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第2章
第二十八話 ~体育祭の実行委員になるために桜井さんと交渉をした件~
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第二十八話
「おはよう凛太郎、美凪さん」
「おっはよー!!凛太郎くんに優花ちゃん!!」
美凪と手を繋いで通学路を歩いていると、幸也と奏が後ろから自転車でやって来た。
「おはよう、幸也に奏」
「おはようございます!!成瀬さんに奏さん!!」
俺と美凪は振り向いて二人に朝の挨拶をする。
「今日も手を繋いで登校してるとは、随分と仲良くなってるよね」
「お前たちの仲の良さには負けるよ、幸也」
自転車を降りて、幸也と奏は俺たちと並んで歩いて行く。
これが俺たちの通学スタイルになってきている。
「はい、奏さん!!こちらが今日のお昼ごはんです!!」
「わーい、ありがとう優花ちゃん!!大好きだよ!!」
美凪がそう言って奏にサンドイッチの入った紙袋を渡すと、自転車を倒れないようにスタンドで停めたあと奏が彼女を抱きしめた。
「わわ!!いつもの事ですが奏さんの愛情表現は過激です!!」
「もー!!だって私は優花ちゃんのこと『大好き』なんだからね!!この位は普通だよ!!」
『好きな人』の俺にはしなかったスキンシップ。
奏は美凪に対してはかなり過激な『大好き』を表現している。
「ははは。もしかしたら俺のライバルは奏かも知れないな」
「り、隣人さん!?」
「あはは!!優花ちゃんが欲しければ私を倒して行けー!!」
なんてやり取りをしながら、俺たちは学校へと向かった。
『海皇高校』
校門を通り、学校の敷地の中に足を踏み入れる。
幸也と奏は自転車を置きに駐輪場へと向かった。
そして、自転車を置いた二人と共に教室へと向かう。
「今日の一時間目は数学でしたね。きちんと予習をしてきたので以前のような失態を演じることは無いと思います」
「あはは。まぁ予習をしてきた時も恥をかいた時はあったけどな」
「そういえばそろそろ体育祭の実行委員を決める時期だよな」
「そうだね。山野先生の感じだと、立候補しなかった場合はくじ引きになりそうだよね」
『人生で一番大切なことは運』
と言う山野先生。
この一ヶ月であの先生がくじ引きを使ったことかなりある。
体育祭の実行委員。確か男女二名ずつの四名体制だったな。
下手に運任せにするよりは、この四人で立候補してこなした方が良いような気がしてきたな。
「どうする?下手に運任せにするよりはこの四人でやる方が良いような気もするけど」
俺がそう話を振ると、美凪が一番に賛成を示した。
「はい。私は賛成です!!変な人と組み合わされるよりは仲の良いメンバーでやる方が私は良いと思ってます」
「私も賛成かな!!このメンバーでやれるなら楽しそうだし!!」
「俺も同じかな。あとはテストの点数では役に立てないからこういう所で役に立っておきたいし」
全員の賛成が得られた俺は、少しだけ安堵の息を吐いた。
「ならその方向で行こうか。確か実行委員を決めるのは明日のLHRの時間だったな」
「そうですね。六時間目のLHRの時間で決めることになってます」
「じゃあ少しだけ根回しをしておこうかな」
美凪の言葉に、俺は一つだけ残ってる『懸念事項』に思考を巡らせた。
『一年一組』
革靴から上履きに履き替えて、俺たち四人は教室へと向かう。
そして、教室の扉を開くとやはり彼女が一番に登校していた。
「おはようございます!!今日も仲良し四人組で登校ですね」
「おはよう、桜井さん。君も毎朝一番乗りだな」
俺が軽く笑いながら彼女に挨拶を返す。
桜井さんは生徒会長のお兄さんとその彼女さんと一緒に登校して来ている。
どうやらお兄さんは彼女さんと朝の時間を長く過ごすために早くに登校しているようだった。
彼女はその邪魔にならないように、こうして教室で時間を潰しているようだった。
