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第2章 前編
第十八話 ~いろいろあったけど、とりあえずお昼の放送は成功させることが出来ました~
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第十八話
四時間目が終わるチャイムが鳴り響く。
それをきっかけに、俺は永久さんに声をかけた。
「よし。じゃあ放送室に行こうか」
「はい!!」
「行ってらっしゃい二人とも!!食堂の様子は私と星くんで逐一連絡するからね!!」
「うん。よろしくお願いします」
席から立ち上がった俺と永久さんに、桐崎さんがそう話した。
これは彼女……いや、お兄さんの桐崎先輩のアイディアだそうだ。
去年の桐崎先輩も同じように、食堂からその様子をメッセージアプリで報告を受けていたらしい。
なるほど。これは画期的なアイディアだ。と感心した。
良いものは盗ませてもらう。そのスタンスで俺たちもやらせてもらうことにした。
「放送室に二人きりだからってイチャイチャしてるんじゃないわよ」
「……凛音」
「ふふふ。そうですね。全校生徒に聞こえてしまいますから、自重しますよ?」
「まぁ、食堂で桐崎さんたちとご飯を食べながら、あんたたちの放送を聞いててあげるわよ。噛んだら盛大に笑ってやるわ」
「あはは……」
「完璧にこなして南野さんの期待を裏切ってあげますね?」
なんてやり取りをして、俺たちは放送室と向かった。
『放送室』
放送室へと辿り着いた俺と永久さん。
コンコンと扉をノックしてから中に入る。
「生徒会庶務。桜井霧都です」
「生徒会会計。北島永久です」
部屋の中には三郷先輩が既にスタンバイしていた。
「こんにちは。二人とも。それじゃあ早速だけど放送のやり方を教えるね」
「「はい。よろしくお願いします」」
俺と永久さんは先輩に頭を下げる。
「まずはこれがボリューム。最大まで上げて使って欲しい。そして、最小にすると聞こえなくなる。最大か最小かこの二つの使い方になると思う」
「「はい」」
「これで終わりだよ。簡単でしょ?」
「そうですね」
俺がそう言うと、三郷さんは笑う。
「まぁ簡単だからこそ、放送のボリュームを入れたまま、内輪のネタを話しちゃったりの事故があるからね。そこだけは気をつけてね?」
「わ、わかりました」
そ、それだけは気をつけよう。
そして、俺と永久さんは所定の位置に座る。
「じゃあ二人とも、準備はいいかな?」
「「はい」」
「それじゃあ私が最初の挨拶をして、その後は君たちに繋ぐから、あとは自由にしてもらって構わないからね」
三郷先輩はそう言うと、マイクのボリュームを上げた。
『皆さんこんにちは!!お昼の時間を素敵に彩る放送部です!!さて、本日のお昼の放送は、放課後に開催される部活動予算会議について、生徒会の新入生二人に告知をしてもらいます』
『予算会議の内容だけでなく、生徒会の内情なども聞けるかも知れませんね』
『それでは、桜井霧都くん。北島永久さん。よろしくお願いします』
三郷先輩はそう言うと、ボリュームを下げた。
「じゃあ後はよろしくね。頑張って!!」
「「はい!!」」
そして、俺は機材のボリュームを最大にする。
「皆さんこんにちは。生徒会の庶務をしています。桜井霧都です。よろしくお願いします」
「皆さんこんにちは。生徒会の黒瀬先輩と共に会計を、そして隣の桜井霧都くんの交際相手をしております、北島永久と申します。よろしくお願いします」
…………。
大丈夫。きっとこういうことを言うと思っていたから驚きは無い。
『食堂ではおにぃが大爆笑してるよ……』
桐崎さんからそんなメッセージが飛んで来た。
「えーと。北島さん。自己紹介が済んだところで……」
「なんで名前で呼んでくれないんですか?北島さん。なんて呼び方は嫌です」
「……はい。すみません、永久さん……」
「ふふふ。ありがとうございます。それでは霧都くん。予算会議の説明をよろしくお願いします」
「はい」
と、とりあえずここからが本番だ……
「皆さんの知っての通り、本日の放課後には部活動予算会議があります。この予算会議では、どの部活にいくらの予算を振り分けるか。それを我々生徒会が主導となって各部の部長と共に決めていきます」
「これまではその様子を見ることは基本的に不可能でした。ですが、昨年度より桐崎生徒会長の案によって、オンラインでの動画配信をリアルタイムで行うことになりました」
「その様子は生徒会のホームページにある指定のURLから見ることが出来ます」
「ここまでは、朝のSHRで担任の先生から説明があったかと思います」
ここまで話したところで、スマホが震える。
『最初は騒然としてたけど、今はみんな聞く雰囲気になってるよ!!』
良かった。少しだけ手応えを感じられる。
「さて、部活動予算会議。ですので、部活動に所属していない人には関係が無い。そう思ってる生徒の方も居るかと思いますが、それは大きな間違いです」
「毎月500円。年間で6000円のお金を我々は全員収めています。全校生徒から集めたこのお金。約800万円の使い道を決めるのが予算会議です」
「帰宅部でも自分の収めたお金がきちんと運用されているのかを、しっかりと知る必要があると思います」
『みんなちゃんと聞いてるよ!!桜井くんの滑舌もきちんとしてるから聞き取りやすいよ!!』
よし。出足はやらかしたけど、何とか持ち直したかな?
