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波乱のルーベルト家
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キアラの父であり、ルーベルト公爵家当代当主であるダグラス・ルーベルトは苛立っていた。
執務の無い時間は何をするわけでもなしにせわしなく屋敷中を歩き回り、どこか掃除でもなんでもアラを見つけては使用人を怒鳴り散らしていた。
「一体どうしたというんだ・・・」
家令はそんなダグラスを見て頭を悩ませる。
元々神経質な方であったダグラスだが、ここ数日は常に苛立っている。
一週間と少し前・・・王城での御前会議の前日、元婚約者のショウ・ルーデルの乱心によりキアラはあろうことか王城の一室で乱暴されそうになった事件があった。
それによりショウとキアラの婚約が自動的に破棄となったときは、ダグラスはこの上なく上機嫌であった。
だがそれから時間が経つにつれ、ダグラスは何かを待ちわびるようにしていたが、待つものが来ないのか、徐々に彼は焦りからか心に余裕を持たなくなっていった。
この数日で運悪くダグラスの怒りに触れ、首になった使用人が何人もいる。
普段なら決してそこまでしないようなダグラスがそこまで心を乱しているのは何なのだろうと、家令は本人に直接聞きたい気持ちに駆られそうになったが我慢した。今度は自分の首が飛びかねないからだ。
「それにキアラお嬢様・・・」
家令の悩みの種はもう一つあった。王城の事件以来、ずっと部屋に引きこもっているキアラのことである。
図書館や書店から魔導書を取り寄せてはひたすら読み漁り、食事は部屋に持ってこいと言うし、強く言わないと湯あみも自分からは言い出さない有様である。
世界に名の轟いた天才魔法使いであり勤勉であるキアラは、これまでも毎日時間を取って魔導書を読んで魔法の研究をしていた。
魔導書は著者の解釈の分だけ存在する。となるとランドールだけでも何千冊と存在するので、それらですら早々全て読み切るなんてことはないのだが、今のキアラはそれを成し遂げようとしているかのように魔導書を読み漁っていた。ランドールのものが無くなれば、今度は国外にあるものを取り寄せようとするではないだろうか。
周りに当たり散らさないだけ現状はダグラスよりは害はない。だが、命を削るように本を読み漁るキアラが心配でならなかった。これで倒れられた日には結局ダグラスの怒りが爆発する。
王城で何があったのか。この屋敷の使用人は誰一人として詳細は知らない。
だが、そこで起きたことが恐らくこの二人を変えたきっかけになったのだろうと予測はついていた。
しかしそれも調べる方法がないわけで、家令はただただこの陰鬱な毎日が終わってくれないかと願っていた。
執務の無い時間は何をするわけでもなしにせわしなく屋敷中を歩き回り、どこか掃除でもなんでもアラを見つけては使用人を怒鳴り散らしていた。
「一体どうしたというんだ・・・」
家令はそんなダグラスを見て頭を悩ませる。
元々神経質な方であったダグラスだが、ここ数日は常に苛立っている。
一週間と少し前・・・王城での御前会議の前日、元婚約者のショウ・ルーデルの乱心によりキアラはあろうことか王城の一室で乱暴されそうになった事件があった。
それによりショウとキアラの婚約が自動的に破棄となったときは、ダグラスはこの上なく上機嫌であった。
だがそれから時間が経つにつれ、ダグラスは何かを待ちわびるようにしていたが、待つものが来ないのか、徐々に彼は焦りからか心に余裕を持たなくなっていった。
この数日で運悪くダグラスの怒りに触れ、首になった使用人が何人もいる。
普段なら決してそこまでしないようなダグラスがそこまで心を乱しているのは何なのだろうと、家令は本人に直接聞きたい気持ちに駆られそうになったが我慢した。今度は自分の首が飛びかねないからだ。
「それにキアラお嬢様・・・」
家令の悩みの種はもう一つあった。王城の事件以来、ずっと部屋に引きこもっているキアラのことである。
図書館や書店から魔導書を取り寄せてはひたすら読み漁り、食事は部屋に持ってこいと言うし、強く言わないと湯あみも自分からは言い出さない有様である。
世界に名の轟いた天才魔法使いであり勤勉であるキアラは、これまでも毎日時間を取って魔導書を読んで魔法の研究をしていた。
魔導書は著者の解釈の分だけ存在する。となるとランドールだけでも何千冊と存在するので、それらですら早々全て読み切るなんてことはないのだが、今のキアラはそれを成し遂げようとしているかのように魔導書を読み漁っていた。ランドールのものが無くなれば、今度は国外にあるものを取り寄せようとするではないだろうか。
周りに当たり散らさないだけ現状はダグラスよりは害はない。だが、命を削るように本を読み漁るキアラが心配でならなかった。これで倒れられた日には結局ダグラスの怒りが爆発する。
王城で何があったのか。この屋敷の使用人は誰一人として詳細は知らない。
だが、そこで起きたことが恐らくこの二人を変えたきっかけになったのだろうと予測はついていた。
しかしそれも調べる方法がないわけで、家令はただただこの陰鬱な毎日が終わってくれないかと願っていた。
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