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ちょろい

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俺は言い訳が通ったことに驚愕していた。

まだそれほど期間はないとはいえ夫となる男を出し抜いた男に対してこんなことを言ってくれる女の人ってどうかと思わなくもないが、それでも俺はそんな気持ちを振り払ってアリス様に感謝の言葉を述べられたことに喜びを感じていた。

しかし、ここで一つの悪魔のような考えが頭を巡る。

これから王城までエスコートするまでの間に、どうにかアリス様を口説き落とすことはできないか?
アリス様もまだディオと婚約関係になって間がない。
今ならまだ俺のことでアリス様の心を上書きすることができないか?

どうせ俺は勢いで道を踏み外してしまったのだ。
どうせ非道を行くのであれば、とことんまで行ってしまったほうがいいのではないか。
そうすることで俺は初めてディオに勝つことができる。

理性では駄目だと言っている。だが心の底ではディオに対して勝利したいという渇望が、そして恋焦がれたアリス様を手に入れたいという熱望が湧き上がっていた。


苦し紛れの言い訳ですら通ってしまうちょろい・・・いや、純粋なアリス様なら、何とか力技でその心を今からでも俺の物にできるのではないか。


一瞬でもそんなことを考えてしまったら、後はもう駄目だった。
俺はアリス様を手に入れることしか考えられなくなっていた。

「いいのだやってしまえ」
「それは悪いことではない。お前なりの純愛だ」
「ちょろいアリス様が悪い」

心の中で悪魔が囁いた。
俺はその囁きに耳を貸してしまい、そして思うがままに行動を起こそうとしていた。


「アリス様。このまま城へ戻ることは簡単です。ですが、今少しだけ、少しだけで良いのです。私にアリス様と一緒にいる時間を下さりませんか?一度でもこの願い叶えて頂けるのなら、私にこれ以上望むものはありません」


跪いたまま、俺はアリス様にそう言っていた。
ついに口に出してしまった。もう戻れない。
もしアリス様が拒否されるのであれば、そのときは諦めよう。

「レイツォと言いましたね?」


そんな俺に対しアリス様は


「あなたのことについてお話してくださいな。私、レイツォのことをもう少し知り合いです」


僅かに頬を赤らめながら、そう言ってくれた。

俺は嬉しさのあまり罪悪感などどこかへ消し飛ばしていた。
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