335 / 470
緊迫した帰港
しおりを挟む
ミルツが報告を受けてから二時間後・・・
マルセイユの港にソーアの乗る戦女神の母艦が帰港した。
それを呆然と眺めているのは、ソーアが死ぬはずだったことを知っていた大将ミルツを含む一部の人間。彼らの顔は皆一様に青ざめていた。
報告は何かの間違いではないか?
この戦女神の母艦はただ鹵獲したものではないか?
皆、そんなことを考えていた。
だが、彼らの思っていた通りにはならなかった。船から降りてきたのは、紛れもなく死ぬはずだったソーア・マルセイユだった。特に捕らえられている様子もない。
ソーアはサーラの罠をかいくぐり、生還したことが明らかとなったのだ。
「では・・・サーラ様は・・・!?」
斬首されたと報告を受けていても、ミルツには信じられなかった。
マルセイユの次期当主として、絶対的な力を持ち、忠誠を使ったサーラが死んだなどとは考えも及ばなかったのである。
「・・・はっ!?」
ミルツは視線を感じた。
それはソーアからの視線だった。冷たく、それでいて激しく怒気を孕んだ彼女の目を見て、ミルツは背筋が凍る思いをする。
歴戦の勇者であるミルツが小娘であるはずのソーアに気迫負けするなど、あってはならないことであるはずだが、それでもミルツには今のソーアに眼力で到底勝てる気がせず、つい目を逸らしてしまった。
(知っている!ソーアは自分がサーラ様の計画に加担していることを知っている!)
戦女神殲滅のための武装船団は鹵獲した海賊船や民間船を改造したものだが、搭乗員はミルツの息のかかった青の騎士団員であった。
包囲網を破り、船団を返り討ちにしたというのなら、生き残った搭乗員一人でも締め上げればミルツが関わっていたこともバラしてしまっている可能性が高かった。
「かくなる上は・・・」
ミルツは今、この港に自分の配下が多くいることを把握していた。
こうなれば、数の力をもって今この場でソーアを殺してしまうしかない。そう考えた。後のことはどうとでもなる・・・どうとでもして見せる。
これから自分に降りかかる制裁などを考えれば、どれだけ苦しくても誤魔化しきってみせると。
「殺せ」とミルツが指示を出そうとした時だった。
ソーアはミルツ達が思いもよらない行動に出たのであった。
マルセイユの港にソーアの乗る戦女神の母艦が帰港した。
それを呆然と眺めているのは、ソーアが死ぬはずだったことを知っていた大将ミルツを含む一部の人間。彼らの顔は皆一様に青ざめていた。
報告は何かの間違いではないか?
この戦女神の母艦はただ鹵獲したものではないか?
皆、そんなことを考えていた。
だが、彼らの思っていた通りにはならなかった。船から降りてきたのは、紛れもなく死ぬはずだったソーア・マルセイユだった。特に捕らえられている様子もない。
ソーアはサーラの罠をかいくぐり、生還したことが明らかとなったのだ。
「では・・・サーラ様は・・・!?」
斬首されたと報告を受けていても、ミルツには信じられなかった。
マルセイユの次期当主として、絶対的な力を持ち、忠誠を使ったサーラが死んだなどとは考えも及ばなかったのである。
「・・・はっ!?」
ミルツは視線を感じた。
それはソーアからの視線だった。冷たく、それでいて激しく怒気を孕んだ彼女の目を見て、ミルツは背筋が凍る思いをする。
歴戦の勇者であるミルツが小娘であるはずのソーアに気迫負けするなど、あってはならないことであるはずだが、それでもミルツには今のソーアに眼力で到底勝てる気がせず、つい目を逸らしてしまった。
(知っている!ソーアは自分がサーラ様の計画に加担していることを知っている!)
戦女神殲滅のための武装船団は鹵獲した海賊船や民間船を改造したものだが、搭乗員はミルツの息のかかった青の騎士団員であった。
包囲網を破り、船団を返り討ちにしたというのなら、生き残った搭乗員一人でも締め上げればミルツが関わっていたこともバラしてしまっている可能性が高かった。
「かくなる上は・・・」
ミルツは今、この港に自分の配下が多くいることを把握していた。
こうなれば、数の力をもって今この場でソーアを殺してしまうしかない。そう考えた。後のことはどうとでもなる・・・どうとでもして見せる。
これから自分に降りかかる制裁などを考えれば、どれだけ苦しくても誤魔化しきってみせると。
「殺せ」とミルツが指示を出そうとした時だった。
ソーアはミルツ達が思いもよらない行動に出たのであった。
10
お気に入りに追加
640
あなたにおすすめの小説
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜
蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。
しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。
だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。
アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。
実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。
その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。
なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。
無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。
アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる