新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

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最後の共闘

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ファイア・ゲイジこのレイツォ容赦せん!」


俺は魔術を使い、押し寄せる魔族をひたすらに殲滅する。
ディオと甲冑の魔族との戦いは熾烈なものになっているらしく、完全に二人の世界に入ってしまっている。そこに水を差さないためにも俺は必死に戦っていた。

以前まだバリーさん達がいたときの四人で魔王山に突入したときと同じくらいの頻度で魔族が襲ってくる。あの時は必死ではあったがまたバリーさん達がいたからそれほど恐ろしくはなかった。だが今は一人だけ・・・しかもあの時より魔力は衰えている。状況からすれば絶望的だった。


だが、俺は不思議と今こうして戦っていることに心が満たされているのを感じていた。
ずっと負け続けていた相手であるディオ。プライドを捨て、謀略に走り、それでも排除に失敗して結局また叩き伏せられて負ける。そんな惨めではあるが完膚なきまでに完敗したことに対してすっきりして憑き物が落ちたせいなのか。手を尽くしても勝てない偉大なディオに、実は認めてもらっていたことを知った喜びのせいなのか。

嗚呼、もしかしたら俺は潜在的にホモなのかもしれない。


ディオに認められた喜びが、俺に自信を与えてくれたのだろうか。体に宿る魔力自体は前より下がったというのに、発動された魔術のキレは抜群であった。今の俺はもしかするとアリスから力を与えてもらっていたときのそれよりも強いのかもしれん。
ディオが俺を強くした。
ディオに負け続け、自信を無くコンプレックスに苛まれ続けていた時の俺とは違う。


「くらってくたばれサンダーストーム!」


俺の電撃魔術が発動し、俺の眼前一面にいる全ての魔族が焼き払われる。
何百といたように感じた魔族は、いつの間にか一体も姿を見せなくなった。しかし気配そのものは離れたところから感じる・・・それでもなお来ないということは、どうやら次から次へと魔族を薙ぎ払う俺を見て、恐れをなして寄って来なくなったということではないか?

しばらく様子を見たが、それでも魔族は遠巻きにこちらの様子を伺っているだけで、寄ってくる様子はない。どうやら俺の推測は当たっているようだった。
アリスは魔族を従える力を持つというが、その力を越えるほどの死の恐怖を前に魔族も俺に挑む気が失せたのだろう。もしくはこれまで人間として生きてきたアリスの力は、まだ魔王の力に慣れず完全ではないのかもしれない。


「よくやってくれたレイツォ」


ふと気が付くと、ディオのほうも既に勝敗がついているようだった。ディオは笑顔を向けて手を顔の高さまで上げて見せる。俺はそれを見て「フッ」と笑い、そしてその手をハイタッチする。


勝てないなぁ、本当に勝てる気がしない。


俺はディオには絶対に勝てないのだと、諦めの感情を抱いた。だが、悪い気はしなかった。
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