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第1章
第五話 ~朝の通学路ではバカップルに美凪との事を邪推された件~
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第五話
朝。六時半に目を覚ました俺は朝ご飯の支度をする。
台所で飯を作っていると、朝風呂を済ませた親父が姿を現す。
先程帰ってきたようで、汚れた身体の汗を落としていた。
「おはよう、凛太郎。昨日は夕飯が食べられなくてごめんね」
「気にすんなよ、親父。あと、夕飯なら隣のヤツに食わせてやったから大丈夫だよ」
俺がそう言うと、親父は少しだけ驚いたみたいで、
「へぇ。そんなことがあったんだね!!」
「あぁ。俺もびっくりだよ」
と相槌を打った。
スクランブルエッグとベーコンを皿に盛り付け、俺は炊飯器を開ける。
中身は空だった……
「……あぁアイツに全部食われてたのを忘れてたわ」
俺はボソリとそう呟くと、買っておいた食パンを手にする。
「わりぃ親父。米を炊いておくのを忘れてたわ」
「大丈夫だよ、凛太郎。パンでも構わない」
腹が減ってるかなと思ったけど親父は笑って許してくれた。
俺と親父は朝飯を食いながら話をする。
「今日から新学期だね。僕はこの後寝ちゃうけど頑張ってね」
「あぁ。今日は半日で終わると思うけど、もしかしたらどっかで遊んで帰ってくるかもな」
『あのバカップル』に付き合わされる可能性は低くないからな。
「そうかい。まぁ遅くならない内に帰ってくるんだよ」
「あぁ。夕飯までには帰ってくるよ」
俺がそう言うと、親父は少しだけ笑って言う。
「そうは言ったけど、凛太郎ももう高校生だからね。今までは勉強ばかりだったけど、そろそろ遊んでも良い頃だと思うよ」
「そうだな。入学試験の成績は首席じゃなかったし。もう勉強にこだわる気持ちも無くなったよ」
中学三年間は首席だったが、入学試験の成績は次席だった。
今までは部活もやってなかったので勉強で一位を取るのが目標みたいに思ってもいた。
俺が入学した海皇高校は、入学試験の成績が一位から三位までは成績優良者として、表彰状が届くようになっていた。
ちなみに、首席は入学式の時に挨拶をするらしい。
めんどくさいな。なんて考えていたので、次席で良かった。とすら思っている。
「凛太郎より勉強が出来るなんて凄い子が居るもんだね」
「まあ、所詮は井の中の蛙だよ」
俺はそう言うと、食器を持って台所の流しに入れた。
時刻を見ると七時半だった。
「そろそろ支度を始めるよ。食べ終わった食器は流しに入れて置いてくれ。帰って来てから洗うよ」
「いや、食器洗い位はやっておくよ」
「そうか。ありがとう親父」
俺はそう言うと自室に戻った。
勉強机とベッドとダンベルしかないつまらない自室。
趣味は勉強と筋トレって寂しすぎるよな……
そして俺は真新しい制服に着替える。
鏡に映った自分を見る。
身長は180ジャスト。もう少し伸びそうな気がする。
筋トレをしてるので、部活はしてないけどだらしない身体では無い。
髪型もダサくない程度に整えるようにはしてる。
あのバカップルを見てると俺も彼女が欲しいと思う時が、ないわけではない。
『ふふーん。この美少女が隣人さんの彼女になってあげましょうか?』
「……ねぇな」
一瞬だけ頭に浮かんだ不愉快な妄想を思考の隅に追いやる。
時刻を見るとそろそろ八時になりそうだった。
アイツが居るかはわからんが、そろそろ行くか。
俺はカバンを手にして自室を後にした。
『行ってきます』
と言って俺は玄関を開けて外に出る。
すると、
「おはようございます!!隣人さん!!」
「おはよう美凪。寝坊はしなかったんだな」
目の前には昨日の部屋着ではなく、俺と同じ海皇高校の制服に身を包んだ美凪が居た。
「制服が似合うな。見た目だけなら美少女だな」
俺のその言葉に、美凪は豊かに育った胸をそらせながらドヤ顔で言い放つ。
「ふふーん。私も鏡の前で思いましたね!!さすが才色兼備のパーフェクト美少女の優花ちゃんです!!」
「才色兼備のパーフェクト美少女だったら、腹を減らして隣の部屋まで来ないだろ……」
「そ、それは言わない約束ですよ……」
そんな会話をしながら歩いていく。
「隣人さんは何で学校に行くんですか?」