『お兄さんの幸せのために生きてる』
『お兄さんと少しでも一緒に居たい』
彼女の行動指針がよくわかるな。
さて、明日の体育祭の実行委員の選出に向けて、少しだけ根回しをしておくかな。
俺はそう思いながら、桜井さんの元へと歩いていく。
「ちょっと君と話したいことがあってな。時間は平気か?」
俺が彼女にそう問いかけると、桜井さんはニヤリと笑みを浮かべた。
何となく俺がそう言ってくるのをわかっていたような雰囲気だ。
桜井さんは察しの良い人だ。俺の考えてる事はわかってるだろうな。
「あはは。海野くんからそう言ってくるとは思ってたよ。明日のLHRで行われる体育祭の実行委員の件だよね?」
やっぱりわかってたな。
なら話は早いな。
「ご名答。桜井さんのことだから、明日のLHRで体育祭の実行委員に立候補すると思ってる。理由としては……」
「体育祭の実行委員の会合での司会進行は、生徒会長であるお兄ちゃんがやることになってるから。私としては学校でお兄ちゃんに会える時間は逃したくないと思ってるから。だね」
彼女のその言葉に、俺は軽く苦笑いを浮かべる。
「……ははは、その通りだよ。なぁ、生徒会の庶務として君はお兄さんと一緒の時間を作ってるよな。どうかな、体育祭の実行委員に関しては俺たち四人に譲ってくれないか?」
彼女が立候補するとなると、女子三人でのくじ引きになる。
くじ運の強い美凪は勝ちそうな気がするけど、奏は昔から運が悪い。
こういう所で引き負けるような気がするからな。
俺のそのお願いに桜井さんは笑みを浮かべながら言葉を返してきた。
「うん。構わないよ」
「そうか。ありがとう、助かるよ」
俺がそう言って言葉を返すと、彼女は少しだけイジワルな表情をしながら言ってきた。
「まぁ、条件があるんだけどね」
「……だよな。俺に出来ることなら、君の要望に応える」
タダでは無いとは思っていた。
さて、どんな要求が出てくるかな?
「もうそろそろ部活動の予算会議があるのは知ってるよね?」
「あぁ知ってるぞ。俺は部活動には入ってないからそこまで興味は無いけどな」
予算会議の様子がオンラインで動画配信されるんだよな。
まぁ、暇なら見てみようかな。なんてレベルのイベントだ。
「予算会議の告知の案内は、二年前から生徒会役員が手渡しをすることになってるんだけどさ、ちょっと最近やることが多くて手が離せないんだよね」
「そうか。それでどっちを手伝えばいいんだ?」
俺がそう言葉を返すと、桜井さんは目を細くした。
「ふふふ。良いね、海野くん。私は察しの良い人は好きだよ」
「美凪と出会ってなかったら本気にしてたよ」
その言葉に桜井さんはケラケラと笑っていた。
「あはは!!いい切り返しだね。本当に、私がひとりっ子だったら惚れてたよ」
「最高級の褒め言葉をありがとう。でもこうして君と楽しく話をしてると、美凪がヤキモチを妬いてしまうからな。手早く頼むよ」
後ろから美凪の視線を痛いほどに感じてるんだからな。
「なるほどね。ちなみにお願いしたいのは『告知の案内を部長にする』そっちだね」
「……意外だな。告知の案内を部長にするのは、自分の顔見せと部長たちとのコミュニケーションのためかと思ったけど?」
「正直な話。顔見せはいらないレベルで私は知名度があるからね。生徒会長の妹って肩書きは伊達じゃないよ」
「そうか」
「それに、部長たちとのコミュニケーションより、お兄ちゃんとの時間を大切にしたいからね!!」
「ははは。君らしい考えだな」
俺はそう言った後に、言葉を続けた。
「告知の案内を部長にするのは、俺一人じゃなくても良いだろ?」
「あはは。構わないよ。愛しの彼女とラブラブ校舎デートでもしてきなよ」
桜井さんはそう言いながら手をパタパタと振っていた。
「じゃあ告知の案内の時期が来たら私から声を掛けるから」
「わかった。じゃあ明日はよろしく頼むよ」
俺はそう言って、彼女との会話を切り上げた。
……さて。明日のための根回しはこれでOKだな。
だけど、最大の問題が出来てしまったな……
