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僕が守るね
第127話
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冬音ちゃんはしばらく保健室で休んだ。
「……武雪く~ん。」
「なに?」
「……お腹すいたねぇ。」
「そうだね。もうすぐ午前の部は終わるよ。」
「そうみたいねぇ……。」
僕の手を握る、白くて細い指にドキッとした。いつの間にか、僕は男に、冬音ちゃんは女の子になってしまったんだ。昔は感じたことなかった、冬音ちゃんとの体格差、身長差、声の高さの差。ずっとずっと、仲良しこよしの幼なじみのままは無理なんだろうか。
「……武雪くんはさぁ、彼女とか作らないの?」
「うーん……考えたことなかったなぁ。」
好きなのは冬音ちゃんなんだから、彼女にするなら君だよなんて言えないけど。
「武雪くん、ほんとに私のこと好き?」
「どうして?」
「よく考えてみてよ……私なんかと、ち、チューとか、したいと思うの?」
「……。」
冬音ちゃんの唇を見つめる。だ、ダメだ。中学生男子には刺激が強すぎるよ……!
「お、思うの?」
「……思うかも。」
冬音ちゃんは両手で自分の顔を覆った。か……かわいい……。
「……自分でもおかしいと思うのよ?幼稚園の時から、武雪くん以外の男の子、好きになったことないんだもん。おかしいよねぇ……。」
「僕も同じだから、おかしいか分からないや。」
「……そっか、たしかにね。」
冬音ちゃんは微笑んで、僕の手をそっと自分の口元に近づけた。少し躊躇った後、軽く口づける。
「……!」
「えへへ……。」
手に当たった唇の感触に、心臓が踊り狂っている。
「ふ、冬音ちゃん、あの……は、恥ずかしいよ。」
「いいじゃん。好きなんだもん。」
「っで、でも……。」
冬音ちゃんは、うふふと笑って体を起こした。
「あっ、体調は?」
「もうだいぶいいよ。ありがと。」
外では、午後の部の開始時刻を先生がお知らせしている。
「お昼ごはんの時間になっちゃったね。行こっか、冬音ちゃん。」
「うん。どこ?」
「たしか体育館とか言ってたような気がする。」
手を繋いで、保健室を出た。手を繋ぐことに、ためらいも恥じらいもなかったのは昔の話。今は、躊躇も羞恥心もあった上で手を繋いでいる。
「……た、武雪くんの手のひら、熱いよぉ。」
「冬音ちゃんの方が熱いよ。」
まだ足元がおぼつかない。
「大丈夫?」
「うん、武雪くんと居るからドキドキしてるの。」
「そ、そう。」
昔は、守られていることの方が多かった。今は守れるようになったんだなぁと思う。
「僕が守るね。」
「えっ……えへへ、ありがと。」
結局、優勝は黄組だった。
祐「負けたなぁ~。」
ぽ「負けちゃったねぇ。」
冬「来年だね!」
紅「来年は違うクラスかもだけどね。」
祐「あっ、そうか。」
ぽ「いやだねぇ。」
冬音ちゃんは、すごく元気そうだった。お昼前に倒れたとか聞いたから心配したけど、中村くんに助けて貰ったらしいし、冬音ちゃんは無事だし、いいこと尽くしじゃない。
祐「じゃあな!」
冬「ばいばーい!」
ぽ「あ、ばいばい!」
紅「また月曜日~。」
祐美ちゃんも冬音ちゃんは左へ、私とぽぽは右へ曲がる。
「楽しかったねぇ。」
「そうだね。」
「うーちゃん、もみじちゃんが1番で嬉しそうだったよ。」
「見ててくれたんだ。」
「わたしとふーちゃんは忙しかったから見れなかったんだよねぇ。」
ぽぽは私の手を握りしめた。
「明日さ、遊ぼ?」
「うん、いいよ。」
嬉しそうに頭から音符を飛ばすぽぽ。私はその頭をそっと撫でた。
○本日の出演キャラ
・中村 武雪
・小林 紅葉
・中村 冬音
・鈴木 ぽぽ
・山田 祐美
To be continued…
「……武雪く~ん。」
「なに?」
「……お腹すいたねぇ。」
「そうだね。もうすぐ午前の部は終わるよ。」
「そうみたいねぇ……。」
僕の手を握る、白くて細い指にドキッとした。いつの間にか、僕は男に、冬音ちゃんは女の子になってしまったんだ。昔は感じたことなかった、冬音ちゃんとの体格差、身長差、声の高さの差。ずっとずっと、仲良しこよしの幼なじみのままは無理なんだろうか。
「……武雪くんはさぁ、彼女とか作らないの?」
「うーん……考えたことなかったなぁ。」
好きなのは冬音ちゃんなんだから、彼女にするなら君だよなんて言えないけど。
「武雪くん、ほんとに私のこと好き?」
「どうして?」
「よく考えてみてよ……私なんかと、ち、チューとか、したいと思うの?」
「……。」
冬音ちゃんの唇を見つめる。だ、ダメだ。中学生男子には刺激が強すぎるよ……!