「歩きだよ。ここから十分ならわざわざ自転車なんか使わないだろ」
「ですよね、私も歩きです」
そんなことを話しながら歩いていると、
「おいおい凛太郎!!お前が女の子と歩いてるとか明日は雪か!!!???」
「ちょっと凛太郎くん!!私という人が居るのにその女は誰よ!!!!」
と後ろから自転車に乗った男女の二人組がやって来た。
「おい、うるせぇぞ。幸也に奏」
俺は後ろを振り向いて『バカップル』の二人に声を掛ける。
「いやいやだってよ!!枯れた中学時代を過していた海野凛太郎が、高校生活一日目に女の子と歩いてるとか意味不明過ぎるだろ!!??」
なんて言ってくるのはバカップルの片割れ。
成瀬幸也
「酷いわ凛太郎くん!!私とのことは遊びだったのね!!」
ヨヨヨ……と嘘泣きをしているのはバカップルのもう片割れ。
音無奏
「あの、隣人さん。この二人はどちら様ですか?」
「あぁ。男の方は成瀬幸也。女の方は音無奏。コイツらは同じ中学のバカップルだ。悲しいことに俺たちと同じ海皇高校の一年生だ」
美凪の質問に俺はため息混じりで答える。
「なるほど。同じ中学の同級生ですか……」
ふむ。と手を顎に当てたあと、美凪はニヤリと笑った。
「成瀬さん、音無さん。おはようございます。私は美凪優花と申します。昨日。海野凛太郎くんの隣の部屋に引っ越して参りました」
と、美凪はフワリと笑って一礼した。
どう見ても余所行きの対応だった。
「ほほう。そうですか……」
「ねぇねぇ優花ちゃん!!凛太郎くんとはどんな関係なの!?引っ越してきて一日で一緒に登校するとか普通じゃなかなか無いよね!?」
……奏。初対面でいきなり名前で呼ぶお前も普通じゃねぇよ。
そんなことを思っていると、美凪の頬が少しだけ引きつっていた。へぇ、アイツでも御し難いんだな。
「隣人さ……いえ、海野くんは命の恩人ですね」
「「命の恩人!?」」
驚く二人に俺が説明する。
「昨日の夜。仕事で呼び出されたせいでコイツの家族の人が居なくてな。何も食うものがなくて、金も無くて腹が減って死にそうだから飯を食わせてくれって俺の家に来たんだよ」
「そんなことがあったんか」
「まぁ、たまたま親父の分の夕飯があまりそうだったからな。その分を食わせてやったんだよ」
「タダで飯を食わせてやるなんて、やっぱり凛太郎は優しいな」
なんて笑って言う幸也に、美凪がここぞとばかりに言ってきた。
「いえ。決してタダでは無かったですよ?」
「え……でも美凪さん。無一文だったんでしょ?」
首を傾げる幸也に、美凪は恥ずかしそうに頬を染めながら言った。
「その……身体でお支払いをいたしました」
「「身体でお支払い!!??」」
「あまり上手には出来なかったですけど、海野くんの為に頑張ってしました。ですが私の経験が少なかったせいで、周りをいっぱい濡らしてしまいました……」
バカップルの視線が一気にこちらを向く。
その後ろでは美凪が楽しそうに笑っている。
あんにゃろう。これを狙ってやがったな。
「それと、恥ずかしい話ですが、海野くんには明るい部屋で私の下着も見られてしまいました」
「「明るい部屋で下着も見られてる!!??」」
まぁ……嘘では無いな……
「凛太郎……俺が知らないところで何してんだよ……」
「私の凛太郎くんが汚されちゃった……」
そんな二人に俺はため息混じりに説明する。
「美凪には飯を食わせてやっただけだよ。それに身体で支払ったは洗い物をさせただけだよ。下手くそだから水で濡れただけだよ。それに下着を見たってのは、こいつの引越しの荷片しを手伝ってる時に、誤って美凪の下着が入ったダンボールを開けちまっただけだよ……まぁ、この一件は俺の過失だな」
俺がそう言うと、美凪に視線を向ける。
すると、
「てへ」
と美凪がイタズラっぽく笑った。
「まぁでも今まで奏以外の女の子と話した事がなかった凛太郎にしては大事件だよな」
「ねぇねぇ優花ちゃん。これもいい機会だし、友達になろうよ!!」
グイグイ行く奏に美凪は少しだけ頬をひきつらせながら、
「は、はい。よろしくお願いします。音無さ……」
「奏だよ!!」
「……え?」
「音無さん。なんて他人行儀に呼ばないでよ優花ちゃん!!奏でいいよ!!」
美凪は諦めたようにため息をつくと
「よろしくお願いします。奏さん」
と言うのだった。
「お前の彼女。ほんとすげぇよな」
「まあ、でも二人きりの時は女の子っぽくて大人しいんだぜ?音無だけに」