俺は視線の先で頬を膨らませている美凪を見ながら、この後のことを考えて小さくため息をついた。
「おはよう凛太郎、美凪さん」
「おっはよー!!凛太郎くんに優花ちゃん!!」
美凪と手を繋いで通学路を歩いていると、幸也と奏が後ろから自転車でやって来た。
「おはよう、幸也に奏」
「おはようございます!!成瀬さんに奏さん!!」
俺と美凪は振り向いて二人に朝の挨拶をする。
「今日も手を繋いで登校してるとは、随分と仲良くなってるよね」
「お前たちの仲の良さには負けるよ、幸也」
自転車を降りて、幸也と奏は俺たちと並んで歩いて行く。
これが俺たちの通学スタイルになってきている。
「はい、奏さん!!こちらが今日のお昼ごはんです!!」
「わーい、ありがとう優花ちゃん!!大好きだよ!!」
美凪がそう言って奏にサンドイッチの入った紙袋を渡すと、自転車を倒れないようにスタンドで停めたあと奏が彼女を抱きしめた。
「わわ!!いつもの事ですが奏さんの愛情表現は過激です!!」
「もー!!だって私は優花ちゃんのこと『大好き』なんだからね!!この位は普通だよ!!」
『好きな人』の俺にはしなかったスキンシップ。
奏は美凪に対してはかなり過激な『大好き』を表現している。
「ははは。もしかしたら俺のライバルは奏かも知れないな」
「り、隣人さん!?」
「あはは!!優花ちゃんが欲しければ私を倒して行けー!!」
なんてやり取りをしながら、俺たちは学校へと向かった。
『海皇高校』
校門を通り、学校の敷地の中に足を踏み入れる。
幸也と奏は自転車を置きに駐輪場へと向かった。
そして、自転車を置いた二人と共に教室へと向かう。
「今日の一時間目は数学でしたね。きちんと予習をしてきたので以前のような失態を演じることは無いと思います」
「あはは。まぁ予習をしてきた時も恥をかいた時はあったけどな」
「そういえばそろそろ体育祭の実行委員を決める時期だよな」
「そうだね。山野先生の感じだと、立候補しなかった場合はくじ引きになりそうだよね」
『人生で一番大切なことは運』
と言う山野先生。
この一ヶ月であの先生がくじ引きを使ったことかなりある。
体育祭の実行委員。確か男女二名ずつの四名体制だったな。
下手に運任せにするよりは、この四人で立候補してこなした方が良いような気がしてきたな。
「どうする?下手に運任せにするよりはこの四人でやる方が良いような気もするけど」
俺がそう話を振ると、美凪が一番に賛成を示した。
「はい。私は賛成です!!変な人と組み合わされるよりは仲の良いメンバーでやる方が私は良いと思ってます」
「私も賛成かな!!このメンバーでやれるなら楽しそうだし!!」
「俺も同じかな。あとはテストの点数では役に立てないからこういう所で役に立っておきたいし」
全員の賛成が得られた俺は、少しだけ安堵の息を吐いた。
「ならその方向で行こうか。確か実行委員を決めるのは明日のLHRの時間だったな」
「そうですね。六時間目のLHRの時間で決めることになってます」
「じゃあ少しだけ根回しをしておこうかな」
美凪の言葉に、俺は一つだけ残ってる『懸念事項』に思考を巡らせた。
『一年一組』
革靴から上履きに履き替えて、俺たち四人は教室へと向かう。
そして、教室の扉を開くとやはり彼女が一番に登校していた。
「おはようございます!!今日も仲良し四人組で登校ですね」
「おはよう、桜井さん。君も毎朝一番乗りだな」
俺が軽く笑いながら彼女に挨拶を返す。
桜井さんは生徒会長のお兄さんとその彼女さんと一緒に登校して来ている。
どうやらお兄さんは彼女さんと朝の時間を長く過ごすために早くに登校しているようだった。
彼女はその邪魔にならないように、こうして教室で時間を潰しているようだった。
『お兄さんの幸せのために生きてる』
『お兄さんと少しでも一緒に居たい』
彼女の行動指針がよくわかるな。
さて、明日の体育祭の実行委員の選出に向けて、少しだけ根回しをしておくかな。
俺はそう思いながら、桜井さんの元へと歩いていく。