「お、思うの?」
「……思うかも。」
冬音ちゃんは両手で自分の顔を覆った。か……かわいい……。
「……自分でもおかしいと思うのよ?幼稚園の時から、武雪くん以外の男の子、好きになったことないんだもん。おかしいよねぇ……。」
「僕も同じだから、おかしいか分からないや。」
「……そっか、たしかにね。」
冬音ちゃんは微笑んで、僕の手をそっと自分の口元に近づけた。少し躊躇った後、軽く口づける。
「……!」
「えへへ……。」
手に当たった唇の感触に、心臓が踊り狂っている。
「ふ、冬音ちゃん、あの……は、恥ずかしいよ。」
「いいじゃん。好きなんだもん。」
「っで、でも……。」
冬音ちゃんは、うふふと笑って体を起こした。
「あっ、体調は?」
「もうだいぶいいよ。ありがと。」
外では、午後の部の開始時刻を先生がお知らせしている。
「お昼ごはんの時間になっちゃったね。行こっか、冬音ちゃん。」
「うん。どこ?」
「たしか体育館とか言ってたような気がする。」
手を繋いで、保健室を出た。手を繋ぐことに、ためらいも恥じらいもなかったのは昔の話。今は、躊躇も羞恥心もあった上で手を繋いでいる。
「……た、武雪くんの手のひら、熱いよぉ。」
「冬音ちゃんの方が熱いよ。」
まだ足元がおぼつかない。
「大丈夫?」
「うん、武雪くんと居るからドキドキしてるの。」
「そ、そう。」
昔は、守られていることの方が多かった。今は守れるようになったんだなぁと思う。
「僕が守るね。」
「えっ……えへへ、ありがと。」
結局、優勝は黄組だった。
祐「負けたなぁ~。」
ぽ「負けちゃったねぇ。」
冬「来年だね!」
紅「来年は違うクラスかもだけどね。」
祐「あっ、そうか。」
ぽ「いやだねぇ。」
冬音ちゃんは、すごく元気そうだった。お昼前に倒れたとか聞いたから心配したけど、中村くんに助けて貰ったらしいし、冬音ちゃんは無事だし、いいこと尽くしじゃない。
祐「じゃあな!」
冬「ばいばーい!」
ぽ「あ、ばいばい!」
紅「また月曜日~。」
祐美ちゃんも冬音ちゃんは左へ、私とぽぽは右へ曲がる。
「楽しかったねぇ。」
「そうだね。」
「うーちゃん、もみじちゃんが1番で嬉しそうだったよ。」
「見ててくれたんだ。」
「わたしとふーちゃんは忙しかったから見れなかったんだよねぇ。」
ぽぽは私の手を握りしめた。
「明日さ、遊ぼ?」
「うん、いいよ。」
嬉しそうに頭から音符を飛ばすぽぽ。私はその頭をそっと撫でた。
○本日の出演キャラ
・中村 武雪
・小林 紅葉
・中村 冬音
・鈴木 ぽぽ
・山田 祐美
To be continued…
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