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第四話 ~居間ではレティシアの食生活に驚愕をした~

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 第四話


 寝室を後にし、居間へと向かって歩いていると、リディアの姿が目に映った。

 なるほど。彼女も同じような時間に目を覚ましたようだな。

 リディアの身体を愉しんだあとは玉座の間に置き去りにしていたからな。多少扱いが雑だったことは反省しなければならないな。

「おはようございます。魔王様。そしてエルランド様」

 リディアはそう言って俺たち二人に、恭しく頭を下げた。
 どうやら『洗脳』と『隷属』の効果は一晩経っても変わらないようだな。

「エルランド様の持つ固有能力による効果は半永久的に続きます」
「半永久的か……つまり『解除される条件』という物があるんだな」

 俺のその言葉にレティシアは首を縦に振って肯定した。

「はい。条件は二つあります。一つ目は『エルランド様が洗脳や隷属を解除すると決めた時』です」
「なるほどな。俺の任意でそれは出来るんだな。もう一つは恐らくだが、俺が死んだ時……だな」
「はい。エルランド様のおっしゃる通りです。先代魔王に洗脳と隷属をされていた魔族は、先代亡き後それから解放されました」
「ふむ。まぁそれによって魔界は群雄割拠の時代に戻ったとも聞いているな」
「はい。私が統治をするまでは戦乱の時代が続いておりましたからね。そして先代とは違うやり方で私は魔界を統治しました」

 先代とは違うやり方。レティシアの手腕について興味が湧いてきたな。

 俺のその心を読んだのか。彼女はふわりと微笑みを浮かべながら言葉を返した。

「ふふふ。私がどのようにして魔界を統治したかは、食事をしながら話しますよ」
「なるほどな。それは楽しみだ」

 こうして話をしていると、俺たちは居間へとやって来た。

 ガラス製の大きめなテーブルに、椅子が四つ備え付けられている。

 俺が椅子の前に行くと、何処から現れたのか執事服に身を包んだ初老の男性が椅子を引いた。

「おはようございます。エルランド様。どうぞこちらに」
「ふむ。貴様……出来るな」
「……いえ、私ごときの老木には過分なお言葉でございます」

 俺とのやり取りを見ていたレティシアが、微笑みながら彼の話をしてきた。

「ふふふ。ローレンスは今は執事をしておりますが、先代が魔王の時は四天王の筆頭を勤めておりましたからね」
「魔王様。昔の話でございます」
「なるほどな。だが、ローレンス。隠居を決め込んでいるようだが、鍛錬は続けているようだな?」

 俺がローレンスにそう問い掛けると、彼の目がスっと細くなった。

「……体型維持程度でございますよ」
「くくく……まぁいい。そういうことにしておこうか」

 そんなやり取りをしていると、ローレンスは一礼をした後台所方へと戻って行った。
 そして、程なくして朝食を持ってテーブルの方へと戻って来た。

 ローレンスが俺に持ってきたのは『コーンスープ』と『フランスパン』に『ミルク』だった。

「お待たせしました。『エルランド様には』朝は簡単なものを用意させて頂きました」
「朝からがっつりとしたものを食べる趣味は無い。俺はそれで構わな…………は?」

 ローレンスの隣に居た女性の給仕者がレティシアに持ってきたのは『肉厚のステーキ』に『赤ワイン』だった。

「……レティシア。それは何だ?」
「え?これは魔牛のヒレステーキですが」

 俺の言葉にキョトンとした表情で言葉を返すレティシア。

「い、いや……そういう意味では無いのだが……」

 朝っぱらから肉厚のステーキ。見てるだけで胃が持たれそうだ……

「ふふふ。もしよろしければひと口いかがですか?」

 俺の視線を『肉欲しさ』と思ったのか。レティシアは微笑みを浮かべながらひと口大のステーキを差し出してきた。
 ここで断るのも悪いだろう。俺は口を開いて肉を受け入れることにした。

「あ、あぁ……ではいただこうか……」
「魔牛のヒレは噛めば噛むほど肉の味が楽しめる高級部位です。これ程の味は人間界では拝めないと自負しております」

 誇らしげにそう語るレティシアの言葉の通り。真牛のヒレ肉は噛めば噛むほど旨みが溢れてきた。
 ……朝で無ければもっと味わえただろうに。

「う、上手いな。だが俺はもうこれで十分だ」
「ふふふ。そうですか。では残りは私がいただきますね」

 レティシアはそう言うとナイフとフォークでステーキを美味しそうに食べて行った。

「ローレンス。魔族と言うのは朝からこうなのか?」
「いえ。魔王様が特別なだけでございます」

 隣に控えていたローレンスに問い掛けると、そのような答えが返ってきた。
 そうか。この食生活はレティシアだけのものか。

 だが、この肉は確かに美味かった。
 今ではなく夜なら更に美味しく食べられるだろう。

「夜は俺もこの魔牛のヒレステーキを楽しもうと思う。用意しておけ」
「かしこまりました。腕によりをかけてお作りします」

 そんなやり取りをしながら、俺とレティシアは朝食の時間を過ごしていった。
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