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第1章

第九話 ③ ~波乱の一日・早朝~ 朱里視点

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 第九話  ③



 朱里視点


「朱里ナイッシュー!!」
「オッケーゆーこちゃん!!」

 早朝。悠斗くんと別れたあと、バスケ部の朝練をしていた。

 少し身体が重いかなぁ……なんて思ってたけど、部活になればいつものように身体は動いてくれた。

「朱里ー。調子戻ったみたいだね」

 ゆーこちゃんが私にそう言って笑いかけてくれる。

「うん。昨日は水族館でデートだったし。ちょっとアクシデントがあったけど、結果的には悠斗くんをお父さんとお母さんに紹介出来たよ」

 取り敢えず、交際は認めて貰えたよ。

 とゆーこちゃんに昨日のことを報告する。

「へぇ、良かったじゃん!!朱里のお父さん、結構過保護だと思ってたけど、いーんちょー良くやったね」
「えへへー。お父さんとお母さんの前で話してる悠斗くん。めちゃくちゃカッコよかったよ」

 と、私が惚気けると、

「はいはいごちそーさまー」

 とゆーこちゃんが呆れたように言った。

 私はそんなゆーこちゃんに聞く。

「ゆーこちゃんは武藤くんのことどう思ってるの?」
「……えぇ!!??」

 お?この反応……あれですな!?

「むむ……ゆーこちゃんその反応は……」
「……うーん。バレバレ?」

 と、少し顔を赤く染めるゆーこちゃん。
 可愛いなー

「こないだみんなで行ったゲームセンターで、いい感じかなぁって思ったの」
「そうか……まぁ、アイツといると楽しいな。とか、もっと一緒に居たいな。とか、声援貰えたら頑張れそうだなぁ。とか、そう思うようになってる」

 恋じゃん!!

 とは言わない。

「その気持ちは大事にしていこうぜー。ゆーこちゃん!!」
「あはは。まぁ、今すぐどうこうってより、今はこの関係がいいなあって思ってるから」



 そんな話をしてたら、朝練の時間が終わった。



 私は更衣室に向かい、着替えをする。

 すると、スマホがピカピカかなり光ってる。

 見てみると、RAINの通知が凄い数になっていた。

「……え?何この通知の数」

 見てみると、うちのクラスの女子が登録してるグループがすごいことになっている。

 私は着替えを中断して見てみると、

「……え、何で……」

「あ、朱里!!これ!!」

 ゆーこちゃんも同じようにスマホを見たらしく、その画面を私に見せてくる。

『たまたま今日早起きしちゃって、誰も居ない教室に一番乗り!!と思ったらすごいの見ちゃった!!』

 と彩ちゃんが写真付きでコメント

 そこには、早朝の教室で二人きりの状況で、

 悠斗くんの唇を人差し指で押える黒瀬さんと

 悠斗くんと一緒に読書をしている黒瀬さんと

 カメラ目線で方目を閉じてシーってやってる黒瀬さんの

 写真がアップされてた。

『あーあー。私結構桐崎くんのこと良いなって思ってて、フリーなら狙ってたんだけど、黒瀬さんといー感じなのかなー?』

 なんてコメント。

 あ、彩ちゃん……狙ってたんだ。

 その後のクラスメイトの女子の想像を込めたトークがすごい数になっていた。

 もう付き合ってる。

 秒読み段階。

 学年首席と次席だからお似合い。

 ……っ!!

 そんなワードが沢山見えた。

 てか、なにこれ。私が朝練してた時に教室でこんなことしてたの?
 ……私知らないよ……教えてもらってない……

「あのバカ……だから言ったのに……」

 ゆーこちゃんは頭を抱えてる。
 そして、私に言ってくる。

「朱里。落ち着いて聞いてね?」
「……これで落ち着いてられたらどんなに良かっただろうね。でも、ゆーこちゃんが居てくれて良かったよ。……私一人だったら、何してたかわかんない」

 大丈夫。私は冷静だ。

「多分。これは黒瀬さんの確信犯」
「うん。私もそう思う」
「じゃなきゃ、カメラ目線でこんなことしない」

 そっか。やっぱり黒瀬さんも悠斗くんのこと好きになっちゃったんだね。

「多分。教室はすごいことになってると思う」
「うん。だって『聖女様』の初めてのスキャンダルみたいなものだからね」
「取り敢えず、あのバカにはこれ以上何か変なことしないように釘刺しとく」

 ゆーこちゃん。かなり怒ってる。
 多分、悠斗くんに何か警告みたいなことを言ってたんだろうな。

「私は感情的に悠斗くんを責めないようにする。この事で心を痛めるのは悠斗くんも同じだと思うから」
「朱里は……優しいね」
「えへへ、本当は泣きたいくらいなんだけどね。泣いたって解決しないし。それに今必要なのは、絶対に悠斗くんを信じることだと思うから」
「……そうだね」

 そんなゆーこちゃんに、私は言う。

「ほら、ゆーこちゃん!!そろそろ着替えよ。汗が冷えて風邪引いちゃうよ!!」

 そう言うと私は着替えを手にす……

「あ……」

 ることが出来なかった。

 手からこぼれ落ちる制服……

「やだ、手が滑っちゃったかな……あはは」

 私の手から落ちていった制服が、まるで悠斗くんのように見えてしまって、私はすごく、嫌だった。



 悠斗くん……
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