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弱き者なりの矜持  ~騎士団長目線~

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私の名はミカエル・シューマッハ。
ルーチェ国の騎士団であり、そして今は臨時の最高権力者・・・と思っていた。

国王殺しのディオを追って、私は一人魔王山へとやってきていた。
元よりアリス様をストーキングするのが趣味であった私には、ディオに気付かれることなく尾行することくらいわけが無かったが、魔王山にて私にはアリス様の口からとんでもないことを耳にしてしまう。


「る、ルーチェ国を滅ぼすだって・・・?」


私を含め、ルーチェ国の民が情けないことに幻滅し、一旦リセットして新たにやり直すと言っていたぞ?
ふざけている!我々は積み木の玩具ではないのだ。気に入らないからと簡単にリセットさせられてはたまったものではない。

「許さん!」

気が付けば私は駆けていた。
ルーチェ国の王都へ。そう、来た道を大急ぎで戻っていたのだ。
急いで王都へ戻り、この危機を伝えなければならない。

ん?怒りに身を任せてアリス様に飛び掛からなかったのかって?
そんなことはしない。私など一瞬で八つ裂きにされてしまうことが手に取るようにわかるからだ。

私は自分の無力を自覚している。故に自分に出来ることの限度というものがわかっている。
私は自分に出来る事のみをやるのだ。無理にできないことをやろうとする必要はないのだ。
無力故の最善の選択・・・私は私に出来ることのみをもってアリス様に抗って見せる。


「帰還石!」


私は王都に一瞬で戻ることの出来る魔石を使って王都へ帰還した。


「き、騎士団長!一体どうされたのですか!?」


脱走するディオとの戦いでボロボロになって山積みになった騎士を片付けていた騎士が、突然王城の中庭に現れた私を見て驚愕した。


「緊急事態だ!ただちに王都防衛の準備をしろ!!」




戒厳下であることが功を無し、私の一存で王命に並ぶレベルの防衛指示を発令することができた。
私の命令をもって全軍が王都の防衛のために動こうとしていた。なお、本当に防衛できるかは未知数である。

「アリス様・・・確かに我々は貴方から見て情けない民かもしれない。しかし、ただやられるわけにはいかない。貴方の言う弱くて無様な我々でも、出来ることはあるということを見せつけてくれましょう」


私は魔王山を遠くに見やり、そう呟いた。
そのときだった。


「騎士団長!現在、ディオとの交戦で戦闘不能になっている騎士が全体の約半数おります」


部下のそんな報告を聞き、私はガクッと膝が折れた。
うーん、これは駄目かもしれない。
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