「霧都くん。あとは出来高制と部活動支援金の説明をお願いします。貴方が体育の時間に特大ホームランを打って、生徒会の窓ガラスを割ってしまった時にお世話になった制度ですよね?」
「あはは……そ、そうだね」
そう。ここが桐崎さんが差し込んだ『ユーモア』の部分だ。
『みんな笑ってくれてるよ!!良かったね、桜井くん!!』
「えと。出来高制から説明します。まずは昨年度より予算には基本となる金額が設定されています」
「これは部員数×一万円。30人の野球部は基本予算が30万円です。出来高制はここに部活動で活躍すると追加で予算を支払う制度です。野球部の場合。試合に勝てば5000円が追加支給されます」
「この出来高制は、他の部活への貢献。も追加の対象になります。昨年度は手芸部が演劇部の衣装の作成を担った。などもあります」
『ちょっと新入生中心に理解度が低い気がするけど……首を傾げてる人が居るね。ピンと来てないのかも?』
理解度が低い。もう少しわかりやすい説明がいるかな?
「プロ野球選手の給与だと思って貰えるとわかりやすいかも知れません。年棒一億円 出来高5000万円。みたいなものだと思ってください。年棒の部分は基本の予算。出来高の部分は部活動の頑張りで増える部分です」
『理解度が上がったよ!!桜井くんのお手柄だね!!』
あはは、良かった。野球経験者ならではだと思うけど。
「ふふふ。流石は霧都くんです。惚れ直してしまいました」
「その……永久さん?マイク入ってるから……」
『みんな笑ってるよ!!夫婦漫才みたいって言われてる!!』
『凛音ちゃんはさっきから不機嫌そうだけど!!』
だろうね……
「次は部活動支援金についてです。これは特定の個人や部活動を我々生徒側が支援する制度です」
「支援については、基本は金銭になります。ですが、衛生面などの問題もありますが、食べ物とかの差し入れを持っていったりするのも喜ばれると思います」
「自分が体育の時間に生徒会の窓ガラスを割ってしまった時には、たくさんの支援金を頂き、ありがとうございます。こうした制度のおかげで助かりました」
「年上の女性の方々からたーーーーーくさん霧都くんへの支援がありましたからね。私も会計をしていましたから、良く知ってますよ?」
「あはは……」
俺は気を取り直して、話を続ける。
「出来高制で部活動のモチベーションを上げ、沢山活躍してもらう。その活動を生徒側も支援する。そうした好循環が野球部やサッカー部の全国大会出場にも繋がったと思います」
『そろそろ時間だね!!締めに入ろうか!!』
「さて、そろそろお開きの時間がやって来ました」
「早かったですね。私はもう少し霧都くんの勇姿を見ていたかったです」
「今日の放課後の予算会議。部活動に参加している人もしていない人も、たくさんの人に見ていただけるよう、ご協力をよろしくお願いします!!」
「それでは皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。この放送は桜井霧都と、」
「北島永久がお送りしました」
「「皆さん、さよなら!!」」
そう言って俺は機材のボリュームを最小にした。
『桜井くん、永久ちゃん、お疲れ様!!大成功だよ!!』
俺は桐崎さんからのそのメッセージを見て、ほっと一安心をしたのだった。
四時間目が終わるチャイムが鳴り響く。
それをきっかけに、俺は永久さんに声をかけた。
「よし。じゃあ放送室に行こうか」
「はい!!」
「行ってらっしゃい二人とも!!食堂の様子は私と星くんで逐一連絡するからね!!」
「うん。よろしくお願いします」
席から立ち上がった俺と永久さんに、桐崎さんがそう話した。
これは彼女……いや、お兄さんの桐崎先輩のアイディアだそうだ。
去年の桐崎先輩も同じように、食堂からその様子をメッセージアプリで報告を受けていたらしい。
なるほど。これは画期的なアイディアだ。と感心した。
良いものは盗ませてもらう。そのスタンスで俺たちもやらせてもらうことにした。
「放送室に二人きりだからってイチャイチャしてるんじゃないわよ」
「……凛音」
「ふふふ。そうですね。全校生徒に聞こえてしまいますから、自重しますよ?」
