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言い訳

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俺は必死に頭を使って考えていた。アリス様にこの状況をなんと言って説明しようかと。
適当なことを言っては後で王都に戻ったとき、俺が不利になることになるからだ。というかディオ達を出し抜いてここに来ているあたりで、既にもう何を言ったところで通るはずもないのだが。

あのときの俺はどうかしていた。ただディオへの嫉妬心から出し抜いてやろうという気持ちしかなかった。後のことを考えてなかった。


「私は・・・」


跪いたまま何かを言いかけ、また止まる。
言い訳、言い訳、何か言い訳・・・


「ともにアリス様を探しに来たのは、私の他にディオ様、元勇者のバリー様、ウラエヌス様がおりました」


行き詰った先に、俺の口から自然と言葉が出た。
ディオが様付けなのは一応未来の国王予定なのと、アリス様の夫であるからだ。


「バリー様は魔王との戦いで命を落としました。私を含めた他三人は生き延び、アリス様の捜索をしていましたが・・・私は、二人を出し抜いてここに来てしまいました」


「まぁ・・・」


アリスの口から驚愕の声が漏れる。
そう、俺は真実をそのまま伝えることにしたのだ。しかしただ真実を告げるだけではない。


「なぜそのようなことを・・・」


アリス様の声は咎めるような風ではなく、純粋に疑問をぶつけてきているようであった。
俺はここで顔を上げ、最高のキメ顔をしてこう言った。


「私はアリス様をお慕い申しておりますゆえ、誰よりも先に助けに参りたかったのでございます」


「・・・まぁ」


「友であるディオ様を裏切る行為であることは百も承知!しかし、私はどうしてもアリス様への気持ちが抑えきれず、気が付いたらこうしていたのです。せめてどうかひと時でも、誰よりもアリス様の近くにいたかったのでございます」


口からベラベラと言葉が出てくる。嘘ではないが自分でも思わず歯が浮いてしまうようなセリフだ。
アリス様はどう受け止めるだろうか。
自分への愛の強い暴走した騎士ナイトとして見てくれるだろうか。
それとも押しつけがましい異常な愛を語るストーカーとして見るだろうか。

跪いたままそうしていると、やがてアリス様の綺麗な手が俺の頬の添えられた。


「!?」


わけがわからず茫然とする俺に、アリス様は美しく眩しい笑顔でこう言った。


「あなたのような勇敢で素晴らしい殿方に、そこまで言っていただけるとは光栄です。良くぞここまで来てくださいました」



も、もしかして言い訳が通った~~!?
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