傍観していたい受付嬢

湖里

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探すのはモノ?ヒト?

食客とは

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「あら?あの塔はなんですの?」
頼まれた資料を共に運んでいるとき、日頃は見ることのない塔があった。
「……ああ、あそこは食客が在住しているところです。他国からの使者ではないんですが、教皇の古い友人だとか。」
教皇の友人……ね。
「教皇様のご友人なんて、きっと文武に優れた素晴らしい方なのでしょうね。」
バレない程度に探りを入れれば、外交官長の頬が歪んだ。どうやら、あまりいい記憶がないらしい。
「勉学には大変優れているようなのですが……。」
性格に何有りの食客なんて、外交官長からみたら邪魔な存在でしかない。教皇様が気に入っているのなら尚の事。とっとと出て行ってほしいところだろう。

「名前を、ニューリー=ソンという自称『科学者』だそうです。」
「!」
食客として、この国にいたのかっ。
客として迎えられているとは思わなかった。完全に私の盲点と言っていいだろう。

ザワザワザワ______
「……今なにか言いましたか?」
「え?僕は何も話してませんよ?」
背後から語りかけるような声が一瞬だけ聞こえたが、すぐに消えた。

そういえば、ニューリーと最後に会ったのは何時だろうか?





















「おう、アンタが噂の受付令嬢か。」
薄汚れた白衣にそこらに売っている煙草を加えたおじさん(20代後半)こそ、ニューリー=ソンと私の出会いだった。
今から、6年ほど前の話だ。
コーリドとレオディオの用事が済むのを待っていたときに、ギルドにやってきたニューリーは私を一瞥するとすぐに招待を暴いた。
「……どちら様で?」
なぜか人っ子一人いないギルドの中で、警戒して返事をすれば鼻で軽く笑われた。
「ハッ!こりゃあ、子猫というよりも山猫だな。化け猫とも言っていいだろう。」
皇太子殿下も何を考えてんだから……。
呆れたようにため息をついたニューリーは攻撃体制を解かない私に興味もなく。カウンター席につくと、のんびりと煙草を吹き始めた。
ユラユラと揺らめく煙草の煙は何処か生きているようにさえ感じる。不思議な感覚に陥った私も体の力を抜いた。
「おい、山猫。」
「ミッシェル=ニルです。もしくは受付令嬢とお呼びくださいませ。」
山猫なんて、可愛くない名前で呼ばれて眉を寄せればまた鼻で笑われた。
「ハッ!山猫が一丁前に令嬢ぶるんじゃねぇよ。」
「なつ………、レディへの態度がなってませんわね、おじさん・・・・は。」
言い返せば、ピキリと相手の頭に筋が入った。いい君だとクスクスと小馬鹿にするように笑えば相手もうざそうに顔をしかめた。
「あー……、嫌いなタイプだってんだ。」
「そっくりそのまま、お返しいたしますわ。」
舌打ちをしたニューリーはガシガシと頭を掻き毟りながら、カウンターに肘をついた。
「……もし、永遠の命をもらったらどうする?」

「_________。」













初めての挨拶をして、それっきりと鳴っていた。互いに避けあっていたこともあるし、姿を隠そうとしていた事もある。
私はあのとき、なんと答えたのだろう?
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