運び屋兄弟の異世界爆走日記

旅虎

文字の大きさ
上 下
6 / 14
第1章

1-6.手合わせ part1

しおりを挟む
 訓練場にやってきた一行、ロギングは準備をしてくると言い訓練場を外していた。
 一方の天海兄弟は何もせずにただただロギングを待っていた。

「そういや雷」

「なんだ兄貴?」

 待っているのが退屈になったのか真琴が雷に話しかけた。

「あの女騎士はどうやって俺らと戦うん?」

「さぁ?、まさか俺ら二人と2対1で戦うなんて事はないだろうけどな」

「そこで1つ提案なんじゃけどー」ビシッ!

 真琴が指を立てながら言う。

「?、何すんだよ」

 尋ねた雷対して真琴は右手でグーをつくり突き出した。

「あー、なるほどなぁー.....いよっしゃ!」

 それに対して雷も同じく右手でグーを出し、お互いに手を出し合っていた。

「「最初はグー、ジャンケンポン!」」

 ジャンケンをし始めた、どっちがロギングと戦うか決めようとしている。
 真琴がグーで雷がチョキと言う結果になった、これによりロギングと戦うのは真琴に決まった。

「ちっ」

 負けた雷は不機嫌そうに舌打ちをしていた。

「いよっしゃ!」

 勝った真琴は両手でガッツポーズをして喜んでいた。

「お待たせ致しました」

 そうこうしているとロギングが訓練場にやってきた、その後には騎士らしき男が数人いた。
 その中にいる1人の男に真琴の目が止まった。

「あー、ら、雷くーん、ちょっとお願いがあるんじゃけどー」

 真琴が小声で雷に話しかけた。

「あのヤローとやんのは俺だからな」

「...............」ガーン

 頼みを察され、断られた真琴は肩を落とし落ち込んでしまった。

「今から私とグリード副団長と順番に1対1で戦ってもらうぞ」

 兄弟が話していた男とグリードと言い身長がパッと見190cmを越えているように見えた。
 ガタイもなかなかなものである、しかもかなりの修羅場を乗り越えて来た人種だと言う事を兄弟は見てわかった。

「じゃ最初は俺と副団長アンタって事でいいのかな?」

 指を指しながら雷はそう言うとグリード副団長も雷の方を見た。

「そうだな、まずは俺とお主でやり合おうか」

 二人共笑い合う、雷の後ろでは真琴が不機嫌そうにぶつくさ文句を言いながら雷から離れた。

「それでは審判は私がやります」

 真琴や国王達が離れた後、雷とグリードは訓練場の真ん中で向かい合っていた、その間を1人の騎士が審判のため立っていた。

「加減なしで頼むぜ」

「それはお主が強ければの話だがな」

「言ってくれんじゃん」ニヤ

「ふん」ニヤ

 お互いに相手が強いと言う事は確信していた、グリードはどうやら強い相手と戦うの時はすごく楽しくなってしまうようだ、一方の雷も同様だ、強い相手との喧嘩は楽しくてしょうがないようだ。

「それでは.....」

 審判の騎士がそう言うと右手を挙げた、グリードと雷はお互いに構えた、グリードは腰に掛けていた剣に手を添え、雷は拳を突き出した。

「はじめ!」

「「ッ!」」

 合図と共に距離を詰める両者、グリードは剣を抜き、そのまま両手で縦に振った。
 雷はサイドステップで横に少し避ける、先程雷がいた所にはグリードの剣が空気を斬った、そのままグリードは雷に向かって剣を横に振る。

「あぶねッ!」

 そう言いながら身体を下げて避ける、グリードの脇腹に向かってボディブローをぶちかました。

「ぐっ.....」

 見事にクリンヒットし、グリードがよろめいて後退しまった。
 その隙に畳み掛けようとする雷、だが何か気配を感じたのか足を止め距離を離した。

(ほぅ、危険を察知したか.....)

(危なかった.....今行ったら文字通りあの剣の錆にされちまうとこだったぜ)

 その後約10秒間互いに手を出さないでいたが、グリードが動き出した。

行くぞゆくぞ!、剣舞けんぶ根性岩砕きこんじょういわくだき!」

(何か必殺技っぽいもんが出てきたぞー!)

 グリードの剣に何やら気の様な物が纏った、雷の目には剣が赤く染まっていた。
 流石にやばいと思い、後に後退し、グリードの技をかわした。

ズゴーンッ!

 激しく音がし、砂煙が舞っていた。

(うわー、こりゃしんどいかなー?)

 雷が先程立っていた場所を見ると、そこには少しばかり小さな穴が空いていた。

「まだまだこれで驚かれては困るぞ」

 グリードは先程のボディブローはもう何とも無いかのようにそう言った。

「いやはや、こりゃ俺も本腰を入れねーといけねーみたいだな、負けたら兄貴がうっさいからなぁ」

 そう言うと構えたままステップを踏み出した、左拳を少し前に出し、一定のリズムを踏んでグリードの周りを回り出した。
 雷がグリードの背後に入った瞬間、グリードが振り向きざまに剣を振り下ろした、だがそこに雷はいなかった。

「?!」

 一瞬考えた後、気配がする方に目線をやるとそこには今から右ストレートを打とうとする雷の姿があった。
 放たれた雷の右ストレートを剣でガードするグリード、衝撃に耐えきれず後に飛ばされてしまった。

(なんという威力だ、両手で剣を抑えられなければ剣が吹き飛ばされていた、いったいどの様な拳をしているのだろうか)

 体制を整えると、剣を構え直すグリード。

「.........................」

 それを見ると雷も構え直した。
 お互いにジリジリと距離を詰める、自分の距離まで。

(次で決まる、しっかり勝てよ雷)

 真琴は予測をした、どちらに軍配が上がるのかどうかを。

「うおぉぉぉぉ!、剣舞、根性穿ちこんじょううがち!」

 先程同様、グリードの剣に気の様な物が纏い赤く染まった、その剣を突き出し突進をしてきた。

「わりぃな、この勝負俺の勝ちだ」

 突進してくるグリード剣を左手で受け流した。

「なにぃ!?」

 流石にこれにはグリードも驚きを隠せなかった。
 そして、そのまま雷は空いたグリードの顔面に目掛けて右ストレートをぶちかまそうとした瞬間、雷の拳が炎に包まれた。

「おーらぁ!」

 雷は気づかずそのグリードを殴り飛ばした、訓練場の壁まで飛ばされてしまった。

「そ、それまで、勝者雷殿」

「いよっしゃゃゃッ!、兄貴ぃー!勝ったぞー!」

 唖然としていた審判騎士が慌てて出した合図で決闘が終わった、雷は右手を上に上げて喜んでいた、未だに燃えたまま。

「雷ぃー!、右手右手!」

「え?、みぎて..........」

 真琴に指摘され自分の右手を見る雷、一瞬で顔から笑顔が消えた。

「なんじゃこりゃゃゃゃゃゃゃ!!!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...