国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

オミト包囲網

オミト達が逃げ回っている頃、クーデター軍の首領であるブラホードもまた行動していた。


「制圧の状況はどうだ？」


「一進一退といったところです。思わぬ抵抗が入っています」


「まぁ、予想の範囲内だな。だが、指揮系統が備わっていない今のうちに徹底して攻勢に出ていれば、いずれ均衡は崩れる。予定通りに攻め続けろ」


「はっ！」


クーデター軍はまだルーデル領を制圧し切っていなかった。
だが、勢いはあるとブラホードは見ている。

だが、それでも懸念材料があった。
タルカスとオミトの存在である。

今は元より副騎士団長であるブラホードが指揮を駆るクーデター軍に勢いがある。
だが、騎士団長のタルカスや、それに準じて人望のあるオミトが指揮系統に加わると押し返される危険性があった。

タルカスについては、クーデターを想定してあらかじめ弱体化をさせていたのであまり問題はない。戦場に出て指揮を執るにしても限界があるだろう。

だが、いまだにオミトだけは健在だ。
だからブラホードはオミトをどうにか潰しておきたかった。


「オミトのほうはどうしてる？」


「我々の誘導する方向へ、移動しているようです」


「・・・よし」


ブラホードはオミトを確実に無効化するために、実は網を張っていた。
クーデターの発端そのものが突発であったために、急ごしらえで罠を画策するのは難しかったが、どうやらオミトが思い通りに動いてくれているようでブラホードは胸を撫で下ろす。


「よし、それでは仕上げに入るか」


ブラホードは精鋭の配下を従えて馬を走らせる。
単身ではオミトに敵わないまでも、数人なら時間稼ぎくらいは出来るくらいの腕前を持った騎士だった。
それを十数名ブラホードは引き連れている。オミトを仕掛けるポイントまで誘い出せば、確実に制圧できる布陣だ。


「いけるぞ・・・」


ブラホードの思う勝利の条件達成は目前まで来ていた。

予想外のことはあったが、それでも綱渡りを制してどうにか勝つことが出来そうだ・・・
ブラホードはそう思い、いささか浮足立っていた。