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第1章

~エピローグ~

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 エピローグ




「それにしても、本当に手作りケーキは美味しかったよ。ありがとう、美凪」
「ふふーん!!喜んでもらえたのなら光栄です!!まあ、パーフェクト美少女の美凪優花ちゃんですからね、この程度のことならおちゃのこさいさいです!!」

 豊かな胸をそらせながら、美凪はドヤ顔でそう言った。

「食器洗いくらいはやらせてくれないか?さっきも言ったけど、お前のその服を汚したくない」
「えへへ。その……似合ってますか?」

「あぁ。とても良く似合ってる。正直な話。下界に降り立った天使かと思ったよ」
「も、もぅ……言い過ぎですよ……」

 そんな甘い空気が部屋に満ちる中、俺は椅子から立ち上がって食器を流しへと持っていく。

「おや……隣人さん。ポケットに何かを入れてるんですか?」
「…………あ」


 や、やべぇ!!こんなもん持ってるのがバレたらとんでもない事になるぞ!!

「……き、気にしなくていいぞ」

 俺は苦笑いを浮かべながら、ポケットの膨らみを隠す。

「隣人さん……そんな事されたら、余計に気になるってわかりますよね?」

 呆れたような表情でそう言う美凪。
 だが、これを見られる訳には……

「出してください」
「……はい」

 彼女の圧に負け、俺は奏からの誕生日プレゼントをテーブルの上に出す。

 0.01mmの避妊具 10枚入の小さな箱。

「……隣人さん。私はこれが何かわからないような子供では無いです」
「はい」

「どういう意図があって持ってきたか、話して貰えますか?」

 ニコリと笑いながら、美凪はそう言う。
 その笑顔が……怖い……

「も、黙秘……」
「黙秘は認めません」
「……え?」

 顔を伏せて黙秘権を行使しようとしたが、それを却下された。
 俺は顔を上げて彼女の目を見る。

 そこには俺を『軽蔑』しているような視線では無かった。
 真意を知りたがっている。そういう目だった。

「きちんと話してください。私は貴方の本心が知りたいです」
「そ、それを話したら軽蔑……」
「軽蔑なんかしませんよ」

 美凪はそう言うとふわりと笑う。

「私がどれだけ貴方を信頼してると思ってるんですか?この程度のことで軽蔑すると思われてるのなら、その方が心外です」
「そ、そうなのか……」

 俺はそう言ったあと、一つ息を吐いた後に話し始めた。


「これは、奏からの誕生日プレゼントだ」
「……なかなか刺激的な誕生日プレゼントですね」

「俺もそう思うよ。そして、これをここに持ってきたのは『万が一そういう雰囲気になった時のため』ってのだよ」

「別に、お前とそういう事をするために持ってきた訳じゃない」

 俺がそう言うと、美凪は首を縦に振った。

「でしょうね。もし貴方がそういう人なら、私はここまで信頼してません」
「……はぁ。買いかぶりだよ。俺の頭の中はいつだってえろい事でいっぱいだよ」

 その言葉を受けて、美凪は言う。

「私に対してもそういうことをしたいと思うことはあるんですか?」
「……あるよ」

 そんなんしょっちゅうだよ。とは言わなかったけど。

「そうですか。話すのが辛いことを話してくれてありがとうございます」
「はぁ……どういたしまして」

 ため息混じりにそう言う俺に、美凪は微笑みを浮かべながら話し始める。

「貴方が私に本心を話してくれたので、私も本心を話しますよ」
「そうか……」

 俺がそう返事をすると、彼女は頬を赤く染めて言う。

「貴方の家に泊めてください。私がそう言って部屋を訪れた時がありましたね?」
「そうだな」

「あの日。私は貴方が求めてくるのなら『初めて』を差し出しても良い。それくらいの覚悟がありましたよ」
「…………はぁ。あの状況下でそんなことをお前に求めたら、俺はただのクズだろ」

「ふふふ。そうですね。ですが、貴方が私と今夜はそういうことをしない。そう宣言した時に、私は安心したのと同時に、悔しい気持ちにもなりました。求められない。と言うのは女としての魅力に欠けている。そう言われてるようにも思えましたから」
「馬鹿言うなよ……お前に女の魅力が欠けてるなんてことがあるはず無いだろ……」

 俺がそう言うと、美凪は少しだけ頬を赤く染める。

「あ、ありがとうございます……」

 そして、美凪は俺に向かって言葉を続けた。

「私は、貴方に対して非常に大きな好意を抱いています」
「…………え?」

 い、今俺はなんて言われた?

「それこそ。これを使うような行為すら、貴方から求められればしても構わない。そう思えるくらいには」

 美凪はそう言うと、避妊具を指さした。

 少しの沈黙の後、美凪は言葉を続けた。

「ですが、私はこの気持ちが『恋』なのか『感謝』なのかわかりません」
「…………美凪」

 そして、彼女はふわりと微笑みを浮かべて俺に言う。

「だって、私はまだ初恋すらした事の無い乙女ですからね」
「そうか……」




「だから、もう少し待ってて貰えませんか?」



「私のこの気持ちが乙女の恋心なのか、生命を救ってもらった恩人に対する感謝なのか、私が理解するまでの時間をください」
「理解したら……どうするんだ?」

 俺のその問いに、美凪は答える。

「その時は、私の気持ちを貴方に伝えますよ」
「……わかった」

 俺はそう言ったあと、避妊具をポケットにしまう。

「先に言っておく。俺はなんとも思ってないような人間に飯は振る舞わない」
「…………はい」

 きっと、俺が言いたいことは伝わってるはずだ。

「お前が望むなら『一生』美味しいご飯を作ってやるよ」

 俺はそう言って、美凪に笑いかけた。

 その言葉を受けて、彼女は満面の笑みを浮かべる。

 あぁ、そうだな。俺はお前のその笑顔が本当に大好きなんだ。




「はい!!これからもよろしくお願いします!!私の……私だけの、飯使いさん!!」




 腹ぺこお嬢様の飯使い 
 ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~


 エピローグ


 ~完~


 第二章へ続く


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