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第2章

美凪side ② 中編 その③

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 美凪side ② 中編 その③






「結構荷物もかさばりますからね。コインロッカーを使いませんか?」
「そうだな。これから色々と遊び回ったりすることを考えるなら、その方がいいな」

 エレベーターを使って一階に降りた私と隣人さん。

 この後のことも考えて、有料のコインロッカーに買った洋服を預けて置くことにしました。

「一日で500円か……」
「微妙に高いなぁって思いますけど仕方ないですね」

 ですが、隣人さんの手が荷物でふさがってしまうのは良くないです。
 それに、彼と手を繋いで歩く費用に500円なら必要経費と言えるでしょう。


 荷物を預けたあと、私と彼は手を繋いでイートインコーナーへとやって来ました。



『イートインコーナー』




「やはり昼時を外しているので、そこまで人は居ないですね」
「そうだな。待たないで食べられるのはありがたい。もうお腹が減って仕方ないからな」

 私と隣人さんはそんな会話をしながら、ステーキ屋さんの前に立ちます。

「隣人さんは何をどのくらい食べますか?」

 私のその質問に、彼は少しだけ思案しながら答えました。

「サーロインを300gで焼き方はミディアムかなぁ……」
「ほほぅ……300gとはなかなか食べますね。私はサーロインを200gでレアにします!!」

 ミディアムも捨て難いですが、やはりお肉の柔らかさを感じられるレアの焼き加減が一番好きです。

 私のその言葉に、隣人さんは少しだけ怪訝な表情を向けてきました。

「レアってなんか生焼けみたいで怖いけど平気なのか?」

 そうですね。その不安は確かに理解出来ます。

 ですが、私は彼に言いました。

「お肉が柔らかく感じるので私は好きですよ?それに、今のところはあたったことは無いです」
「そうか。じゃあ俺も試してみるかな」

 私の言葉を受けた彼はそう言ってくれました。

 私の『色』に染まってくれましたね!!

「ふふーん!!レアの美味しさを隣人さんも知るが良いです!!」

 そして、隣人さんはカバンから私の生活費の入った封筒を取りだしながら話をしてきました。

「ちなみにこれは食費になるから、美凪の分の支払いはお前のお母さんから貰ってるこのお金から出すからな?」
「なるほど。でしたら隣人さんの分もそこから出してください」

「……え?」

 疑問符を浮かべる隣人さん。私はそんな彼に笑いながら伝えました。

「貴方にはいつもお世話になってますからね。そのくらいは許されますよ?」
「そうか。ならお言葉に甘えるかな」




 そして、隣人さんはサーロインを300gでレア。ご飯は大盛りで。
 私はサーロインを200gでレア。ご飯は特盛にしました!!

「お前は本当にご飯が好きなんだな」
「大好きです!!白米は日本人の心です!!」

 隣人さんのその言葉に、私は当然のように答えました。

「あはは。そうだな。俺はお前がご飯を美味しそうに食べてる姿を見るのは好きだからな」
「そ、そうですか……」

 し、しれっと好きとか言わないでくださいよ……

「これからも変なダイエットとか考えないでたくさん食べてくれ」
「ふふーん!!心配には及びませんよ!!この超絶美少女の優花ちゃんのパーフェクトボディを維持するためにはたくさん食べないといけませんからね!!」

 そして、私と隣人さんはテーブルへとやって来ました。

 その上にはステーキとご飯が乗ってます。

「ふふーん!!これは美味しそうです!!」
「確かに。暴力的な匂いがしてるな」

 私も隣人さんももうおなかがペコペコです。
 我慢なんて出来ません!!

「さぁ!!さぁ!!食べましょう!!」
「そうだな。早く食べないとレアがミディアムになるからな」

 私たちは「いただきます!!」と声を揃えて、ステーキを一口サイズにカットしてから、口に入れました。

 こ、これは……とても美味しいです!!

 口に入れた瞬間に肉汁がいっぱいに広がります。
 とても良い肉を使ってる証拠です!!
 タレの味も相まって、これはご飯が無限に食べられる味わいです!!

 私の舌を満足させられるのは隣人さんの料理だけですが、これはそれに近い味ですね!!

「……うめぇ」

 隣人さんも、私の正面でステーキの味に唸っていました。

「初めて食べましたけどこれはすごく美味しいですね!!ちょっとびっくりですよ!!」
「そうだな。オレもここまでレベルが高いとは思わなかったよ。てか、すまんな美凪。このタレは作れねぇわ」

 隣人さんはそう言って苦笑いを浮かべました。
 あはは……これは流石に難しいとは思いました。

「あはは。隣人さんでも出来ないことがあると知れて私は少し嬉しいですね」
「俺に出来ることなんてたかが知れてるよ。まぁでもそうだな……この味を目指して少しタレの研究をしてみても良いかもな……」

 タレの研究ですか!!
 それでしたら私にも出来ることがありますよ!!