「つまんねぇよ。バカ」
そんな会話をしながら、俺たち四人は海皇高校の校門を跨いで行った。
朝。六時半に目を覚ました俺は朝ご飯の支度をする。
台所で飯を作っていると、朝風呂を済ませた親父が姿を現す。
先程帰ってきたようで、汚れた身体の汗を落としていた。
「おはよう、凛太郎。昨日は夕飯が食べられなくてごめんね」
「気にすんなよ、親父。あと、夕飯なら隣のヤツに食わせてやったから大丈夫だよ」
俺がそう言うと、親父は少しだけ驚いたみたいで、
「へぇ。そんなことがあったんだね!!」
「あぁ。俺もびっくりだよ」
と相槌を打った。
スクランブルエッグとベーコンを皿に盛り付け、俺は炊飯器を開ける。
中身は空だった……
「……あぁアイツに全部食われてたのを忘れてたわ」
俺はボソリとそう呟くと、買っておいた食パンを手にする。
「わりぃ親父。米を炊いておくのを忘れてたわ」
「大丈夫だよ、凛太郎。パンでも構わない」
腹が減ってるかなと思ったけど親父は笑って許してくれた。
俺と親父は朝飯を食いながら話をする。
「今日から新学期だね。僕はこの後寝ちゃうけど頑張ってね」
「あぁ。今日は半日で終わると思うけど、もしかしたらどっかで遊んで帰ってくるかもな」
『あのバカップル』に付き合わされる可能性は低くないからな。
「そうかい。まぁ遅くならない内に帰ってくるんだよ」
「あぁ。夕飯までには帰ってくるよ」
俺がそう言うと、親父は少しだけ笑って言う。
「そうは言ったけど、凛太郎ももう高校生だからね。今までは勉強ばかりだったけど、そろそろ遊んでも良い頃だと思うよ」
「そうだな。入学試験の成績は首席じゃなかったし。もう勉強にこだわる気持ちも無くなったよ」
中学三年間は首席だったが、入学試験の成績は次席だった。
今までは部活もやってなかったので勉強で一位を取るのが目標みたいに思ってもいた。
俺が入学した海皇高校は、入学試験の成績が一位から三位までは成績優良者として、表彰状が届くようになっていた。
ちなみに、首席は入学式の時に挨拶をするらしい。
めんどくさいな。なんて考えていたので、次席で良かった。とすら思っている。
「凛太郎より勉強が出来るなんて凄い子が居るもんだね」
「まあ、所詮は井の中の蛙だよ」
俺はそう言うと、食器を持って台所の流しに入れた。
時刻を見ると七時半だった。
「そろそろ支度を始めるよ。食べ終わった食器は流しに入れて置いてくれ。帰って来てから洗うよ」
「いや、食器洗い位はやっておくよ」
「そうか。ありがとう親父」
俺はそう言うと自室に戻った。
勉強机とベッドとダンベルしかないつまらない自室。
趣味は勉強と筋トレって寂しすぎるよな……
そして俺は真新しい制服に着替える。
鏡に映った自分を見る。
身長は180ジャスト。もう少し伸びそうな気がする。
筋トレをしてるので、部活はしてないけどだらしない身体では無い。
髪型もダサくない程度に整えるようにはしてる。
あのバカップルを見てると俺も彼女が欲しいと思う時が、ないわけではない。
『ふふーん。この美少女が隣人さんの彼女になってあげましょうか?』
「……ねぇな」
一瞬だけ頭に浮かんだ不愉快な妄想を思考の隅に追いやる。
時刻を見るとそろそろ八時になりそうだった。
アイツが居るかはわからんが、そろそろ行くか。
俺はカバンを手にして自室を後にした。
『行ってきます』
と言って俺は玄関を開けて外に出る。
すると、
「おはようございます!!隣人さん!!」
「おはよう美凪。寝坊はしなかったんだな」
目の前には昨日の部屋着ではなく、俺と同じ海皇高校の制服に身を包んだ美凪が居た。
「制服が似合うな。見た目だけなら美少女だな」
俺のその言葉に、美凪は豊かに育った胸をそらせながらドヤ顔で言い放つ。
「ふふーん。私も鏡の前で思いましたね!!さすが才色兼備のパーフェクト美少女の優花ちゃんです!!」
「才色兼備のパーフェクト美少女だったら、腹を減らして隣の部屋まで来ないだろ……」
「そ、それは言わない約束ですよ……」
そんな会話をしながら歩いていく。
「隣人さんは何で学校に行くんですか?」
「歩きだよ。ここから十分ならわざわざ自転車なんか使わないだろ」
「ですよね、私も歩きです」
そんなことを話しながら歩いていると、
「おいおい凛太郎!!お前が女の子と歩いてるとか明日は雪か!!!???」
