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逆転裁判 ~ウラエヌス目線~
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裁判があると聞いてから数日で裁判が始まった。
わしとディオはそれぞれ別の日で、まずはわしが最初に裁判にかけられるようだ。
「被告人、ウラエヌス前に出なさい」
わしはおずおずと前に出る。まさか自分の人生で裁判にかけられる日が来るとはのぅ。女絡みならあり得たかもしれないが。
「じっ・・・」
「?」
一瞬、裁判長がわしのことを睨んだ気がした。
はて、見たことのあるようなないような顔だ。どこかで会ったことがあっただろうか。裁判官に知り合いはいないはずだが。
「ウラエヌス、貴方は以前にも魔王がルーチェ国に現れた際、勇者バリーとともにそれを討伐した。それから冒険者として居住地を転々としながら過ごし、そして最近になって再び復活した魔王を討伐した。これに間違いはありませんね?」
「ありません」
「ですが討伐から戻ってきた夜、王城に宿泊したところ次期国王候補なるディオが現国王を殺害している場面を目撃。そして参考人として拘束された・・・それが貴方の言い分ですが、これに間違いはありますか?」
「ありません。わしは無実です」
「ふむ、魔王を討伐するという偉業を達成しておきながら、自らの関わっていないという国王の殺害の嫌疑をかけられるとは災難でした。極めて遺憾であります」
うん?これは想像を遥かに超えて裁判長はわしに同情的なのか?もしかするとあっさりわしは助かるかもしれんぞ。
「被告ウラエヌスが国王の殺害に手を下していないことは明白です」
おぉっ!これでもう無実が認められて終わりか。
「よって死刑だ」
カ~~~~ン
しーんと静まり返った法廷に木槌の音が響いた。
・・・うん?今死刑と言ったか?流れ的におかしくない?聞き間違えかな?
「あの、今死刑と聞こえましたが・・・」
「そうです死刑です。直接手を下してはいなくとも、あなたの仲間がやったこと・・・共犯であると考えられましょう。目の前にいながらにして止められなかったのも重罪です」
「んなアホな!そんな裁判があるか!!」
元より普通の裁判にはならんと思っていたが、ここまで滅茶苦茶なものになるなんて思ってもみなかった。
「死刑の執行は三日後とする。これにて閉廷!」
「ちょ、待てよ!」
わしは取り押さえにくる憲兵を振りほどきながら訴える。
「お主は裁判官じゃろう!こんな目茶苦茶な裁判なぞ認められていいと思っているのか!?」
わしはダメ元で裁判官の良心に語り掛けてみた。
だが、そんなわしに裁判官が見せた顔はゾッとするほどの冷気を感じるほどの、何の温かみも感じぬものだった。
「私はね、昔隣国のリーン国にいたのです。そこでウラエヌスさんに会っているのですよ」
「えっ?」
わしには相手の顔に覚えがなかった。
「そのとき私は冒険者パーティーのリーダーを務めていました。そのときメンバーにいたのがウラエヌスさん、貴方です」
「なんじゃと!?」
元パーティーメンバーだというのか。何がどうしてルーチェの裁判官になったんじゃろう。
「ならば元仲間として助けてくれても・・・」
わしが言うと、裁判官は途端に表情を豹変させた。その顔は怒りに満ちていた。
「私は同じ仲間でありながら好いていた幼馴染の女性を、貴方に寝取られております」
アチャー!やらかしちゃったときの恨みを買っている相手だったか。
「私はあれ以来、その手の寝取られというシチュエーションでしか興奮できなくなってしまい、まともな人生を送れていないのです」
「それはわしのせいだけというわけじゃないんじゃ・・・」
「ともかく!これで私の溜飲が下がりました。貴方を死刑にすることができた」
「こんな目茶苦茶な・・・」