 この『神の舌』と呼ばれる美凪優花ちゃんです!!

 味見ならお手の物です!!

「味見ならいくらでもやりますのでお声掛けください!!」
「あはは。その時はよろしく頼むわ」

 そんな会話をしながら、私と隣人さんは少し遅めの昼ごはんを全て食べ切りました。




「それで、この後はどうしようか。なんか希望はあるか?」

 お昼ご飯を食べ終わり、紙コップに注いだ水を飲みながら隣人さんが聞いてきました。

 私はその言葉に、先程スマホで調べていたゲームセンターについて話をしました。

「そうですね……個人的にはゲームセンターに行きたいです!!」
「なるほど。このショッピングモールの中には、駅前の規模にも負けないレベルのゲーセンがあるからな」

「はい!!実を言うとやりたいゲームがあるんです」
「やりたいゲーム?お前がそこまで言うとは興味があるな。何がしたいんだ?」

 私は隣人さんにメダル落としについて話をしました。

「メダル落としがやりたいんです!!」
「……あれか」

 私のその言葉に、隣人さんは少しだけ思案する素振りを見せました。
 どうしたのでしょうか。何か懸念でもあるのですかね?

 ですが、彼は直ぐに私に笑顔を向けて了承をくれました。

「良いぞ。俺もやるのは初めてだが、楽しそうだなと思ってたんだ。ゲーセンでメダル落としをやろう」
「わーい!!嬉しいです!!」

 私は両手を上げて喜びを示しました。

 やりました!!今から楽しみです!!

「上手くやれば長く遊べるって話も聞くからな。小さなお菓子とか、あとは飲み物を買って、汚さないように気を付けながら遊ぼうか」
「そうですね!!ゲームセンターの中で買うと高くつきますからね!!買ってから行きましょう!!

 流石は買い物上手の隣人さんです!!

 私たちは使ったテーブルのゴミを捨て、綺麗にしてからその場を後にしました。

 立つ鳥跡を濁さず!!当然の配慮です!!



『スーパーマーケット』


 アオンモール。と呼ばれるスーパーマーケットに到着しました!!
 ほほぅ……ロヒアと同じくらいの規模ですね。かなり大きなスーパーです!!

 ですが、パッと入り口から見えるお野菜などの価格を見た感じ、少しお高めな感じがしますね。

 ふふーん。この美凪優花ちゃんも、価格についてわかるようになってきたということです!!

 日々成長してると実感出来ますね!!

「今日の夕飯をここで買うのもありだなぁ……」

 私がそんな事を思っていると、隣の隣人さんがそう呟いてました。

「そうですね。確か……冷蔵庫の中は空だったです」

 たくさんあった卵やウインナーもいつの間にか無くなってました……

 お肉や野菜も冷蔵庫にはなかったです。
 あるのは飲みかけの牛乳くらいでしょうか……?

「よし。ここで夕飯の買い物をしていこう。美凪は何か食べたいものはあるか?」

 隣人さんのその言葉に、私は笑いながら答えました。

「そうですね。こういう時に『なんでもいい』と言う言葉はダメだ。と言う話を聞いたことがあります!!」

「あはは……そうだな。なんでもいいと言われると、何を作ったらいいかわからなくなるからな。それで出されたものを『これじゃないんだよなぁ』とか言われるのが夫婦喧嘩の始まりだ。と聞いたことがある」

 夫婦喧嘩……そうですね。もし、私と彼が結婚したら、喧嘩なんかするのでしょうか?

 あはは……なんだか、やれやれって言いながら隣人さんがいつも折れてくれそうな気がしますね。

 私はそんな自分の妄想は表に出さないようにして、彼に自分の想いを伝えました。

「ですが、隣人さんの作る料理はなんでも美味しいので、正直な話をすれば『なんでもいい』と思ってしまいます!!」

 私のその言葉に、少しだけ苦笑いを浮かべて隣人さんは思案をしました。

 そして、私に提案をしてきました。

「なあ、美凪。だったら今夜は『カレー』にしようか?」
「カレーですか!!とんでもないご馳走ですね!!」

 カレーが出た日には、私はいつも『おかわり』をしてしまいます!!
 毒ガス訓練には生き残れない人間の筆頭ですね。

「今日と明日の二連休だ。今日は一日目のカレー。明日はデートが終わって帰ってきたら二日目のカレー。外でも家でも楽しみが出来るからな」
「おおーー!!隣人さん!!流石です!!」

 二日目のカレーは絶品です!!
 具材がとろけて更に美味しくなるんです!!

