上 下
7 / 42

7.夕焼け色のあなたの顔

しおりを挟む
 ジェットコースター組が帰って来た。
「おかえり~。」
「ただいまぁ!」
いのりちゃん、大はしゃぎ。
「楽しかった?」
「うんうん!」
「いやぁ、怖かったぁ……。」
茉琴が珍しくぶるぶるしてる。
「凄かったね!」
八神くんも楽しそう。似た者幼馴染だね。
「佐和田くんが暑さで溶けそう。」
「怜~、まだ5月だし、そんなに暑くないだろ~。」
「僕からしたら、部屋より暑いところは全部暑いんだよ。」
「あ、暑がりを極めてる!」
あ、茉琴が復活した。
「次は優しめなの行こうよ!メリーゴーランドとか。」
「優しすぎる……!」
「佐和田は空中ブランコ所望で。」
「あ!わたしも空中ブランコ乗りたーい!」
「じゃあ空中ブランコで。」
空中ブランコに乗った。茉琴といのりちゃんのご厚意により、私は佐和田くんの隣に座ることになっちゃったから、吊り橋効果がすごすぎて、何にドキドキしてるのか全然分かんなかった。
「あー、楽しかったね。」
とりあえず頷く。ぶんぶん頷く。
「やっぱ、休みの日に会うと知らない一面を結構見るよね。」
「そ、そう?」
「うん。瑞木さんってものすごくしっかり者ってイメージだったけど、案外普通っぽくて安心した。」
「普通だよー?私。」
「うん、どうもそうみたい。」
普通じゃないと思われてたんだ……。

 なんだかんだで、色々なアトラクションで遊んだ。お化け屋敷は入れる人がいなくて、断念したけど。そうそう、途中でお昼ご飯も食べた。
「お、ハンバーガーあるんだな、ここ。」
「ハンバーガー食べたい!」
「ハンバーガーで良い~?」
いのりちゃんが後方を歩いてた私と佐和田くんに訊く。
「うん、いいよ~。」
「僕もなんでも。」
「じゃあ、ハンバーガーで!」
いや、でもよく考えたら、ハンバーガーかぁ……綺麗に食べないとだね……!って思って、頑張ってたら、佐和田くんに、
「瑞木さん食べるの上手だね。」
って言ってもらえたよ……泣けるね……。そういえば、お昼ご飯の直後にちょっとした修羅場も。
大翔ひろと!?」
急に大きな声を出した茉琴は、前を歩くカップルに近づいた。あれ……あの人、茉琴の彼氏さんじゃ……?
「わ、ま、マコト!?」
「やっほー、久しぶり。」
「ひ、ひさ、しぶり。」
彼氏さんの彼女さんらしき人がキョトンとする。
「どなた?」
「あ、友達です!中学の同級生で。」
茉琴、にこっ。彼氏さん、申し訳なさそうな顔。
「じゃあね、大翔。楽しんで~。」
後からメッセージが届いたみたいだったけど。
「なんて送られてきたの?」
「『茉琴、さっきはごめん。本当にありがとう。正直に言います。4股かけてます。』逆にすごいわ!」
よ、4股……!?
「"そうなんだね。じゃあ、私とは別れてください。ただ、大翔はそのうち彼氏ができそうな顔なので、連絡先は保存しておくね。彼氏できたら最初に私に教えてね。"っと。」
「最後がおかしい……。」
茉琴はにこにこして携帯を閉じた。つ、強い……。男子たちがすごいびっくりした顔してた。
「4股もかけたら俺、頭がこんがらがるかもな。」
「あの人、頭良いんだろうね……。」
結局、茉琴と彼氏さんはお別れしました。すぐに。

 帰り道。
「あ、あたしこっち。」
「わたしはあっち。」
「俺らはまっすぐだよな。」
「うん。」
左に茉琴、右にいのりちゃん、真っ直ぐ方向に私と佐和田くん、八神くんで別れた。
「ばいばーい!」
「楽しかったねー!」
「気をつけてー!」
手を振って別れる。
「いやぁ、4股は本当にびっくりだよな。」
八神くんがしみじみとそう言った。
「ね~。茉琴も気が付かないもんなのかな?」
「……。」
「怜?大丈夫かー。」
「……意識飛んでた。」
「えっ、大丈夫!?」
「休日に歩き回ることが無さすぎて……。」
「良かったじゃん、たまには。」
「うん。……楽しかった。」
「そりゃ良かった。俺も楽しかったぜ。」
「ねー。また5人で遊びたいね。」
「うん、遊びたい。」
「お?怜がそんなこと言うなんて、珍しいな?」
「うん。楽しかったからね。」
本当にちょっと嬉しそうで、微笑んでるってほどじゃないけど、緩んだ表情。初めて見た顔。佐和田くんの言う通り、今日は知らなかった表情をたくさん見れた。怖がってるとか、嫌がってるとか、美味しそうな顔とか、楽しかった表情とか。もっともっと色んな顔が見たい。色んな顔を見て欲しい。傾きかけた夕暮れに照らされた佐和田くんの横顔を見ながら、私はそう思った。


To be continued…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

離婚ですね?はい、既に知っておりました。

杉本凪咲
恋愛
パーティー会場で、夫は離婚を叫ぶ。 どうやら私が他の男性と不倫をしているらしい。 全くの冤罪だが、私が動じることは決してない。 なぜなら、全て知っていたから。

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...