「まぁ、食堂で桐崎さんたちとご飯を食べながら、あんたたちの放送を聞いててあげるわよ。噛んだら盛大に笑ってやるわ」
「あはは……」
「完璧にこなして南野さんの期待を裏切ってあげますね?」
なんてやり取りをして、俺たちは放送室と向かった。
『放送室』
放送室へと辿り着いた俺と永久さん。
コンコンと扉をノックしてから中に入る。
「生徒会庶務。桜井霧都です」
「生徒会会計。北島永久です」
部屋の中には三郷先輩が既にスタンバイしていた。
「こんにちは。二人とも。それじゃあ早速だけど放送のやり方を教えるね」
「「はい。よろしくお願いします」」
俺と永久さんは先輩に頭を下げる。
「まずはこれがボリューム。最大まで上げて使って欲しい。そして、最小にすると聞こえなくなる。最大か最小かこの二つの使い方になると思う」
「「はい」」
「これで終わりだよ。簡単でしょ?」
「そうですね」
俺がそう言うと、三郷さんは笑う。
「まぁ簡単だからこそ、放送のボリュームを入れたまま、内輪のネタを話しちゃったりの事故があるからね。そこだけは気をつけてね?」
「わ、わかりました」
そ、それだけは気をつけよう。
そして、俺と永久さんは所定の位置に座る。
「じゃあ二人とも、準備はいいかな?」
「「はい」」
「それじゃあ私が最初の挨拶をして、その後は君たちに繋ぐから、あとは自由にしてもらって構わないからね」
三郷先輩はそう言うと、マイクのボリュームを上げた。
『皆さんこんにちは!!お昼の時間を素敵に彩る放送部です!!さて、本日のお昼の放送は、放課後に開催される部活動予算会議について、生徒会の新入生二人に告知をしてもらいます』
『予算会議の内容だけでなく、生徒会の内情なども聞けるかも知れませんね』
『それでは、桜井霧都くん。北島永久さん。よろしくお願いします』
三郷先輩はそう言うと、ボリュームを下げた。
「じゃあ後はよろしくね。頑張って!!」
「「はい!!」」
そして、俺は機材のボリュームを最大にする。
「皆さんこんにちは。生徒会の庶務をしています。桜井霧都です。よろしくお願いします」
「皆さんこんにちは。生徒会の黒瀬先輩と共に会計を、そして隣の桜井霧都くんの交際相手をしております、北島永久と申します。よろしくお願いします」
…………。
大丈夫。きっとこういうことを言うと思っていたから驚きは無い。
『食堂ではおにぃが大爆笑してるよ……』
桐崎さんからそんなメッセージが飛んで来た。
「えーと。北島さん。自己紹介が済んだところで……」
「なんで名前で呼んでくれないんですか?北島さん。なんて呼び方は嫌です」
「……はい。すみません、永久さん……」
「ふふふ。ありがとうございます。それでは霧都くん。予算会議の説明をよろしくお願いします」
「はい」
と、とりあえずここからが本番だ……
「皆さんの知っての通り、本日の放課後には部活動予算会議があります。この予算会議では、どの部活にいくらの予算を振り分けるか。それを我々生徒会が主導となって各部の部長と共に決めていきます」
「これまではその様子を見ることは基本的に不可能でした。ですが、昨年度より桐崎生徒会長の案によって、オンラインでの動画配信をリアルタイムで行うことになりました」
「その様子は生徒会のホームページにある指定のURLから見ることが出来ます」
「ここまでは、朝のSHRで担任の先生から説明があったかと思います」
ここまで話したところで、スマホが震える。
『最初は騒然としてたけど、今はみんな聞く雰囲気になってるよ!!』
良かった。少しだけ手応えを感じられる。
「さて、部活動予算会議。ですので、部活動に所属していない人には関係が無い。そう思ってる生徒の方も居るかと思いますが、それは大きな間違いです」
「毎月500円。年間で6000円のお金を我々は全員収めています。全校生徒から集めたこのお金。約800万円の使い道を決めるのが予算会議です」
「帰宅部でも自分の収めたお金がきちんと運用されているのかを、しっかりと知る必要があると思います」
『みんなちゃんと聞いてるよ!!桜井くんの滑舌もきちんとしてるから聞き取りやすいよ!!』
よし。出足はやらかしたけど、何とか持ち直したかな?