「ちょっと凛太郎くん!!私という人が居るのにその女は誰よ!!!!」
と後ろから自転車に乗った男女の二人組がやって来た。
「おい、うるせぇぞ。幸也に奏」
俺は後ろを振り向いて『バカップル』の二人に声を掛ける。
「いやいやだってよ!!枯れた中学時代を過していた海野凛太郎が、高校生活一日目に女の子と歩いてるとか意味不明過ぎるだろ!!??」
なんて言ってくるのはバカップルの片割れ。
成瀬幸也
「酷いわ凛太郎くん!!私とのことは遊びだったのね!!」
ヨヨヨ……と嘘泣きをしているのはバカップルのもう片割れ。
音無奏
「あの、隣人さん。この二人はどちら様ですか?」
「あぁ。男の方は成瀬幸也。女の方は音無奏。コイツらは同じ中学のバカップルだ。悲しいことに俺たちと同じ海皇高校の一年生だ」
美凪の質問に俺はため息混じりで答える。
「なるほど。同じ中学の同級生ですか……」
ふむ。と手を顎に当てたあと、美凪はニヤリと笑った。
「成瀬さん、音無さん。おはようございます。私は美凪優花と申します。昨日。海野凛太郎くんの隣の部屋に引っ越して参りました」
と、美凪はフワリと笑って一礼した。
どう見ても余所行きの対応だった。
「ほほう。そうですか……」
「ねぇねぇ優花ちゃん!!凛太郎くんとはどんな関係なの!?引っ越してきて一日で一緒に登校するとか普通じゃなかなか無いよね!?」
……奏。初対面でいきなり名前で呼ぶお前も普通じゃねぇよ。
そんなことを思っていると、美凪の頬が少しだけ引きつっていた。へぇ、アイツでも御し難いんだな。
「隣人さ……いえ、海野くんは命の恩人ですね」
「「命の恩人!?」」
驚く二人に俺が説明する。
「昨日の夜。仕事で呼び出されたせいでコイツの家族の人が居なくてな。何も食うものがなくて、金も無くて腹が減って死にそうだから飯を食わせてくれって俺の家に来たんだよ」
「そんなことがあったんか」
「まぁ、たまたま親父の分の夕飯があまりそうだったからな。その分を食わせてやったんだよ」
「タダで飯を食わせてやるなんて、やっぱり凛太郎は優しいな」
なんて笑って言う幸也に、美凪がここぞとばかりに言ってきた。
「いえ。決してタダでは無かったですよ?」
「え……でも美凪さん。無一文だったんでしょ?」
首を傾げる幸也に、美凪は恥ずかしそうに頬を染めながら言った。
「その……身体でお支払いをいたしました」
「「身体でお支払い!!??」」
「あまり上手には出来なかったですけど、海野くんの為に頑張ってしました。ですが私の経験が少なかったせいで、周りをいっぱい濡らしてしまいました……」
バカップルの視線が一気にこちらを向く。
その後ろでは美凪が楽しそうに笑っている。
あんにゃろう。これを狙ってやがったな。
「それと、恥ずかしい話ですが、海野くんには明るい部屋で私の下着も見られてしまいました」
「「明るい部屋で下着も見られてる!!??」」
まぁ……嘘では無いな……
「凛太郎……俺が知らないところで何してんだよ……」
「私の凛太郎くんが汚されちゃった……」
そんな二人に俺はため息混じりに説明する。
「美凪には飯を食わせてやっただけだよ。それに身体で支払ったは洗い物をさせただけだよ。下手くそだから水で濡れただけだよ。それに下着を見たってのは、こいつの引越しの荷片しを手伝ってる時に、誤って美凪の下着が入ったダンボールを開けちまっただけだよ……まぁ、この一件は俺の過失だな」
俺がそう言うと、美凪に視線を向ける。
すると、
「てへ」
と美凪がイタズラっぽく笑った。
「まぁでも今まで奏以外の女の子と話した事がなかった凛太郎にしては大事件だよな」
「ねぇねぇ優花ちゃん。これもいい機会だし、友達になろうよ!!」
グイグイ行く奏に美凪は少しだけ頬をひきつらせながら、
「は、はい。よろしくお願いします。音無さ……」
「奏だよ!!」
「……え?」
「音無さん。なんて他人行儀に呼ばないでよ優花ちゃん!!奏でいいよ!!」
美凪は諦めたようにため息をつくと
「よろしくお願いします。奏さん」
と言うのだった。
「お前の彼女。ほんとすげぇよな」
「まあ、でも二人きりの時は女の子っぽくて大人しいんだぜ?音無だけに」
「つまんねぇよ。バカ」
そんな会話をしながら、俺たち四人は海皇高校の校門を跨いで行った。
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