。つまり、敵の居ない場所を攻め込むことになりますね。これまで以上に楽な戦いになりそうですね」
兵士たちの士気の低下だけは注意しなければなりませんね。
私はそんなことを考えながら、兵士たちと共に地上戦の中継地点へと足を運びました。
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