「そして、お前には新しいスキルを習得してもらう」
「あ、新しいスキル……ですか?」

 真剣な表情の隣人さん。
 私は少しだけ緊張をしました。

「ピーラーを使って野菜の皮むきをしてもらうぞ。そして、今日のカレーの具材は全てお前が下ごしらえをするんだ」

 ぐ、具材の下ごしらえは私が全てする!!
 こ、これは大変光栄なことですよ!!

「そこまで任せてくれるんですか!!光栄です!!」

「包丁を使うことにも慣れてきたと思う。だが、その慣れた時の怪我もお前はしなかった。次は野菜よりも難易度が上がる肉を切ってもらう」
「はい!!」

「そして、人参とじゃがいもはピーラーを使って皮をむいてもらう。皮をむいた野菜は滑りやすい。これも怪我をしやすい部類だが、お前なら大丈夫だと信じている」

 そこで、私は絶対に気をつけなければならないことを、彼に伝えます。

「はい!!多少不揃いになったとしても、絶対に指は切りません!!」

「よし。その心持ちなら平気だな。じゃあこれから野菜と肉とカレーのルーを買って行こう」
「了解です!!」


 そして、店内を進んだ私たちは野菜売り場に到着しました。

「付け合せのサラダに使う野菜をまずは持って来てくれ。レタス、きゅうり、トマト。この三種類だ」
「了解です!!良いものの選び方は、以前教わりましたからね!!」


 私はビシッと敬礼をした後に、レタス、きゅうり、トマトを選びに向かいます。

「レタスは習ってませんが、瑞々しい物が良いのはわかります。きゅうりはイボイボが立ってるもの。トマトは部屋の数が多いもの……」

 私は彼に教わった通りに野菜を選んで持って行きました。


「どうでしょうか!!」

「完璧だな。良くやった、美凪」

 隣人さんはそう言って、私の頭を撫でてくれました。

 えへへ……とても気持ちいいです……

「えへへ……このくらいのことでしたら、おちゃのこさいさいです」
「よし。次は人参と玉ねぎとじゃがいもの選び方だ」

 私は隣人さんと一緒に泥物のコーナーに行きました。

「今の三種類の野菜はあまり鮮度を気にした事の無い野菜ですね。何かポイントがあるんですか?」

 私のその質問に、隣人さんは真剣な目で答えてくれました。

「そうだな。鮮度を気にしない野菜だからこそ、しっかり選ばないと『売り場で鮮度劣化した商品』を掴んでしまう可能性がある」

「なるほど……」
「中を切ったら傷んでた。まぁ言えば交換してもらえるけど、手間だからな。わざわざ玉ねぎやじゃがいも一個の為に店員さんの家に呼び付けて、手を煩わせるのも可哀想だ。そういうのを買わないってのも大切だからな」

『商品クレーム』の場合は家まで交換に来てくれる。
 このスーパーはそういう対応をしてくれるそうです。

 ですが、確かに玉ねぎ一個のために呼び付けるのは可哀想だと思いました。


 そして、私は隣人さんから玉ねぎ、にんじん、じゃがいもの鮮度の見方を教わりました。

『ポイズンポテト』が実在していたことにはびっくりです!!


「よし。これで野菜は全部選んだな。次は肉を買おう」

 お肉!!私はお肉いっぱいのカレーが大好きです!!

「はい!!お肉はたくさん入れたいです!!」
「あはは、そうだな。俺もたくさん肉は入れたいな」

 私と隣人さんは野菜売り場を後にして、お肉コーナーに行きました。


 お肉コーナーに辿り着いた私と隣人さん。

 色々なお肉があって目移りしそうです!!

「美凪は何の肉をカレーに入れたい?」
「そうですね……」

 私は彼の問いかけに少しだけ思案します。

「正直な話を言えば牛肉を入れたカレーが一番好きです。ですがお昼にステーキを食べたので豚肉が良いと思ってます」

 私のその言葉に、彼も笑って答えてくれました。

「あはは。だよな。俺も全く同じことを考えてたよ」

 隣人さんはそう言うと、豚のブロック肉をカゴに入れました。

「よし。あとは福神漬けとらっきょうを買って行くぞ」
「はい!!」

 こうして私と隣人さんは、カレーの材料を買ってスーパーを後にしました。


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