なんだか知らんが、わしは良くわからんうちに自業自得で死刑という判決を受けてしまった。助かると思ってからの逆転死刑とはひどすぎる話だ。
わしとディオはそれぞれ別の日で、まずはわしが最初に裁判にかけられるようだ。
「被告人、ウラエヌス前に出なさい」
わしはおずおずと前に出る。まさか自分の人生で裁判にかけられる日が来るとはのぅ。女絡みならあり得たかもしれないが。
「じっ・・・」
「?」
一瞬、裁判長がわしのことを睨んだ気がした。
はて、見たことのあるようなないような顔だ。どこかで会ったことがあっただろうか。裁判官に知り合いはいないはずだが。
「ウラエヌス、貴方は以前にも魔王がルーチェ国に現れた際、勇者バリーとともにそれを討伐した。それから冒険者として居住地を転々としながら過ごし、そして最近になって再び復活した魔王を討伐した。これに間違いはありませんね?」
「ありません」
「ですが討伐から戻ってきた夜、王城に宿泊したところ次期国王候補なるディオが現国王を殺害している場面を目撃。そして参考人として拘束された・・・それが貴方の言い分ですが、これに間違いはありますか?」
「ありません。わしは無実です」
「ふむ、魔王を討伐するという偉業を達成しておきながら、自らの関わっていないという国王の殺害の嫌疑をかけられるとは災難でした。極めて遺憾であります」
うん?これは想像を遥かに超えて裁判長はわしに同情的なのか?もしかするとあっさりわしは助かるかもしれんぞ。
「被告ウラエヌスが国王の殺害に手を下していないことは明白です」
おぉっ!これでもう無実が認められて終わりか。
「よって死刑だ」
カ~~~~ン
しーんと静まり返った法廷に木槌の音が響いた。
・・・うん?今死刑と言ったか?流れ的におかしくない?聞き間違えかな?
「あの、今死刑と聞こえましたが・・・」
「そうです死刑です。直接手を下してはいなくとも、あなたの仲間がやったこと・・・共犯であると考えられましょう。目の前にいながらにして止められなかったのも重罪です」
「んなアホな!そんな裁判があるか!!」
元より普通の裁判にはならんと思っていたが、ここまで滅茶苦茶なものになるなんて思ってもみなかった。
「死刑の執行は三日後とする。これにて閉廷!」
「ちょ、待てよ!」
わしは取り押さえにくる憲兵を振りほどきながら訴える。
「お主は裁判官じゃろう!こんな目茶苦茶な裁判なぞ認められていいと思っているのか!?」
わしはダメ元で裁判官の良心に語り掛けてみた。
だが、そんなわしに裁判官が見せた顔はゾッとするほどの冷気を感じるほどの、何の温かみも感じぬものだった。
「私はね、昔隣国のリーン国にいたのです。そこでウラエヌスさんに会っているのですよ」
「えっ?」
わしには相手の顔に覚えがなかった。
「そのとき私は冒険者パーティーのリーダーを務めていました。そのときメンバーにいたのがウラエヌスさん、貴方です」
「なんじゃと!?」
元パーティーメンバーだというのか。何がどうしてルーチェの裁判官になったんじゃろう。
「ならば元仲間として助けてくれても・・・」
わしが言うと、裁判官は途端に表情を豹変させた。その顔は怒りに満ちていた。
「私は同じ仲間でありながら好いていた幼馴染の女性を、貴方に寝取られております」
アチャー!やらかしちゃったときの恨みを買っている相手だったか。
「私はあれ以来、その手の寝取られというシチュエーションでしか興奮できなくなってしまい、まともな人生を送れていないのです」
「それはわしのせいだけというわけじゃないんじゃ・・・」
「ともかく!これで私の溜飲が下がりました。貴方を死刑にすることができた」
「こんな目茶苦茶な・・・」
なんだか知らんが、わしは良くわからんうちに自業自得で死刑という判決を受けてしまった。助かると思ってからの逆転死刑とはひどすぎる話だ。
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