7 / 12
第四話 ~居間ではレティシアの食生活に驚愕をした~
しおりを挟む第四話
寝室を後にし、居間へと向かって歩いていると、リディアの姿が目に映った。
なるほど。彼女も同じような時間に目を覚ましたようだな。
リディアの身体を愉しんだあとは玉座の間に置き去りにしていたからな。多少扱いが雑だったことは反省しなければならないな。
「おはようございます。魔王様。そしてエルランド様」
リディアはそう言って俺たち二人に、恭しく頭を下げた。
どうやら『洗脳』と『隷属』の効果は一晩経っても変わらないようだな。
「エルランド様の持つ固有能力による効果は半永久的に続きます」
「半永久的か……つまり『解除される条件』という物があるんだな」
俺のその言葉にレティシアは首を縦に振って肯定した。
「はい。条件は二つあります。一つ目は『エルランド様が洗脳や隷属を解除すると決めた時』です」
「なるほどな。俺の任意でそれは出来るんだな。もう一つは恐らくだが、俺が死んだ時……だな」
「はい。エルランド様のおっしゃる通りです。先代魔王に洗脳と隷属をされていた魔族は、先代亡き後それから解放されました」
「ふむ。まぁそれによって魔界は群雄割拠の時代に戻ったとも聞いているな」
「はい。私が統治をするまでは戦乱の時代が続いておりましたからね。そして先代とは違うやり方で私は魔界を統治しました」
先代とは違うやり方。レティシアの手腕について興味が湧いてきたな。
俺のその心を読んだのか。彼女はふわりと微笑みを浮かべながら言葉を返した。
「ふふふ。私がどのようにして魔界を統治したかは、食事をしながら話しますよ」
「なるほどな。それは楽しみだ」
こうして話をしていると、俺たちは居間へとやって来た。
ガラス製の大きめなテーブルに、椅子が四つ備え付けられている。
俺が椅子の前に行くと、何処から現れたのか執事服に身を包んだ初老の男性が椅子を引いた。
「おはようございます。エルランド様。どうぞこちらに」
「ふむ。貴様……出来るな」
「……いえ、私ごときの老木には過分なお言葉でございます」
俺とのやり取りを見ていたレティシアが、微笑みながら彼の話をしてきた。
「ふふふ。ローレンスは今は執事をしておりますが、先代が魔王の時は四天王の筆頭を勤めておりましたからね」
「魔王様。昔の話でございます」
「なるほどな。だが、ローレンス。隠居を決め込んでいるようだが、鍛錬は続けているようだな?」
俺がローレンスにそう問い掛けると、彼の目がスっと細くなった。
「……体型維持程度でございますよ」
「くくく……まぁいい。そういうことにしておこうか」
そんなやり取りをしていると、ローレンスは一礼をした後台所方へと戻って行った。
そして、程なくして朝食を持ってテーブルの方へと戻って来た。
ローレンスが俺に持ってきたのは『コーンスープ』と『フランスパン』に『ミルク』だった。
「お待たせしました。『エルランド様には』朝は簡単なものを用意させて頂きました」
「朝からがっつりとしたものを食べる趣味は無い。俺はそれで構わな…………は?」
ローレンスの隣に居た女性の給仕者がレティシアに持ってきたのは『肉厚のステーキ』に『赤ワイン』だった。
「……レティシア。それは何だ?」
「え?これは魔牛のヒレステーキですが」
俺の言葉にキョトンとした表情で言葉を返すレティシア。
「い、いや……そういう意味では無いのだが……」
朝っぱらから肉厚のステーキ。見てるだけで胃が持たれそうだ……
「ふふふ。もしよろしければひと口いかがですか?」
俺の視線を『肉欲しさ』と思ったのか。レティシアは微笑みを浮かべながらひと口大のステーキを差し出してきた。
ここで断るのも悪いだろう。俺は口を開いて肉を受け入れることにした。
「あ、あぁ……ではいただこうか……」
「魔牛のヒレは噛めば噛むほど肉の味が楽しめる高級部位です。これ程の味は人間界では拝めないと自負しております」
誇らしげにそう語るレティシアの言葉の通り。真牛のヒレ肉は噛めば噛むほど旨みが溢れてきた。
……朝で無ければもっと味わえただろうに。
「う、上手いな。だが俺はもうこれで十分だ」
「ふふふ。そうですか。では残りは私がいただきますね」
レティシアはそう言うとナイフとフォークでステーキを美味しそうに食べて行った。
「ローレンス。魔族と言うのは朝からこうなのか?」
「いえ。魔王様が特別なだけでございます」
隣に控えていたローレンスに問い掛けると、そのような答えが返ってきた。
そうか。この食生活はレティシアだけのものか。
だが、この肉は確かに美味かった。
今ではなく夜なら更に美味しく食べられるだろう。
「夜は俺もこの魔牛のヒレステーキを楽しもうと思う。用意しておけ」
「かしこまりました。腕によりをかけてお作りします」
そんなやり取りをしながら、俺とレティシアは朝食の時間を過ごしていった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する
フルーツパフェ
ファンタジー
これは理不尽にパーティーを追放された勇者が新天地で活躍する物語ではない。
自分をパーティーから追い出した仲間がエルフの美女から、単に復讐の矛先を種族全体に向けただけのこと。
この世のエルフの女を全て討伐してやるために、俺はエルフの里を目指し続けた。
歪んだ男の復讐劇と、虐げられるエルフの美女達のあられもない姿が満載のマニアックファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる