4 / 12
レティシア side ①
しおりを挟むレティシア side ①
『んぅ……エルランドさまぁ……もっと……もっとしてください……あぁ……』
『くくく……どうしたリディア……先程までとは打って変わって従順じゃないか……』
玉座の間を後にした私の耳に、中で行われている情事による声が聞こえてきました。
愉悦に震えるエルランド様の声と、快楽に溺れるリディアの嬌声が混じりあっています。
「ふふふ。楽しんでいただけているようで良かったです」
『エルランド・ハーウッドの魂を先代魔王の身体に転生させる』
このことを話せば、彼に一番強い恨みを持っているリディアがあの場にやってくるのは想定内の出来事。
エルランド様の手にした『固有能力』の説明をするには打って付けと言えたでしょう。
あとは彼女を『前払いの報酬』として彼に差し出せば良い話です。
「お疲れ様でした魔王様。無事にエルランド・ハーウッドの魂を転生させることが出来ましたね」
「ふふふ。これも彼を殺してくれた人間界の王のお陰です」
私の背後から聞こえてきた声にそう言葉を返しました。
「あの男も馬鹿なことをしたものですね。エルランドが居ない人間軍など遅るるに足りません」
「いえ……まだ油断は出来ませんよルーシー。人間軍にはまだ『英雄候補』と呼ばれる者が四名居ますからね」
私がそう言って後ろを振り向くと『密偵』を任せているルーシー・エクシリアの姿がありました。
「英雄候補……そうですね。彼女たちは確かに脅威です。ですが、こちらにもエルランド・ハーウッドを参謀として迎え入れました。彼がその知略を発揮するのならば、やはり部はこちらにあるでしょう」
「ふふふ。そうですね。リディアの身体も満足していただけているようですし。早速明日から彼には働いていただくことにしましょうか」
「はい。英雄候補の一人 シエル・アルフォートが明日の戦場に顔を出すと調べが着いております。恐らくですが空戦部隊を引き連れて……」
密偵のルーシーが調べてきた情報を、私にそう告げていた時でした。
「いや違うぞ。シエルは空戦部隊では無く、地上戦部隊を引き連れてやって来る」
「エルランド様!!??」
「……お言葉ですがエルランド様。何故そのようにお考えが聞いても?」
突然背後から聞こえてきた彼の声に、私とルーシーは驚きを隠せませんでした。
そして、彼の言葉に対してルーシーが眉をひそめながら問い返していました。
それもそうでしょう。彼女にも密偵としての誇りと自負があります。
自身が調べて来たことに対して、こうして正面から否定をされれば理由を知りたくもなるでしょう。
「ルーシーがこちらを探っているのは俺も把握していた。そしてこれまでずっと『空戦魔法部隊』での攻撃を繰り返してきていたことも俺の案だ」
「でしょうね。我が魔王軍の弱点は『空戦』にあります。先代魔王は自身の翼で空戦を得意としていました。故に魔王軍では、空の戦力よりも地上の戦力を高める方向へと向かっていました」
「そして、先代魔王が死んだ後、空戦部隊の戦力拡充が行われていない現状をついて俺が攻撃を仕掛けていたんだ」
エルランド様の言っていることは真実です。
彼が参謀に加わってから、地上戦を囮にして空戦部隊で奇襲をかける戦術が多く見られるようになりました。
ですが、それも昨日までの話。
既に翼を持つ魔族を多数集結させて、人間軍の空戦に備えるように配備をしています。
身体能力では人間を魔族が圧倒しています。
同数ならばこちらが圧勝するのは道理です。
「くくく……空戦は囮だ。これまで散々空戦を意識してきたからな。明日の作戦では地上戦で一気に魔王城を攻め落とすことになっている」
「なぁ!!??」
彼の言葉を聞いて、ルーシーの驚愕した声が廊下に響きました。
き、気持ちはわかります。私も同じですから……
「さ、作戦会議も空戦を主体に行うと言っていたでは無いですか!!」
「ははは!!やはり見ていたな。確かにあの場で俺が主要部隊の隊長に『話していた』内容は空戦部隊で魔王軍を攻め込むと言うものだ」
「……ま、まさか」
「くくく……ようやく理解したか。俺が配っていた資料が『暗号化された地上戦での魔王軍への進軍作戦の概要』なんだよ。つまり、俺がぺちゃくちゃと話していたことは全て嘘。配っていた資料こそ本当の作戦だったという話だ」
「そ、そこまでしていたのですか……」
ルーシーが身体と声を震わせながらそう言うと、エルランド様は彼女の頭に右手を乗せて軽く撫でていました。
う、羨ましい!!私も撫でられたいのに!!
「魔王軍の優秀な密偵がこちらを探っていたからこそ、役に立つ作戦だ。お前がそうして居なければ全く意味をなさない行為でもある。これはお前の『優秀さの証明』でもある」
「あ、ありがとう……ございます……エルランドさま……」
「くくく。これからは味方同士だ。宜しく頼むぞルーシー・エクシリア」
「は、はい!!」
顔を真っ赤に染めてルーシーは嬉しそうに首を縦に振りました。
洗脳の力なんか使わなくても、彼女が『堕ちた』ことは明白ですね。
「そ、それでは失礼します!!」
彼女はそう言うと私達の前から姿を消しました。
「ふふふ。まさかこんなに早く貴方の力を借りることになるとは思いませんでした」
私は隣に居るエルランド様にそう話を振りました。
「この程度のことは事前に持ってた知識を話しただけのことだ。簡単な『手土産』だと思ってくれて構わんさ」
「ふふふ。上質な手土産に心が震えてしまいます」
私はそう言葉を返したあと、彼の身体に身を寄せました。
「……リディアでは『足りなかった』のではありませんか?」
「……くくく。なんだ、わかっていたのか」
「えぇ。先代も『一人では』全く足りてないご様子でしたので」
私がそう言うと、エルランド様は少し乱暴に身体を抱き締めてくれました。
そして耳元に唇を寄せて言いました。
「レティシアの身体を愉しませてもらおうか。今夜は寝れると思うなよ?」
「ふふふ。それは楽しみです。私も『好意を寄せていた殿方』に抱かれるのは本望です」
「ほう……初めて聞く言葉だな」
「ふふふ。私……優秀な男性が好みですからね。貴方を手に入れてくて仕方がなかったのでですよ?」
私が軽く流し目を作りながらそう言うと、彼の唇がニヤリと吊り上がりました。
「ははは。いじらしいことを言うじゃないか。たっぷり可愛がってやる」
「はい。よろしくお願いいたします。エルランド・ハーウッド様」
こうして、私はお慕いしていた殿方に『初めて』を堪能していただくことが出来ました。
ふふふ。とてもとても……幸せな時間でしたね。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる