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結界は割れるもの ~ウラエヌス目線~
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ディオに幻覚魔術をかけて操ったのは恐らくレイツォ。
ワシは驚愕したが、ディオはそれとは比較にならないほどショックを受けているようだった。当然だ。死んだと思った親友の手によって自分が冤罪をかけられたのだから。そしてそれによって処刑されようとしているのだから。
「一体どうしてレイツォがそんなことをしたのか・・・確かめようにもこの状況では・・・」
呆然としていると、ドカドカと複数の足音が慌ただしくワシらのいる牢獄へ近づいてきた。
見るとルーチェ国騎士団の魔術師団の者達であった。
「ウラエヌス!邪魔だから貴様は隣の牢へ移れ!」
「は?(憤怒)」
突然やってきて邪魔者扱いされ、ワシは半ギレのパフォーマンスを見せたが、無理矢理隣の牢へ移されてディオと離れ離れにされてしまった。一体何をするつもりなんじゃ。
「「「・・・・・ぶつぶつぶつ」」」
魔術師達は延々と詠唱を続けている。数時間ぶっ通しでやり続けている。
ははぁ、何やら大規模な魔術を発動しようとしとるな?ワシの専門外の魔術であるようだが、それでもワシにも分かるくらいあまりにもアラの多い術式に、思わず苦笑いしてしまう。
ルーチェの魔術師団のレベルは本当に知れているなとワシは思った。リーン国の一介の冒険者でももう少し効率的な術式を組むことができるだろう。
この国は医学薬学どころか魔術のレベルも底辺だと聞いたことがあるが、どうやらそれは事実だったようだ。
何も優れているところがないこのルーチェ国・・・魔王どころかそのうち他国にもあっさり滅ぼされてしまいそうだ。
「「「ぶつぶつぶつ・・・」」」
それでも数人が長時間かけて練り上げる術式はアラが多くお粗末ながらも強力であることだけはわかった。魔術が完成したときにはどれだけの力を持つ術式が出来ているのか知らないが、恐らくワシ一人では解除できないほどの強い何かが出来上がっているだろう。
どうせワシもディオもただ処刑を待つ身である。のんびりとワシは隣の牢から見物することにした。
「・・・なっ・・・」
翌日、長い長い時間をかけてようやく出来たであろう魔術を見てワシは驚きの声を上げた。
ディオの牢が結界魔術によって封印されていたのだ。これでディオは何があっても向こうから出ることは出来ない。だが、ワシが驚いたのはそこではなかった。
「ふふ、封印魔術に詳しくない貴方でもわかるでしょう?この結界のすさまじさは」
徹夜明けでテンションがハイになっているであろう魔術師のリーダー格の男が、ワシに成果物の自慢をしたいのか話しかけてきた。なるほど、魔術師団が組織ぐるみで開発した新型の結界だというわけか。何故かは知らんがディオをワシ以上に厳重に閉じ込めておきたいらしい。
「・・・はぁ」
思わずため息をつくワシに、魔術師は得意げに笑みを浮かべた。
「どうしました?あまりの出来に声も出ませんか?」
ドヤ顔をして言ってのける魔術師に対し、ワシはつい思っていることを述べてしまった。
「図体がでかいだけでなんて無駄が多くて精度が荒い結界じゃ。ポイントを絞って丁寧に術式を組まないから、ガタイがいいだけで張りぼてみたいなものじゃぞ?これから複雑な術式で中和しなくとも、力任せの魔力をそのままぶつけるだけでパリーンと砕け散る。お前あれか?結界の類はダメージを受けて限界を迎えると割れるというイメージを抱いている世代か?」
魔術師はワシの言葉を聞いて最初は「ポカーン」としていたが、やがて顔を真っ赤に染めると烈火の如く怒りだした。
「貴様!老いぼれの分際で私達の傑作を貶すか!!痛めつけてやる!!」
「いやだって時間かけてこの有様じゃろ?ギャグとしか・・・」
「うるせぇ!」
魔術師達は愚かにも討論でワシをねじ伏せることはなく、力による制圧という選択をした。こいつら本当に国が抱える魔術師なんか・・・本当にこの国の未来は暗い。魔王を倒すどころか満足に魔族の討伐も進まなかった理由がわかるわい。
「お前が!泣くまで!殴るのを!やめない!」
ドコッ バキッ
「や、やめてくれ~ そ、そこだけは・・・アッーー!」
ワシは魔術師達にボコボコにされた。
そして結界の中にいるディオと隣り合わせのまま、ワシは処刑の日を迎えることになった。
ワシは驚愕したが、ディオはそれとは比較にならないほどショックを受けているようだった。当然だ。死んだと思った親友の手によって自分が冤罪をかけられたのだから。そしてそれによって処刑されようとしているのだから。
「一体どうしてレイツォがそんなことをしたのか・・・確かめようにもこの状況では・・・」
呆然としていると、ドカドカと複数の足音が慌ただしくワシらのいる牢獄へ近づいてきた。
見るとルーチェ国騎士団の魔術師団の者達であった。
「ウラエヌス!邪魔だから貴様は隣の牢へ移れ!」
「は?(憤怒)」
突然やってきて邪魔者扱いされ、ワシは半ギレのパフォーマンスを見せたが、無理矢理隣の牢へ移されてディオと離れ離れにされてしまった。一体何をするつもりなんじゃ。
「「「・・・・・ぶつぶつぶつ」」」
魔術師達は延々と詠唱を続けている。数時間ぶっ通しでやり続けている。
ははぁ、何やら大規模な魔術を発動しようとしとるな?ワシの専門外の魔術であるようだが、それでもワシにも分かるくらいあまりにもアラの多い術式に、思わず苦笑いしてしまう。
ルーチェの魔術師団のレベルは本当に知れているなとワシは思った。リーン国の一介の冒険者でももう少し効率的な術式を組むことができるだろう。
この国は医学薬学どころか魔術のレベルも底辺だと聞いたことがあるが、どうやらそれは事実だったようだ。
何も優れているところがないこのルーチェ国・・・魔王どころかそのうち他国にもあっさり滅ぼされてしまいそうだ。
「「「ぶつぶつぶつ・・・」」」
それでも数人が長時間かけて練り上げる術式はアラが多くお粗末ながらも強力であることだけはわかった。魔術が完成したときにはどれだけの力を持つ術式が出来ているのか知らないが、恐らくワシ一人では解除できないほどの強い何かが出来上がっているだろう。
どうせワシもディオもただ処刑を待つ身である。のんびりとワシは隣の牢から見物することにした。
「・・・なっ・・・」
翌日、長い長い時間をかけてようやく出来たであろう魔術を見てワシは驚きの声を上げた。
ディオの牢が結界魔術によって封印されていたのだ。これでディオは何があっても向こうから出ることは出来ない。だが、ワシが驚いたのはそこではなかった。
「ふふ、封印魔術に詳しくない貴方でもわかるでしょう?この結界のすさまじさは」
徹夜明けでテンションがハイになっているであろう魔術師のリーダー格の男が、ワシに成果物の自慢をしたいのか話しかけてきた。なるほど、魔術師団が組織ぐるみで開発した新型の結界だというわけか。何故かは知らんがディオをワシ以上に厳重に閉じ込めておきたいらしい。
「・・・はぁ」
思わずため息をつくワシに、魔術師は得意げに笑みを浮かべた。
「どうしました?あまりの出来に声も出ませんか?」
ドヤ顔をして言ってのける魔術師に対し、ワシはつい思っていることを述べてしまった。
「図体がでかいだけでなんて無駄が多くて精度が荒い結界じゃ。ポイントを絞って丁寧に術式を組まないから、ガタイがいいだけで張りぼてみたいなものじゃぞ?これから複雑な術式で中和しなくとも、力任せの魔力をそのままぶつけるだけでパリーンと砕け散る。お前あれか?結界の類はダメージを受けて限界を迎えると割れるというイメージを抱いている世代か?」
魔術師はワシの言葉を聞いて最初は「ポカーン」としていたが、やがて顔を真っ赤に染めると烈火の如く怒りだした。
「貴様!老いぼれの分際で私達の傑作を貶すか!!痛めつけてやる!!」
「いやだって時間かけてこの有様じゃろ?ギャグとしか・・・」
「うるせぇ!」
魔術師達は愚かにも討論でワシをねじ伏せることはなく、力による制圧という選択をした。こいつら本当に国が抱える魔術師なんか・・・本当にこの国の未来は暗い。魔王を倒すどころか満足に魔族の討伐も進まなかった理由がわかるわい。
「お前が!泣くまで!殴るのを!やめない!」
ドコッ バキッ
「や、やめてくれ~ そ、そこだけは・・・アッーー!」
ワシは魔術師達にボコボコにされた。
そして結界の中にいるディオと隣り合わせのまま、ワシは処刑の日を迎えることになった。
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