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52 思い出したこと

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 いつも通り、家に帰ってきた。叶矢とスコルピーの2人で。つかの間の歪みが嘘だったかのように。
「きょうや。お腹空いた?」
「え、俺?……いや、別に。お腹空いた?」
「うん。空いた。お昼あんまり食べてないもん。」
「そっか……。何食べる?」
「アーモンド。」
「だろうね。」
ソファに座り、アーモンドを食べる。
「ねぇ、きょうや。」
「ん?」
「……すー、全部、思い出したの。」
「うん……?」
「……全部。……家族の事も、すーの過去も、全部……。」
「っ!」
スコルピーがしゃがみ込んだ。叶矢が慌ててスコルピーを自分の膝に乗せる。
「……でも、まだ頭がまとまってないからね、明後日あさってくらいに話していい?」
「う、うん。いつでも良い。すーが話したい時で。話したくなかったら、話さなくても良い。」
「……ううん、話す。もっと、すーの事知って欲しい。……きょうやの事も、もっと知りたい……。」
スコルピーに抱きつかれ、叶矢は目を逸らした。一度、意識し始めると無意味に照れてしまう。
「きょうやの心臓の音、ここまで聞こえるよ?」
「……そ、そう。」
「きょうや。」
「……何。」
「すーの事、好き?」
「……うん、好き。」
スコルピーは嬉しそうに叶矢の腹部に頬ずりした。

 そして、約束の"明後日"。午後10時。叶矢と泉歌はソファに座り、スコルピーはテーブルに立っていた。
「えっと、まず……すーには、家族が5人いました。ヒトになぞらえて言うと、お母さんのシータ、お父さんのイプシロン、兄弟のセルペンティス、ボレアリス、レサト。すーとみんなは、すごく仲良しで、楽しく暮らしてた。でも、ある日、家に、エンルフがやって来て……。」

 大きな一軒家。その家の3倍近くある、エンルフ。狼のような鋭い牙と、鷹のような鋭い目。村にはエンフル対策の高い塀があった。しかし、通常より大きなエンフルには、ものともしなかった。エンルフに襲われた平穏な家族。次々と食い荒らされていく、吸血小人たち。生き残ったのは2番目の子、スコルピーだけだった。

「……すーの家族は、もう、誰もいないの……。」
スコルピーはそう言って、叶矢と泉歌の顔を見た。他人事とは思えない。突然、家族が居なくなる事。それがどんな事か、2人はよく知っていた。
「……途方に暮れて、彷徨さまよって、地球に繋がる穴に堕ちた。頭を打って記憶が無い。食べるものも無い。住む場所も無い。気が付くと、体は雨で冷えてた。すーは、どうしようもなくて、眠った。その時、2人が拾ってくれたんだよね。」
スコルピーの笑顔があまりにも切なくて、2人は何も言えなかった。


To be continued…
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