「霧都くん。あとは出来高制と部活動支援金の説明をお願いします。貴方が体育の時間に特大ホームランを打って、生徒会の窓ガラスを割ってしまった時にお世話になった制度ですよね?」
「あはは……そ、そうだね」
そう。ここが桐崎さんが差し込んだ『ユーモア』の部分だ。
『みんな笑ってくれてるよ!!良かったね、桜井くん!!』
「えと。出来高制から説明します。まずは昨年度より予算には基本となる金額が設定されています」
「これは部員数×一万円。30人の野球部は基本予算が30万円です。出来高制はここに部活動で活躍すると追加で予算を支払う制度です。野球部の場合。試合に勝てば5000円が追加支給されます」
「この出来高制は、他の部活への貢献。も追加の対象になります。昨年度は手芸部が演劇部の衣装の作成を担った。などもあります」
『ちょっと新入生中心に理解度が低い気がするけど……首を傾げてる人が居るね。ピンと来てないのかも?』
理解度が低い。もう少しわかりやすい説明がいるかな?
「プロ野球選手の給与だと思って貰えるとわかりやすいかも知れません。年棒一億円 出来高5000万円。みたいなものだと思ってください。年棒の部分は基本の予算。出来高の部分は部活動の頑張りで増える部分です」
『理解度が上がったよ!!桜井くんのお手柄だね!!』
あはは、良かった。野球経験者ならではだと思うけど。
「ふふふ。流石は霧都くんです。惚れ直してしまいました」
「その……永久さん?マイク入ってるから……」
『みんな笑ってるよ!!夫婦漫才みたいって言われてる!!』
『凛音ちゃんはさっきから不機嫌そうだけど!!』
だろうね……
「次は部活動支援金についてです。これは特定の個人や部活動を我々生徒側が支援する制度です」
「支援については、基本は金銭になります。ですが、衛生面などの問題もありますが、食べ物とかの差し入れを持っていったりするのも喜ばれると思います」
「自分が体育の時間に生徒会の窓ガラスを割ってしまった時には、たくさんの支援金を頂き、ありがとうございます。こうした制度のおかげで助かりました」
「年上の女性の方々からたーーーーーくさん霧都くんへの支援がありましたからね。私も会計をしていましたから、良く知ってますよ?」
「あはは……」
俺は気を取り直して、話を続ける。
「出来高制で部活動のモチベーションを上げ、沢山活躍してもらう。その活動を生徒側も支援する。そうした好循環が野球部やサッカー部の全国大会出場にも繋がったと思います」
『そろそろ時間だね!!締めに入ろうか!!』
「さて、そろそろお開きの時間がやって来ました」
「早かったですね。私はもう少し霧都くんの勇姿を見ていたかったです」
「今日の放課後の予算会議。部活動に参加している人もしていない人も、たくさんの人に見ていただけるよう、ご協力をよろしくお願いします!!」
「それでは皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。この放送は桜井霧都と、」
「北島永久がお送りしました」
「「皆さん、さよなら!!」」
そう言って俺は機材のボリュームを最小にした。
『桜井くん、永久ちゃん、お疲れ様!!大成功だよ!!』
俺は桐崎さんからのそのメッセージを見て、ほっと一安心をしたのだった。
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