「ちょっと君と話したいことがあってな。時間は平気か?」
俺が彼女にそう問いかけると、桜井さんはニヤリと笑みを浮かべた。
何となく俺がそう言ってくるのをわかっていたような雰囲気だ。
桜井さんは察しの良い人だ。俺の考えてる事はわかってるだろうな。
「あはは。海野くんからそう言ってくるとは思ってたよ。明日のLHRで行われる体育祭の実行委員の件だよね?」
やっぱりわかってたな。
なら話は早いな。
「ご名答。桜井さんのことだから、明日のLHRで体育祭の実行委員に立候補すると思ってる。理由としては……」
「体育祭の実行委員の会合での司会進行は、生徒会長であるお兄ちゃんがやることになってるから。私としては学校でお兄ちゃんに会える時間は逃したくないと思ってるから。だね」
彼女のその言葉に、俺は軽く苦笑いを浮かべる。
「……ははは、その通りだよ。なぁ、生徒会の庶務として君はお兄さんと一緒の時間を作ってるよな。どうかな、体育祭の実行委員に関しては俺たち四人に譲ってくれないか?」
彼女が立候補するとなると、女子三人でのくじ引きになる。
くじ運の強い美凪は勝ちそうな気がするけど、奏は昔から運が悪い。
こういう所で引き負けるような気がするからな。
俺のそのお願いに桜井さんは笑みを浮かべながら言葉を返してきた。
「うん。構わないよ」
「そうか。ありがとう、助かるよ」
俺がそう言って言葉を返すと、彼女は少しだけイジワルな表情をしながら言ってきた。
「まぁ、条件があるんだけどね」
「……だよな。俺に出来ることなら、君の要望に応える」
タダでは無いとは思っていた。
さて、どんな要求が出てくるかな?
「もうそろそろ部活動の予算会議があるのは知ってるよね?」
「あぁ知ってるぞ。俺は部活動には入ってないからそこまで興味は無いけどな」
予算会議の様子がオンラインで動画配信されるんだよな。
まぁ、暇なら見てみようかな。なんてレベルのイベントだ。
「予算会議の告知の案内は、二年前から生徒会役員が手渡しをすることになってるんだけどさ、ちょっと最近やることが多くて手が離せないんだよね」
「そうか。それでどっちを手伝えばいいんだ?」
俺がそう言葉を返すと、桜井さんは目を細くした。
「ふふふ。良いね、海野くん。私は察しの良い人は好きだよ」
「美凪と出会ってなかったら本気にしてたよ」
その言葉に桜井さんはケラケラと笑っていた。
「あはは!!いい切り返しだね。本当に、私がひとりっ子だったら惚れてたよ」
「最高級の褒め言葉をありがとう。でもこうして君と楽しく話をしてると、美凪がヤキモチを妬いてしまうからな。手早く頼むよ」
後ろから美凪の視線を痛いほどに感じてるんだからな。
「なるほどね。ちなみにお願いしたいのは『告知の案内を部長にする』そっちだね」
「……意外だな。告知の案内を部長にするのは、自分の顔見せと部長たちとのコミュニケーションのためかと思ったけど?」
「正直な話。顔見せはいらないレベルで私は知名度があるからね。生徒会長の妹って肩書きは伊達じゃないよ」
「そうか」
「それに、部長たちとのコミュニケーションより、お兄ちゃんとの時間を大切にしたいからね!!」
「ははは。君らしい考えだな」
俺はそう言った後に、言葉を続けた。
「告知の案内を部長にするのは、俺一人じゃなくても良いだろ?」
「あはは。構わないよ。愛しの彼女とラブラブ校舎デートでもしてきなよ」
桜井さんはそう言いながら手をパタパタと振っていた。
「じゃあ告知の案内の時期が来たら私から声を掛けるから」
「わかった。じゃあ明日はよろしく頼むよ」
俺はそう言って、彼女との会話を切り上げた。
……さて。明日のための根回しはこれでOKだな。
だけど、最大の問題が出来てしまったな……
俺は視線の先で頬を膨らませている美凪を見ながら、この後のことを考えて小さくため息をついた。
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