上 下
105 / 292
第2章

第一話 ⑪ ~放課後~ 朱里視点

しおりを挟む
 第一話  ⑪



 朱里視点



「ゆーこ!!ディフェンスー!!」
「おーけー!!」

 私は体育館の端で、みんなの声を聴きながら上半身の筋トレと、体幹のトレーニングをしていた。

 き、きつい……

 い、いや。わかるよ。足を怪我したら下半身は使えないから、その分上半身と普段は重点的には鍛えない体幹を苛めるのはトレーニングの基本。
 だけど、ホントきつい……っ!!

「ほらほら朱里!!サボんないの!!」

 と、部長からの激が飛んでくる。

「は、はい!!」

 くぅ!!これなら普段の走り込みとかミニゲームとかの方が100倍楽だよぉ!!



 と、普段は鍛えない部分を重点的に苛め抜いた私は、部活の時間が終わったら安堵のため息を吐いていた。



「つ、疲れた……」
「あはは。お疲れ様朱里」

 ぐったりとしているを、ゆーこちゃんが労ってくれる。
 すると、そんな私に部員のみんなが集まってきた。

「ねぇねぇ朱里!!朝のすごい話題になってるよね!!」
「通学路のど真ん中でチューするとかやるじゃん!!」
「な、なんで知ってるの!!??」

 あの時間はみんな朝練で居なかったのに、なんで知ってるの!?

「これこれ!!」
「とぅいったーでバズってるよ!!」
「う、嘘でしょ!?」

 そう言って見せてきた動画を見て私は愕然とする。

『通学路の中心で愛を叫ぶ』

 とか言うタイトルで、悠斗と私のキスシーンから、私のビンタまで動画で流れてた。

「ご、五万いいねと三万リツイート……」

 私は顔を真っ赤にしながら俯く。

「コメント見る?」
「見ない……」

 そんな勇気ないよ……

「まぁでも、昨日みたいに黒瀬さんが桐崎くんと付き合ってるーみたいなのよりはマシじゃん?」
「そ、そうだけど……うぅ……」
「でもいーなー。私もここまで愛してくれる彼氏欲しいなぁ」

 確かに、ここまでされたら悠斗の愛を疑うとかそう言うのは無い。
 でもやっぱり、恥ずかしいのは恥ずかしい!!

「とりあえず。悠斗にはお詫びとして、ケーキバイキングを奢ってもらおう」

 美味しいケーキ屋さんを見つけてたけど、値段が結構高かったんだよね。
 今度のデートで連れてってもらおう!!

「あ、あそこのケーキ屋さん?美味しそうだよね!!行ったら感想教えてよ」
「うん!!悠斗に全額払わせてやるんだから」
「あはは。朱里が激おこだ」

 笑うゆーこちゃん。
 私も笑ってる。

 昨日とは違って明るい空気が更衣室の中に流れていた。

 こういう空気になれたんなら、悠斗のやり過ぎな行為もすこしは許してあげようかな。





 なんて思ってたけど、




 この一件はものすごい所まで波及していた。


 お母さんに電話して、学校まで迎えに来てもらい、家へと帰る。
 お母さんには、いろいろとあったけど、学校では上手くいったよ。

 と話していた。

 しかし、事件は夕飯を食べている時のテレビのニュースで起きた……

 私は焼き魚の骨を取りながらとりあえずテレビに映してあるだけのニュースを見ていた。

『今日のバズ動画』

 と言うタイトルでニュースコーナーが始まった。

 な、なんか……嫌な予感がする。

『今日のバズ動画のコーナーです。このコーナーでは視聴者がとぅいったーに投稿した動画を紹介するコーナーです』

 …………。

『本日のバズ動画は。こちらです』

『通学路の中心で愛を叫ぶ』

「ああああああああぁぁぁ!!!!!!」
「ど、どうしたの!!??朱里!!!!」
「いきなりそんな大声出してどうした?」

 怪訝な顔をするお母さんとお父さん。

「消して!!今すぐテレビ消してぇ!!」

 私はリモコンを探すが、時すでに……

「あら?悠斗くんじゃない」
「ほう。これは今朝のことだね。頬に紅葉がある」

 微笑ましそうにテレビを見る二人

「ああああああああぁぁぁ…………」

 私は頭を抱える。




『俺は!!二年一組の桐崎悠斗は!!二年一組の藤崎朱里を!!世界で一番!!愛してまーす!!!!!!』

 チュッ!!

『わあああああ!!!!』

『ゆ、悠斗のバカぁ!!!!』

 バシーン!!



 今朝の一幕がテレビに……全国放映……


「あらあら。若いっていいわね」
「ふふふ。桐崎くんもなかなかやるなぁ」

 と、概ね好意的な両親。

『高校生の二人ですね』
『いいですねぇ。私もこう言う青春を送りたかったです』
『彼氏さん。かなりガチで叩かれてましたね』
『いやー彼女さんの気持ちも分かりますよ?』
『まぁこうして全国に放送されてしまったわけですが、彼氏さんがまた叩かれないことを願いましょう』

 な、な、な、……

「だってさ。朱里。もう悠斗くんを叩いちゃダメよ?」
「まぁ、思わぬ形で交際が広まってしまったな」

 と、言うお父さん。

「こんな形は想像してなかったよ……」

 私はガックリと肩を落としながら、残りの焼き魚を摘んで食べた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる

まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。 それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。 ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。 焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

処理中です...